明日の株式相場に向けて=東電HDに巨大“仕手株”の片鱗
きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比328円高の2万7172円と続伸。主力株中心に幅広く買いが入り、フシ目の2万7000円大台ラインを6営業日ぶりに上回って着地した。ただし、日経平均の動きは225先物を絡めたインデックス買い効果が反映されている。実質的な市場参加者は少なく、売買代金は2兆3000億円台にとどまり、これはプライム市場スタート初日となった今月4日以来となる低水準だった。
市場関係者からは「あす、週末15日はグッドフライデーで米国や欧州、アジア主要国の株式市場がまとめて休場となるほか、来週明け18日は、米国市場は開くものの欧州市場はイースターマンデーで引き続き休場となる。したがって、きょうのマーケットも盛り上がりに欠けるのは既定路線。参加しても“自動運転”状態で、ハンドルを握っている機関投資家はほとんどいないのではないか」(中堅証券マーケットアナリスト)という声が出ていた。
前週(4月4~8日)は週央6日のFOMC議事録開示に絡み、株式市場は波乱含みに下値を探った。これを引き継いで今週は12日発表の3月の米消費者物価指数(CPI)がマーケットにとってはビッグイベントで、もう一波乱が生じる可能性もあったが、全体指数はイベント通過とともにアンワインド(巻き戻し)で株価が上昇に転じた。しかし、足もとは投資家の思惑が反映されない機械的な動きで、これは個別株の不可解な値動きにも反映された。「海外勢にすれば実質4連休を前にしていることから、ポジションを畳む動きが相次いだ。材料のあるなしに関わらず、これまで上がっていた銘柄は手仕舞い売りで値を崩し、売り建てていた銘柄は“手仕舞い買い戻し”で高くなった」(前出のマーケットアナリスト)とする。全体から見れば数は少ないが、ここ好調に株価を上げていた銘柄に限って、きょうは目立った理由もなく大きく値を下げるケースが相次いだのは、こうした背景があったようだ。とはいえ投資家と投資家の思惑がぶつかり合うことなく、株価が第三者的な力で不安定に上下動をみせるのも、相場のひとつの“顔”ではある。「きょうのところは、指数が高くても個別株をピンポイントで攻めるような気が起きない」(国内証券ディーラー)という声も聞かれたが、人間らしい意見ともいえる。
そうしたなか、1銘柄だけ「野中の一本杉」のように投資家の視線を独り占めにした銘柄があった。週初11日の当欄でも取り上げたが、東京電力ホールディングス<9501>が巨大な“仕手株”として本領を発揮してきた。売買高1億株を超える大商いで、全上場銘柄を通じて一頭地を抜く活況ぶり。株価は500円未満なので売買代金こそ第5位にとどまったが、この日は個人投資家の信用の買い、そして信用の売りが錯綜し、まさしく炎立つような光景となっていた。
岸田首相が前週末8日の記者会見で「電力需給の逼迫回避に向けて、脱炭素の効果が高い電源として再生可能エネや原発などを最大限活用する」と述べたことが、同社株が物色人気化する発端となった。市場筋の話では「新潟県の意向次第ではあるが、柏崎刈羽原発6号機と7号機の再稼働の可能性が現実味を帯びている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。ただし、稼働しても、賠償特損を抱える同社にとってファンダメンタルズ面から株価上昇を肯定化する材料とはなりにくい。ところが、この理屈が個人投資家の空売りを誘導し、徐々に需給相場の様相を見せ始めている。「きょうも店内で見る限り、個人投資家は売りと買いに、真っ二つに割れているが、売りに回っている方が多い」(同)とする。
この東電HDの攻防にAI売買が絡んでいるのかどうかは分からないが、少なくとも個人投資家の思惑がぶつかり合う、かつての仕手相場のごとき匂いが立ち込めているのは確かだ。ここから先の同銘柄の動きは予測不能だが、きょうは年初来高値を更新したことで新波動入りを示唆している。昨年1月の高値(444円)も既に上に抜けており、2019年につけた高値水準である700円台までフシがない。
あすのスケジュールでは、国内では特筆されるイベントはないが、海外では3月の中国70都市の新築住宅価格動向、4月のNY連銀製造業景況指数、3月の米鉱工業生産指数・設備稼働率など。なお、米国市場は聖金曜日で株式・債券ともに休場となる。このほか、香港、フィリピン、シンガポール、タイなどアジア地域のほか、オーストラリア、ニュージーランド、更に欧州でもドイツ、フランス、英国などの各市場が休場となる。(銀)