【植木靖男の相場展望】 ─底打ち徐々に近づく?
「底打ち徐々に近づく?」
●週明けが正念場となるか
東京市場では急速に底入れ論が強まってきている。相場ほど人を食ったような動きをみせるものはない。4月6日以降、日経平均株価は5日連続でザラバ安値が前日のそれを下回る状況となり、この調子では2万6000円割れも必至とみられていた。当時の市場を取り巻く環境を振り返ると、本来ハト派のブレイナードFRB(米連邦準備制度理事会)理事が態度を変え、5月にもQT(量的金融引き締め)を始めるとの見通しを示したことに加え、中国景気の不透明感やウクライナ情勢の深刻化など悪材料に支配されていた。
だが、注目された米国3月の消費者物価指数(CPI)において、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが予想を下回ったことで、市場の雰囲気は一転してしまった。まさかの、まさかである。
ところで、このところ為替市場では円安・ドル高が続いており、20年ぶりの円安水準を付けている。これまで円高との闘いの記憶しかないだけに、市場関係者の戸惑いも大きい。資源高、日米金利差の拡大などによるものだが、なかでもわが国と米国との金融政策の違いが決定的な要因である。
いずれにしても、円安による輸入物価の上昇は国民の家計を直撃することは間違いない。政府は早速、物価高に対する緊急対策を講じるという。だが、一方で日銀は物価2%上昇を目指して金融緩和を維持する。政府と日銀の政策は全く逆なのだ。株式市場が動けないのは、この“支離滅裂”な政策のためかもしれない。
こうしたなか、株価はこれからどうなるのか。4月13日、14日の急騰で底入れ論が強まったことは事実だ。週末15日も上昇し、先行き戻りの肝である2万7300円処を突破すれば、3月29日の高値2万8252円(終値ベース)、さらには3万円への道も開け、底入れ確認となった。
だが、15日が反落したことで、週明け18日にそれ相応の上昇をみせることが肝要となった。その意味で、週明けは正念場となろう。
●「資源高」をキーワードに銘柄を選別
もっとも、こうした見通しが示せること自体、底入れが近づいているということだ。市場環境からすれば、5月3日、4日に開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)でのQT決定前後が次のヤマ場となろう。QTは前もって株価に織り込めない性格の材料だ。金利上昇とは異なり、QTは明確に市場から資金を回収することになる。市場の質的変化が起こることは明白だ。
カネ余りで株価が上昇した時代と決別することになれば、物色の対象となる銘柄も変化せざるを得ないことになる。市場底入れ論が醸し始めた4月13日、14日に物色された銘柄を精査すると、目立ったのは鉄鋼、重工業、商社などだ。これらはかつて日本経済を主導し、市場でもてはやされた業種に属するものだ。ここ一両年の相場の牽引役だった高PERのハイテク株と対照的な銘柄群となる。いま姿を変えて、再び市場の牽引役になろうとしているようにみえる。注目しておきたい。
とはいえ、当面はやはり資源高は無視できない。その観点から銘柄を選ぶと、まずは日揮ホールディングス <1963> [東証P]である。LNG(液化天然ガス)プラントはいまの時勢を考慮すれば大型化せざるを得ない。LNGプラントを手掛ける同社のメリットは大きい。
また、株式需給に軸足を置いた銘柄としては、コスモエネルギーホールディングス <5021> [東証P]に注目したい。徐々に信用取引の取り組みに厚みが増してきた。
最後に、三菱重工業 <7011> [東証P]を追いかける川崎重工業 <7012> [東証P]がおもしろそうだ。水素事業へのシフトに加え、株価が安いことも好材料といえる。
2022年4月15日 記
株探ニュース