【IR】ODKソリューションズ 勝根社長に聞く <トップインタビュー>
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大阪府出身。1987年にODKソリューションズに入社。以来、教育部門を中心に、SEから営業企画まで幅広い実務を担い、取締役就任後は、管理部門においては、株式会社学研ホールディングスをはじめとした数々の業務・資本提携を実現。教育業務においては、「大学入試Web出願」拡販や受験ポータルサイト「UCAROR」提供開始の中心となった。2020年に代表取締役社長に就任し、「データに、物語を。」をもとにデータビジネスの推進を目指す。
● | 教育関連サービス(教育業務) |
● | 金融関連サービス(証券・ほふり業務) |
● | 医療関連サービス / カスタマーサクセス・カスタマーサポート関連サービス(一般業務) |
① 教育関連サービス
大学横断型受験ポータルサイト『UCARO』をはじめとした、入試向け、模擬試験向けソリューションを提供。
② 金融関連サービス
証券取引のバックオフィス業務など、金融機関向けにシステムを提供。マイナンバー収集管理サービスに強み。
③ 医療関連サービス
電子カルテや臨床検査に関するシステム運用など、医療分野のIT化を支援。臨床検査システムの運用を中心としたソリューションを提供。
④ カスタマーサクセス関連サービス
カスタマーサクセス活動を支援するツール「pottos」を企業向けに提供。顧客満足度の向上、オペレーターの負担軽減に寄与(4つめの柱として注力)。
― サービスが支持される理由とは
売上高の67.5% を占める「教育」関連分野では、「UCARO」を提供しています。これは、"受験"の各プロセスを大学間で共通化することで、受験生の負荷軽減・利便性向上に加え、大学の入試業務効率化とコスト削減にも資するサービスです。大学と受験生の接点づくりのサポートはもちろんのこと、保護者を含む入試に関わる当事者を結ぶプラットフォームとして提供しています。受験という人生における大イベントに対し、確実性の高いデータ処理をし続けたことが信頼向上に繋がりました。今日では、半数以上の受験生にご利用いただき、大学導入数も全国で86校に拡大(2021年12月末現在)しています。
受験の各プロセスを大学間で共通化することで、受験生の負担軽減・利便性向上に加え、大学の入試業務効率化とコスト削減にも貢献ができています。受験生から見ると、受験に必要なデータを一気通貫で得られるプラットフォームであり、大学側としても、志願者へ広く情報発信できるプラットフォームとなり得ているため、多くの方にご支持をいただいています。
私どもでは、データビジネス事業の拡大を重要な成長戦略として考えています。前述したように、受験ポータルサイト「UCARO」は基軸の提供サービスであり、大学と受験生および保護者をダイレクトにつなぐことで、トップシェアを獲得できています。一方で、人生の時間軸で考えると、人生における一時の通過「点」だけのご支援であり、サービス提供の機会創造・拡大に課題を感じています。今後の戦略は、保有する希少価値の高いデータを、さまざまなライフイベントとつなぎ合わせ、点と点を結ぶ新たな価値提供を目指していきます。コーポレートメッセージに掲げる「データに物語を」は、まさに私どものミッションなのです。
― 点から線への具体的なイメージは?
学生はもちろんのこと、社会人などの学び直し(リスキリング・リカレント教育など)を含む、皆さまのキャリア形成を支援することや、金融関連サービスに関する公平な情報にアクセス可能な機会を提供できるサービスを考えています。私どもの事業領域では、ライフイベントに沿ったサービス(証券、金融、医療、その他領域)を扱っているため、それらの知見を網羅し、「UCARO」をハブとした横断型のサービスを展開することができると考えています。
― 金融関連サービスではどのようなサポートが実現可能か?
