再生エネ導入で新章突入、注目技術「マイクログリッド」関連株が輝く <株探トップ特集>

特集
2022年3月9日 19時30分

―取り組み広がるエネルギーの地産地消、政府の送電網整備が追い風に―

ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、世界経済の先行き不安が株式市場に重くのしかかっている。この日の東京市場では自律反発狙いの買いが入り、日経平均株価が節目の2万5000円台を回復する場面もあったが、その後は上値が重くなり、結局73円安で引けた。一方で、欧米がロシアに対する経済制裁を強化していることを背景に、原油や天然ガスなどの価格が高騰しており、こうした資源を海外からの輸入に頼らざるを得ない日本にとってコスト増につながる恐れがある。地球温暖化対策だけでなく、エネルギーの安全保障の観点からも 再生可能エネルギーの導入拡大が求められるが、そこで注目したいのが地産地消につながる「マイクログリッド」だ。

●電力ロスや停電被害を軽減

マイクログリッド(小規模電力網)とは、自治体など一定の範囲にエネルギー供給源と消費施設をまとめてエネルギーを地産地消する仕組みのことで、エネルギーの供給には太陽光や風力といった再生可能エネや 蓄電池などで構成した分散型電源が利用される。家庭やオフィスの近くにあるため、大規模発電所のように長距離送電網を必要としないことから電力ロスが少ないというメリットに加え、災害などによる大規模停電時には周辺系統から独立した送電網で自立的に電力供給が可能になるほか、地域のエネルギー関連産業の発展などを通じた地域経済の活性化が期待できる。

岸田文雄首相は年頭の記者会見で、再生可能エネの普及に絡んだ政策の一環として送電網インフラの整備・増強を表明していることもあり、関連銘柄をマークしておきたい。

●正興電、武蔵精密などに注目

住友電気工業 <5802> と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は1月、送配電網の電力品質向上を目的に米カリフォルニア州で取り組んできた実証事業を完了し、66軒の需要家を含む実配電網でのマイクログリッド構築と、大型の定置用蓄電池「レドックスフロー電池」の運用、更に平常時・非常時の併用運転に成功したことを明らかにした。この成果は今後、無電化地域での太陽光や風力発電施設を併設したマイクログリッドの構築、発電機燃料の輸送コストがかかる島しょ地域での再生可能エネによる100%電力供給など、国内外で高い需要が見込まれる用途に適用できるという。

武蔵精密工業 <7220> は昨年12月、愛知県豊橋市との協力による地域マイクログリッドの構築に向け、経済産業省の「地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金(地域マイクログリッド広域支援事業のうち、導入プラン作成事業)」に採択されたと発表した。これは災害などによる大規模停電時に電力会社の系統を解列し、同社の 太陽光発電や蓄電池などの施設から特定の送電網内に電力の安定供給を行うもの。今後、地域の事業者や専門的見地を持つ有識者などと具体的な個別の実証内容の時期や場所などについて検討を進めるとしている。

正興電機製作所 <6653> は昨年12月、北海道苫小牧市光洋町エリアでの地域共生型マイクログリッド構築プロジェクトに参画すると発表した。このプロジェクトは太陽光発電設備を活用した現地のPPA(発電事業者が需要家の敷地内に太陽光発電設備を発電事業者の費用により設置し、所有・維持管理をしたうえで、発電設備から発電された電気を需要家に供給する仕組み)により、地域の医療を担う光洋いきいきクリニックと指定避難所の光洋中学校に電力を供給することを目的としている。同社は資源エネルギー庁による地域マイクログリッド構築プロジェクトで、2019年度に山口県周防大島町、20年度に沖縄県うるま市及び愛媛県上島町のプロジェクトに参画しており、今回の検討を活用し、これら3つの案件についても社会実装に向けて取り組む構えだ。

チェンジ <3962> のグループ会社であるトラストバンク、出光興産 <5019> 、出光興産子会社のソーラーフロンティアは昨年12月、地域の脱炭素化推進に向けた相互連携に関する覚書を締結したことを明らかにした。協業の第1号案件では、トラストバンク阿久根(設立時トラストバンク100%出資)が所有する鹿児島県阿久根市内の太陽光発電所で発電した電力を同市のマイクログリッド網で融通し、再生可能エネとして地域内で消費する計画を進めている。

このほかでは、千葉県いすみ市地域を対象とするマイクログリッド構築事業に参画している関電工 <1942> 、大容量蓄電システム「NAS電池」を展開する日本ガイシ <5333> 、マイクログリッドシステムを手掛ける明電舎 <6508> 、沖縄電力 <9511> から地域マイクログリッドシステムを受注した実績を持つ日新電機 <6641> 、鹿児島県沖永良部島(おきのえらぶじま)でのマイクログリッド構築などに関する包括連携協定を締結している京セラ <6971> 、グループ会社が昨年11月から苫小牧市光洋町エリアでの地域マイクログリッドの構築に向けた導入プラン作成プロジェクトを開始しているタカラレーベン <8897> などが関連銘柄に挙げられる。

●スマートグリッド関連も要マーク

マイクログリッドはカーボンニュートラルを実現するための有力な技術であるが、普及には課題もあり、そのひとつが再生可能エネは発電量が天候に左右されてしまうことだ。その解決策となるのが、送電網系統に通信端末やネットワークなどのIT技術を組み込んだ次世代の送配電系統「スマートグリッド」で、電気の供給側・需要側の双方から電力量や流れをバランスよく制御して最適化できる。

今月16~18日には東京ビッグサイトで「スマートグリッドEXPO」が開催されることも関連銘柄の刺激となりそうで、出展を予定している山王 <3441> [JQ]、ENECHANGE <4169> [東証M]、朝日ラバー <5162> [JQ]、オーナンバ <5816> [東証2]、椿本チエイン <6371> 、日東工業 <6651> 、三社電機製作所 <6882> [東証2]、古河電池 <6937> 、ニチコン <6996> などにも目を配っておきたい。

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