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80代でも加入9割、知らないと受け取れない親の保険金・給付金

特集
2022年2月3日 10時00分

清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方-第44回

清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
清水香1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。

前回記事「4月から18歳の成年誕生、増えるお金のトラブルの回避法は」を読む

この正月に、筆者の老親が始めた"終活"について話しを聞き、その際に契約している保険について確認しました。

現在も加入しているのは火災保険と自動車保険、そして医療保険の3つ、あとは解約したとのことです。すでに80代半ば、何か起きてもおかしくはなく、今後は保険金請求手続きなどのサポートも必要になるでしょう。

【タイトル】

70代・80代の医療保険加入率は約9割

親の保険を確認したことがなくても、なんらかの生命保険には加入している、と考えた方が良いと思います。というのも、70代、80代の医療保険の加入率は9割にものぼります。

現在の医療保険は終身医療保険が主流で、これから先も保障は続きます。この年代の生命保険加入件数は平均3件強で、現役世代とあまり変わりません。

せっかく入った保険も、請求しなければ保険金は受け取れません。しかし高齢者は、種々の理由から保険の請求が難しくなることがあり、とりわけ注意が必要なのです。

医療保険は、被保険者本人が給付金の受取人となります。しかし保険に加入していることを忘れたり、認知症になったりすると、本人が保険金の請求ができなくなってしまいます。

受取人に指定された家族が、本人の保険加入を知らなければ、請求もできないでしょう。あるいは災害が各地で発生するなか、被災して契約の有無についての手掛かりを失い、困り果てる事態も実際に起きています。

70代・80代は、生命保険だけでも平均で年間30万円強の保険料を負担しています。いざというときに役立てるための保険なのに、残念すぎる話です。

ただ、こうしたときも手はあります。事前に手を打てば、本人がすべき医療保険等を家族が代理請求することは可能ですし、事後であっても本人が生前、あるいは被災前に生命保険や火災保険の契約をしていたかを確かめる方法もあります。

以下、具体的に見ていきましょう。

元気なうちに「指定代理請求人」の指定をしておく

本人が死亡した、あるいは認知症になり判断能力が低下して、生命保険等の契約があるかがわからなくなったら、まずは保管場所の確認です。ほとんどのケースは、自宅のどこかにあるはず。

保管場所を確認したら、契約している保険証券を探し、保険料がどのように引き落とされているか確認します。銀行や郵便貯金の口座引落がほとんどのはずですが、クレジットカードなど他の例もあることも頭の片隅に入れておいた方がいいでしょう。これらは、定期的に来る保険会社の契約確認通知なども手掛かりになります。

契約があれば、必要な手続きを進めます。生命保険については、本人が死亡していれば受取人が死亡保険金の請求をします。高度障害保険金や医療保険の給付金は、本来であれば本人が請求することになりますが、認知症だと手続きができません。

こうした事態を避けるには、本人が元気なうちに、家族が保険金や給付金を代理請求できる「指定代理請求人」の指定が必要です。

一般に配偶者または3親等内の親族が指定でき、契約途中での指定や、指定後の請求人変更も可能です。ただ、指定代理請求人は保険金の代理請求しかできません。契約変更や解約などの手続きは本人しかできないため、成年後見人を立てるほかありません。

確実に保険金が請求できるよう準備して保険を残さないと、このようなより面倒な事態も生じかねません。どうしても必要な保険でなければ、元気なうちに解約を検討するのも選択肢です(参考記事:「700万円の負担も水の泡に!? 生命保険の解約や保険金の請求できない事態をどう防ぐ~親が認知症になる前に知りたいシリーズ-その3」。

契約の有無がわからなければ「生命保険契約照会制度」

家の中で保管していそうな場所を探しても生命保険の有無が不明なら、「生命保険契約照会制度」を利用して探す方法があります。

本人が死亡、認知症で判断能力が低下したとき、あるいは被災により死亡・行方不明時に、個人契約の有無を確認できるしくみです。

日本で営業する生命保険会社全社が加盟している生命保険協会が運営しており、どの生命保険会社の契約でも利用できます。ウェブサイトあるいは郵送のいずれかで申し込み、回答を受けます

■生命保険・医療保険請求等のトラブルと対処方法

状況対処方法請求者
認知症や寝たきりで契約者本人が
保険金等を請求できない
生命保険・医療保険の契約で本人が事前に指定
した「指定代理請求人」請求できる *
指定代理請求人
認知症や寝たきりで契約者本人が
解約や変更の手続きができない
成年後見人が手続きをする成年後見人
本人が死亡や認知症で、
契約の有無が不明
生命保険協会が実施する「生命保険契約照会制度」
を活用して契約の有無を確認する(有料)
3親等以内の親族
被災による本人の死亡、行方不明で、
契約の有無が不明 **
上の「生命保険契約照会制度」を無料で利用する家族
注:*保険会社により異なる **災害救助法適用地域の場合

本人の死亡、または認知症による判断低下で制度を利用するときは、1回につき税込3000円の利用料がかかります。戸籍や所定の診断書等の提出も必要です。利用できるのは、死亡の場合は法定相続人など、認知症等の場合は本人の3親等内の親族などです。

一方、災害で本人が死亡または行方不明となったときは、本人の家族(配偶者・親・子・兄弟姉妹)などが利用でき、利用料は不要です。対象となるのは、災害救助法が適用された地域で本人が被災し、家屋が流失または焼失するなどした場合です。

この制度で契約が見つかったら、契約先の生命保険会社で保険金請求を行います。「協会の生命保険契約照会制度を利用した」旨を伝えて手続きを進めます。

親の生命保険契約情報を共有する「家族情報登録制度」

生命保険契約照会制度は助かるしくみですが、被災した場合を除くと手数料がかかり、書類の提出も必要です。そこでまず"家の中探し"、となります。ただし、家族の連絡先をあらかじめ生保会社に登録しておく「家族情報登録制度(名称は各社で異なる)を利用すればそれも不要になります。

配偶者や3親等内の親族など一定の家族を登録しておき、災害時に連絡が取れない、契約者本人が高齢になり生命保険会社との連絡が取れないとき、生命保険会社から家族に連絡がきます。生命保険会社により内容は異なりますが、契約内容の確認のほか保険金請求書などの必要書類の取り寄せもできます。

この家族情報登録制度は契約の存在を家族に知らせて保険金の請求漏れを防ぐことはできますが、受取人以外が保険金請求をすることはできません。保険金を代理請求するには、前述の「指定代理請求人」であることが必要です。

次に、火災保険について見ていきます。

次ページ 火災保険の請求で困ったときの対処法は

 

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