リバウンド期待にちらつく懸念のサイン/後場の投資戦略

市況
2022年3月17日 12時26分

日経平均 : 26529.89 (+767.88)

TOPIX  : 1890.03 (+36.78)

[後場の投資戦略]

米金融引き締め懸念から注目されたFOMCを通過したことに加え、ロ・ウクライナ停戦協議の進展期待、中国を巡る懸念後退なども重なり、本日の日経平均は700円を超える上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、26300円近辺に位置する25日移動平均線を一気に上抜け。前日からの急ピッチの上昇により目先の利益を確定する売りや戻り待ちの売りが出そうな一方、これまで上値を抑えてきた25日移動平均線を抜けたことでトレンド好転に期待する向きもあるだろう。前引けの日経平均が+2.98%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.98%。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりとここ数日より膨らんでいる。

前日の米市場でハイテク株の上げ幅が大きかっただけに、東京市場でも値がさグロース(成長)株が大きく上昇。半面、海運など市況関連株の一角が軟調なほか、経済活動再開に絡んだセクターも利益確定売り優勢だ。

新興市場ではマザーズ指数が+4.03%と大幅続伸。グロース株高の流れに乗り、メルカリ<4385>が9%の上昇となるなど主力IT株が総じて大幅高だ。中小型・新興株は個人投資家のセンチメント改善の影響も大きいだろう。但し、マザーズ指数は710pt近辺に位置する25日移動平均線を明確に上抜けてはいない。

さて、FOMCでは金融市場が織り込んでいたとおり年内7回(今回含む)の利上げ見通しが示されるなど、ウクライナ紛争による不透明感が拭えないなかで思いのほかタカ派的な姿勢が示されたように感じられた。もっとも、金融政策を巡る不透明感が後退したと受け止められ、一昨日の当欄「原油下げるも『中国』『引き締め』懸念」で述べたようにリバーサル(株価の反転上昇)の動きが出てくる余地はあっただろう。金融引き締め観測からここまで大きく調整してきたグロース株ほどリバウンドへの期待は高まりやすいと考えられる。加えて株価を大きく押し下げてきたウクライナ紛争、中国への懸念の後退もこうした動きを後押しするだろう。

それとやはり一昨日の当欄で触れたが、ここから新年度に向けて配当再投資の動き(市場推計で1兆円超)や機関投資家の買い、10兆円規模の「大学ファンド」運用開始などが需給面で日本株を支援すると期待する声もある。

ただ、前日の米市場動向を見渡すと不安材料もある。FRBの利上げ見通しを受けて10年物国債利回りは2.19%(+0.05pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物も1.94%(+0.09pt)に上昇。一方でFRBのインフレ抑制姿勢から原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=95.04ドル(-1.40ドル)と3日続落し、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.80%(-0.04pt)に低下した。

インフレ懸念の後退は安心材料かもしれないが、結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇しており、株式(特にグロース株)にとって本質的には好環境と言えないだろう。また、5年債の利回りが一時10年債を上回ったことも注目されている。こうした「逆イールド」発生は「景気後退の予兆」と言われるだけに、市場関係者からは先行きを警戒する声が依然として少なくない。

「目先のリバウンド継続」の可能性は低くないだろうが、これに乗るかどうかは取引参加者それぞれの投資目的や期間、リスク許容度に応じて冷静に判断していきたい。(小林大純)

《AK》

提供:フィスコ

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