米決算の勘所を探る、NYダウはFOMC後に向け浮揚力取り戻せるか <株探トップ特集>

特集
2022年4月19日 19時30分

―インフレ懸念で高PER銘柄に警戒感、石油や防衛、そしてディフェンシブ株に注目―

世界の株式市場は、足もとで方向感に欠ける一進一退状態が続く。市場では、インフレ警戒感が続くなか、米国金融政策の行方に対する関心が強まっている。そんななか、米国では1~3月期決算の発表シーズンに突入した。依然としてアップル<AAPL>などの主要ハイテク企業への注目度は高いものの、足もとで追い風が続く原油や農業、防衛関連企業への関心は急速に膨らんでいる。決算シーズンを迎えた米国市場のポイントを探った。

●ハイテク企業の業績伸び悩めば売り浴びる展開も

18日のNYダウの終値は3万4411ドルと今年1月4日に記録した最高値(3万6799ドル)からは6%超下落した水準にある。ロシアによるウクライナ軍事侵攻を受け、3月8日には3万2632ドルまで下落し、1月高値からの下落率は11%を超えたが、足もとでは値を戻し、保ち合い状態にある。

そんななか、米国市場は決算シーズンに突入した。米国大手企業の決算発表を見るポイントが、昨年と今年とでは大きく異なる点には注意が必要だ。米金利が上昇局面にあるなか、大手ITを含むハイテク系では、高PERを維持できるだけの業績の伸びが見込めるかが最大のポイントだ。表面上は大幅増益となったとしても業績が伸び悩めば、「株価は売りを浴びる可能性もある」(アナリスト)という。一方、石油などエネルギー、穀物、防衛などへの追い風はどの程度か。また、ヘルスケアなどを含むディフェンシブ株の業績の堅調さを確かめる状況にもある。

●決算シーズン突入告げる大手金融会社の業績は底堅い

既に、米国では13日のJPモルガン・チェース<JPM>、14日のシティグループ<C>といった大手金融企業を皮切りに決算シーズンに入った。18日にはバンク・オブ・アメリカ<BAC>の1~3月期決算が発表されたが、純利益は前年同期比12%減の70億6700万ドルだった。ただ、利ザヤの改善で純金利収入は13%増と伸びたことが好感された。「米金融機関の決算は、前年が良かった反動で前年同期比では減益だが、内容自体は悪くはなかった」(アナリスト)といい、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]など大手金融機関にとっても安心できる内容だった。

●ネットフリックスやGAFAMは期待に見合う業績を示せるか

米国決算は今晩発表のネットフリックス<NFLX>などのハイテクグロース系企業の発表から本番を迎える。ネットフリックスは会員数の伸びが関心を集めるほか、今後の米大手IT企業の「GAFAM」絡みでは、26日のマイクロソフト<MSFT>、アルファベット(グーグル持ち株会社)<GOOG>、27日のメタ・プラットフォームズ<FB>(旧フェイスブック)、28日のアップルとアマゾン・ドット・コム<AMZN>が注目を集める。その結果は、ナスダック上場企業を中心とするハイテク株に大きな影響を与えよう。また、テスラ<TSLA>は20日に決算発表を行うが、足もとではイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がツイッター<TWTR>買収に向けテスラ株を売りに出すか、どうかが投資家の関心となっている。

半導体株では、20日にオランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディング<ASML>の決算が発表されるほか、28日のインテル<INTC>や5月3日のアドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>などが注目される。エヌビディア<NVDA>は5月25日の予定だ。「半導体関連では、高成長を株価に織り込んだエヌビディアなどより、低PERのインテルなどの方が評価されやすい」(アナリスト)との見方もある。

●米国株をPER何倍まで買えるかが最大の焦点

一方、足もとで勢いをつけているのが、エネルギーや防衛、穀物、あるいはディフェンシブ株だ。特に、19日には防衛大手のロッキード・マーチン<LMT>と代表的なディフェンシブ株であるジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>が決算発表を行う。また、石油大手のエクソン・モービル<XOM>とシェブロン<CVX>は29日に、穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド<ADM>が26日、防衛関連ではノースロップ・グラマン<NOC>が28日に決算を発表する。

米決算発表に対する関心は高い。とは言え、前述のように足もとの市場の最大の関心は「インフレ経済下で米国株をPER何倍まで買っていいのかというバリュエーションの問題」(アナリスト)に向かっている。その点を評価するためには米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を見極める必要がある。市場には急激な利上げで米国市場がハードランディングすることを警戒する見方もある。複数回の利上げを経ても景気の腰折れはないとみて、足もとの警戒感が後退すれば、その時、GAFAMや半導体株が出直り、NYダウやナスダック指数は上昇に向けた勢いを取り戻しそうだ。景気の先行きに不透明感が強まったままなら、ディフェンシブ株や穀物、防衛関連株などの堅調地合いが続き、NYダウはなお一進一退が継続するだろう。このため、決算発表期間中となる5月3~4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に対する反応が大きな焦点となっている。

◆米主要企業の決算発表スケジュール

4月

19日  ネットフリックス、IBM、ロッキード・マーチン、ジョンソン・エンド・ジョンソン

20日  テスラ、ASMLホールディング

22日  ベライゾン・コミュニケーションズ

25日  コカ・コーラ

26日  マイクロソフト、アルファベット、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド

27日  ボーイング、メタ・プラットフォームズ、クアルコム、スポティファイ

28日  アップル、アマゾン、キャタピラー、インテル、ツイッター、ノースロップ・グラマン

29日  エクソン・モービル、シェブロン

5月

3日  アドバンスト・マイクロ・デバイシズ、スターバックス

11日  ウォルト・ディズニー

19日  アプライド・マテリアルズ

20日  ディア

25日  エヌビディア

(注)予定は変更となることがあります。

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