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「割安狙い」なのにショートでもリターン追求、その目的は?

特集
2022年2月24日 10時00分

第33-2回 強い投資家はどんな人~日本株投資家3900人調査で解明!(ケーススタディ編)

登場する銘柄

コスモ・バイオ<3386>、資生堂<4911>、SOMPO<8630>

取材/真弓重孝・高山英聖、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)

原田勝幸さん(60代・男性・専業投資家)のプロフィール:
日本株投資歴30年以上で、2019年12月にコスモ・バイオの大株主として登場。日本株だけで7億5000万円。30年以上前に市役所を退職し、家業に従事しながら株式投資を始めた。投資スタイルは初期から割安成長株狙い。多くの不動産を保有する関東在住の資産家。趣味の将棋はアマチュア四段の腕前。

前回記事「相場のショックは好機と、バリュー株主軸で7億円超え」を読む

年明けから日経平均株価が6.5%下落している。こうした下降トレンドでもリターンを狙えるのが「ショート(空売り)」だ。

「上昇相場ではロング」「下降相場ではショート」という二刀流がうまく通用すれば相場の変動も怖くないが、相場の先行きを正確に読むのは、プロでも不可能に近い。

とはいえ、ショートの手法を取り込んで、投資の幅を広げたいという人もいるだろう。その参考になるのが、コスモ・バイオ<3386>の大株主で、日本株資産7億5000万円を持つ原田勝幸さんだ。

原田さんは、コア運用でバリュー投資、サテライト運用としてその反対の「逆バリュー投資」、つまり業績の成長力から見て割高銘柄にショートを仕掛けている。

ポイントは、逆バリュー投資は、あくまでロングポジションのリスクヘッジに主眼を置いていることだ。つまり、上昇相場でも下落相場でもヘッジ売りをしているのであって、下落相場だからショートでリターンを狙いにいっているのではない。

原田さんの最終回は、バリュー投資を主軸にリスクヘッジでショートを活用する技について見ていこう。

目安は「チャートが不安定」「高値圏」の2つ

ショートの成功例でわかりやすいのが、資生堂<4911>の取引だ。

昨年(2021年)の4月23日に株価7700円台のタイミングで2万株を空売りした。翌営業日の26日、株価が7600円台に下がったところで6000株を買い戻してリターンを得た。

■『株探』で確認できる資生堂の日足チャート(2021年3月~5月)

【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、
同値は「グレー」。以下同

同社株を狙ったのは、株価の割高さだ。当時PBRが10倍を超え、チャートも高値圏で推移していた。一方、業績は21年12月期でギリギリの黒字を見込み、事業環境は良いとはいえなかった。チャートが上下しやすいこともあり、チャンスは大きいと見た。

ポイントは、チャートが高値圏でローソク足の陰線が引いてから買うようにしたことだ。購入した4月23日は陽線が2営業日続いた日だ。翌営業日に株価が下落したところを買い戻し、リターンを得た。

銘柄選びの基準は、資生堂株のように「株価が高値圏」「チャートが上下しやすい」といった条件を満たす銘柄を狙う。PBRはあくまでも参考程度。1倍を上回る水準が理想だが、絶対視するわけではない。業績は、株価が上がるほどの利益を出せているかが基準になる。

目的は、ロングポジションのリスクヘッジ

あまり細かい基準を設けないのは、ショート取引は、コア運用であるバリュー投資のリスクヘッジを目的としたものだからだ。利確・損切りも、評価損益や全体の動きから総合的に判断している。

前回も触れたように、原田さんのロングポジションは相場の動きに左右されやすい。損失が生じたときに少しでも埋め合わせることができるよう、チャートが高値圏で相場の動きに連動して株価を下げそうな銘柄にショートを仕掛けることでリスクに備える。

全体のポジションに対して信用売りの比率は小さくない。昨年末時点で原田さんが運用する信用ポジション14億円のうち、売り建玉は約5億円とおおよそ全体の3分の1を占める。

コツは、利益に固執しないこと

気をつけているのが、本来の目的を見失わないようにすることだ。ショートで含み損が生じても、無理に巻き返さないようにすることが大切だという。

そのため何度も損切りした銘柄もある。SOMPOホールディングス<8630>の取引は、その一例だ。21年半ばの株価4500円前後から短期のショート取引を何度も繰り返してきた。

だが株価が上がり続ける中、22年に入っても同様の取引を繰り返し、トータルで損失が生じてしまった。

■『株探プレミアム』で確認できるSOMPOの長期・日足チャート(20年3月~) 

【タイトル】

ショートを仕掛けた理由は、チャートが高値圏にあると見たからだ。20年のコロナショックで株価が急落し、2405円で底を打った後、株価は上昇を続けている。上り調子のチャートを見て、空売りの好機と見たのだ。

結果的に損切りを繰り返してリターンを逃したものの、原田さんに大きい後悔はない。ロングポジションのリスクヘッジとしての役割を果たしたと思えるからだ。

原田さんがリスクに慎重なのは、それだけ大きなリスクを積極的にとっていることの裏返しでもある。それは原田さんが勝負好きであることが関係している。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ ヘッジの裏に、「将棋学部マージャン学科卒」

 

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