コロナ禍からの回復続く、23年2月期【連続増益】リスト 32社選出 <成長株特集>
小売業をはじめ内需関連が多くを占める2月期決算企業の本決算発表が出そろった。本特集では、新型コロナウイルス感染拡大を受けて落ち込んだ業績の回復が進むなか、23年2月期に経常利益が前期に続いて増益を見込む企業を探った。
株探集計によると、23年2月期の業績見通しを開示した198社のうち、経常利益ベースで増益もしくは黒字転換を計画する企業は128社だった。コロナ禍からの業績回復が顕著にみられ、今期の経常利益がコロナ流行前の20年2月期を上回る見通しを示す企業は全体の7割近くに上る。
下表では、時価総額100億円以上の銘柄を対象に、23年2月期に経常利益が連続で増益を見込み、かつ同利益が前期と比べて3%以上伸びる見通しを示している32社を選び出し、増益率が大きい順に記した。「★」は今期に最高益を見込む企業。
増益率トップはJ.フロント リテイリング <3086> [東証P]、2位は高島屋 <8233> [東証P]と大手百貨店が並んだ。Jフロントの23年2月期業績は、主力の大丸松坂屋百貨店が富裕層を中心に来店客数が増加するほか、商業施設「パルコ」も客足が戻り、売上高は2ケタ増を見込む。高島屋も前年休業した反動や新型コロナウイルスに関わる影響の縮小を背景に、国内百貨店は増収増益の計画だ。また、両社ともに構造改革による固定費削減を継続することで、Jフロントが前期比2.8倍、高島屋は同2.3倍の大幅増益を計画している。
選出リストは、Jフロントと高島屋を筆頭に小売業が半数を占めた。国内小売業界を牽引するイオン <8267> [東証P]とセブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]がリスト入りしたほか、衣料品販売のアダストリア <2685> [東証P]としまむら <8227> [東証P]、外食チェーンを展開する壱番屋 <7630> [東証P]とコメダホールディングス <3543> [東証P]などが入った。なお、セブン&アイは米コンビニ「スピードウェイ」の買収によって、前期に売上高で11年ぶりにイオンを逆転している。
また、サービス業のリスト入りも目立つ。13位のベクトル <6058> [東証P]は2期連続の最高益更新を狙う。先行投資フェーズに位置づけるプレスリリース事業は減益を見込むものの、前期に国内PR案件とタクシーサイネージが好調だった主力のPR・広告事業が、新型コロナの影響を受けながらも成長が続く見通しだ。併せて、配当による株主還元を強化し、年間配当は前期比5円増の18円に増配する方針を示している。
14位のクリーク・アンド・リバー社 <4763> [東証P]はゲーム、映像、Web、電子書籍、YouTubeなどのプロフェッショナルに特化した人材派遣や請負を手掛ける国内クリエイティブ分野の増益基調が継続するほか、医師紹介や会計・法曹関連の案件も増加し、今期の経常利益は前期比17.0%増の40億円と4期連続の最高益更新を目指す。足もとでメタバースやNFT関連の新規事業に注力していることも評価され、株価は上場来高値圏を走る展開となっている。
製造業ではローツェ <6323> [東証P]と安川電機 <6506> [東証P]の2社がリスト入りを果たした。5位のローツェは世界的な半導体需要の拡大を追い風に、米国、中国、台湾向けに主力のウエハー搬送装置の受注拡大が継続するうえ、FPD関連もベトナム向け自動化装置などが伸びる。今期の経常利益は前期比38.9%増の247億円と5期連続の最高益更新を見込み、配当も前期比45円増の110円と大幅増配する計画だ。好決算を受けて株価は連日急騰し、14日に上場来高値1万3580円をつけている。
一方、6位にリスト入りした安川電機の今期業績は税引き前利益が前期比33.6%増の740億円と2期連続の最高益更新を見込む。欧米の自動車部品メーカーにおける積極的な自動化投資を背景にロボットの販売が増加するほか、主力のサーボモーターも高水準な受注が続く。また、為替の円安進行も収益を大きく押し上げる。併せて、年間配当は64円と前期比12円の増配方針を示した。ただ、前期業績が計画未達だったことで先行きが懸念され、株価は冴えない動きとなっている。
┌─── 経常利益 ───┐ 連続 予想
コード 銘柄名 増益率 23年2月期 22年2月期 増益期数 PER
<3086> Jフロント 183 17500 6190 2 22.2
<8233> 高島屋 132 16000 6903 2 19.6
<8278> フジ 60.9 16000 9945 2 31.8 ★
<8905> イオンモール 39.8 45500 32540 2 15.7
<6323> ローツェ 38.9 24755 17818 5 11.9 ★
<6506> 安川電 33.6 74000 55378 3 22.8 ★
<7630> 壱番屋 23.3 5140 4168 2 45.1
<8267> イオン 22.7 205000 167068 2 77.0
<2685> アダストリア 22.5 10000 8166 2 14.9
<4714> リソー教育 21.4 3700 3048 2 24.1 ★
<6532> ベイカレント 20.9 25960 21469 8 32.6 ★
<1712> ダイセキS 18.4 2500 2112 2 11.4
<6058> ベクトル 17.3 6100 5201 2 19.8 ★
<4763> C&R 17.0 4000 3419 4 19.3 ★
<2670> ABCマート 13.9 32200 28260 2 21.0
<3382> セブン&アイ 12.1 402000 358571 2 21.3
<3543> コメダ 10.5 7930 7179 2 19.1 ★
<9381> エーアイテイ 10.4 4220 3821 6 12.2 ★
<2669> カネ美食品 10.2 2280 2069 2 19.4
<4745> 東京個別 9.6 2633 2402 2 18.5
<2305> スタ・アリス 9.4 6600 6032 3 10.4 ★
<7545> 西松屋チェ 8.9 14000 12852 3 9.8 ★
<3548> バロック 8.5 3088 2846 2 16.0
<3141> ウエルシア 8.4 51600 47590 7 19.5 ★
<2726> パルHD 8.4 8300 7660 2 13.5
<9787> イオンディラ 7.7 17000 15789 2 13.0 ★
<9793> ダイセキ 7.5 14100 13118 2 25.4 ★
<6086> シンメンテ 5.9 977 923 2 18.4 ★
<3093> トレファク 5.5 1112 1054 2 15.0
<8227> しまむら 4.8 52998 50567 3 11.2 ★
<6183> ベル24HD 3.2 13900 13463 4 12.0
<3353> メディ一光G 3.2 1400 1357 2 11.0
※経常利益の単位は百万円。21年1月以降に上場した企業、今期最終減益を見込む企業は除いた。
株探ニュース