証券・金融分野では、金融教育やIFAを活用したウェルスマネジメントのサービスなどを検討しています。証券業界では、手数料無料化の波もあり、若年層を中心に新規口座開設数が伸びています。一方で、開設はしたものの、実際の取引までは実を結んでいないことも実態として多くあり、そのようなリテラシー課題を解消すべく、各証券会社はこれまで以上に投資教育の提供や、利便性を高めるためのDXを推し進めることが求められています。私どもでは、証券と教育両方の支援に強みを持っており、事業横断サービスを開発していくなかでの注力ポイントです。
― カスタマーサクセス事業強化に向けた本気度
先ほどのデータビジネス事業を拡大する上で、もう一つ重要になるのが、カスタマーサクセスです。これからの時代、どの業種業態においても「売って終わり」ではなく、継続した顧客サポートによる生涯顧客化を図る必要があります。このような顧客サポートを「自動化、見える化」し、一元管理を可能にしたのが、カスタマーサクセスオートメーションツール「pottos」です。2020年6月の本格提供開始以来、おかげさまで顧客数は着実に増えています
― ポトス設立による分社化
2021年8月には、さらなる事業拡大を図る目的で、本事業を分社化、ポトス(本社:大阪市中央区)を設立しました。設立から約1年目で、売り上げは前年比5倍の水準で成長していますが、今後は大口の顧客獲得も視野に入れて機能を拡張していく方針です。
― SaaS市場に向けた同事業の将来性は?
新型コロナウイルスの影響もあり、従来対面で行っていた営業手法やサービス提供手段がオンライン化する中で、企業と顧客の関係は変わりつつあります。近年ではサブスク型モデルも急速に拡大しており、顧客サポートによる利用継続は喫緊の課題となります。カスタマーサクセスが重要とされる国内SaaS市場は、2024年度には市場規模約1兆6054億円にまで達すると予測されて(※1)おり、想定以上のペースで規模拡大を見せています。今後もSaaSビジネス拡大を背景に、事業成長に向け取り組んでいきます。
※1富士キメラ総研「2021 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編」参照
― データビジネスで目指すところとは?
データ提供者への価値還元です。私どもの主力サービスはアウトソーシングサービスで、お客様のシステムを作り、お客様に代わってシステムを利用し、納品物を提供しています。お預かりするデータは、教育関連分野をはじめ、その他証券金融や医療関連分野すべての領域において、非常に大切で貴重なデータであり、社会的責任が重いビジネスであると認識しています。私どもの信念として、ユーザー自身の意思に沿って、利活用して頂きたいと考えており、お預かりしている情報管理に万全を期す努力を続けています。データをご提供いただけるお客様に対して、何かしらの形で新しい価値を返せるような仕組みでないと、このビジネスは崩壊してしまうと思うのです。
私が申し上げたいことは、世の中でデータが溢れかえり、現実と仮想の世界が融合したときに、そのデータを顧客同意のもとで有益に活用し、データ提供者への価値還元を可能としたい。私どもは、そんなビジネスを目指す必要性があると考えています。
― 売上高80億円、経常利益8億円達成に向けたアクションは?
継続的に、データの量と種類を増やしていくことに注力していきます。
その先駆けとして、まずは証券金融業務・教育・医療関連分野すべての領域で、部門横断プロジェクトを立ち上げました。プロジェクト内でのアイデア出しに加え、「UCARO」を軸とした事業横断サービスのアイデア出しの2つを並行して行っています。
― 協業・M&A戦略について
協業やM&Aは重点課題として積極的に取り組む方針です。2021年4月には、学研教育みらいとの協業による新サービス「入試・リメディアル ソリューションサービス」の提供を開始しました。これまで「UCARO」が提供してきた支援に加えて、さらに準備段階と入試後までの関連業務において、入学前教育、プレースメントテスト、基礎学力テストといった、リメディアル教育領域でのサービス提供を始めています。
2021年9月にはECSを子会社化し、教育関連業務を想定した中国・四国地方の拠点整備とIT人材の獲得につなげています。今後のM&A方針としては、人材不足に対応できるSESの企業や、グループ化によるプラスαの相乗効果を発揮できる企業と一緒に、事業拠点の拡大を図っていきたいと考えています。
継続したIT基盤整備と事業投資をもって企業価値を高めていくため、2022年4月の東証市場再編では、プライム市場を選択している同社。
― プライム市場を選択した理由は?
