【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─相対的にバリュー株優位の展開、過度な警戒感が和らげば反転も

市況
2022年1月30日 14時00分

「相対的にバリュー株優位の展開、過度な警戒感が和らげば反転も」

◆決算を機にハイテク株の下落基調に変化あるか

2月中旬までの東京株式市場は、落ち着きどころを探る展開が想定される。

1月の株価下落の要因には、(1)米国の早期金融引き締め観測、(2)ウクライナ情勢の緊迫化による地政学的リスク、(3)国内での新型コロナ・オミクロン型の感染急拡大による経済低迷などが挙げられる。

(1)については1月27日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を通過したが、2月はFOMCがなく、3月のFOMCでの利上げ幅やその後の政策に不透明感が漂っている。(2)のウクライナ情勢は気掛かり材料だが、消化難となっている。(3)のオミクロン型の感染拡大については、海外や国内でも沖縄などでピークアウトし始めているところがある。(1)以外の悪材料は相当程度織り込んでおり、過度な警戒感が薄れれば株価は反転に向かうことも期待される。

1月27日現在で日経平均株価のPERは12.99倍と13倍を割り込んでいる。テクニカル的には25日移動平均線とのカイ離率がマイナス7.4%と、短期行き過ぎのマイナス5%超えとなっている。このようにファンダメンタルズ、テクニカルの両面でやや売られ過ぎを示唆している。

ただ、インフレ懸念が継続し、上値は限定的となりそうだ。2月中旬までの日経平均株価は2万5500円~2万7500円前後での値動きと予想する。変動率が高い状態が続きそうだ。

スケジュール面では、2月1日の米ISM製造業景況指数、3日のECB理事会(ラガルド総裁の会見)、米ISM非製造業景況指数、4日の米雇用統計などが注目される。特に雇用統計で雇用の改善が想定以上なら、金融引き締め観測が一段と高まる公算もありそうだ。

また、2月上旬にかけて日米でハイテク企業の決算発表が相次ぐ。1月31日(月):レーザーテック <6920> 、2月1日(火):アルファベット<GOOGL>、キーエンス <6861> 、HOYA <7741> 、2日(水):ソニーグループ <6758> 、東京精密 <7729> 、クアルコム<QCOM>、メタ・プラットフォームズ<FB>(旧フェイスブック)、3日(木):アマゾン・ドット・コム<AMZN>、任天堂<7974>、4日(金):イビデン <4062> 、9日(水):SUMCO <3436> 、10日(木):東京エレクトロン <8035> など。年初からのハイテク企業の株価下落基調が、決算を機に変化するかを見極めたい。

◆マザーズが底入れなるかも注目ポイントに

日経平均株価の1株利益は第3四半期の決算発表直前で2030円程度。2月中旬の決算発表ピークに向けて、どの程度切り上がるか。1株利益が上昇し、PERがさらに低下すれば下値不安が薄れることが期待される。

物色は米インフレ懸念がくすぶる中で、バリュー株が相対的に優位となりそうだ。インフレ傾向で注目される市況関連では、銅やニッケルに強い住友金属鉱山 <5713> はPBR1.1倍、アルミ圧延で世界トップクラスのUACJ <5741> はPBR0.6倍で、ともにPERも6倍台と低い。期中に3度目の上方修正を行った東京製鐵 <5423>、また、電炉株の大和工業 <5444> もバリュエーション面の割安感がある。

三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 、三井住友フィナンシャルグループ <8316> のメガバンクは、米国での金利上昇によって利ザヤの改善が期待される。東京海上ホールディングス <8766> 、T&Dホールディングス <8795> など保険株は資金運用成績の向上が見込まれる。このほか、配当利回りが高い銘柄には、3月期末の配当取りの動きが早めに出始めることも想定される。

また、個人投資家がメーンプレーヤーである、東証マザーズ市場の底入れがなるかへの関心も高い。マザーズ指数は昨年12月のIPO(株式新規公開)ラッシュ直前の11月高値1189ポイントから、1月安値724ポイント(27日現在)まで約39%下げ、ネット証券調べの信用取引の評価損益率はマイナス38%(同)と需給面で厳しい展開が続く。2月3日から再びIPOがスタートする。2月は合計8社のIPOが予定されている。相場反転のきっかけとなるかが注目される。

(1月28日 記/次回は2月27日配信予定)

■和島英樹(Hideki Wajima)

株式ジャーナリスト

日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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