投資家の皆さまも周知のとおり、DXによって世の中の商流も変わってきています。私どもも、せっかく貴重なデータを保有していても、いっそうの事業規模の拡大がなければ、世の中を変えるほどの企業は目指せないと感じています。当社の基本方針である新たな価値創造を実現するためにも、今回、継続してプライム市場(東証1部市場)を選択しました。また、プライム市場であれば、今後の資本戦略も立てやすく、機動的(有利)にM&Aなどおこなう環境が整っている点も選択理由の一つです。
― 10年という長期の事業計画に込めた想い
プライム市場選択のため、10年の長期事業計画を発表
通常、事業計画は3年~5年が主流といわれていますが、10年で計画設定した理由は、今後、主事業としていく教育関連サービスにおいては、外部要因(入試制度改革)に引っ張られる部分も多いので、自らで責任をもって設定できる目標としました。もちろん、トップマネジメントとして、経営的に10年の余裕があるとは考えていませんので、スピードを重視した「前倒し」を前提に、投資など効率的な財務戦略を推進します。
― 具体的な課題と取組みについて
まずはIR・広報体制の強化を図っていきます。というのも、当社はまだまだ認知度が低く、市場評価は同規模程度の同業他社と比較して、低水準に留まっている点が課題にあるためです。まずは知ってもらえないことには評価をいただけないので、「当社の魅力をどのように発信していくか」が経営戦略のカギを握っていると考えています。さまざまなステークホルダーへの的確なプレゼンテーションが肝要で、国内外の投資家やアナリストに向けた情報発信や、メディアリレーションの強化を検討しています。併せて、予算の確保、英語版IR資料の公開などすでに準備を進めており、早期に企業価値が向上していくことを目指しています。
*英語版IR資料:https://www.odk.co.jp/ir/ir25.html
もっとも、これらの取り組みを強化したとしても、事業そのものの本質が良くなければ意味がありません。そのために、先ほどもお伝えしたように、私どもは10年間の戦略立案により、着実に遂行することを肝に銘じています
考え方は変わって当たり前。やりたいことを認め、尊重すること。
私自身の経験則からになりますが、旧態依然の考え方が全てではなくて、世の中や人の考え方、サービスの内容はどんどん変わっていくので、変わって当たり前だという意識を常に持つことを大切にしています。
現在当社では、データビジネスで新しいことにチャレンジしようと、経営戦略室を中心に、トップダウン型ではなく、社員によるボトムアップ形式でのインナーブランディングを推進しています。経営戦略室は、もともとネクストステージ戦略室と言っていた部署なのですが、そこで社員から企業のあるべき姿についてアンケートを集め、20人ほどのメンバーで、ポスターも全部作り、社章まで変更しました。こういった変わった姿・今後も変わっていく姿を、対外的にだけでなく、社員にもしっかり見てもらうことで、私どもODKが目指す世界観を共有したいと思っています。データに物語があるように、皆で作り上げていく未来を少しずつでも示せれば、きっと10年後には今までと違う自社の姿が描けているかなと思っています。
これからの10年は、先ほどお話ししてきたような「点」を「線」にしていくビジネス展開を実現し、新しい世界観を作ります。その10年をぜひ見ていただきたいです。そして、その過程で投資家の皆様にご指導・ご鞭撻をいただき、ともに歩んでいければと思っています。そのために、今まで以上に情報公開はフェアでオープンにしていくつもりです。隠すことはせず、本当に真面目にやってきた企業ですが、老舗でもあり、ベンチャー魂も併せ持った独自な企業形態であると考えています。私どもの企業理念にご賛同いただき、応援いただけましたら幸いです。
株探ニュース