明日の株式相場に向けて=目先リバウンド狙いの機熟す

市況
2022年5月10日 17時00分

きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比152円安の2万6167円と続落。朝方は前日の米国株市場の急落を受け、リスク回避の売り圧力が強く意識されたが、先物主導の売り仕掛けの反動で買い戻しが入った。前場後半を境に下げ渋る展開となり、後場はほぼ一本調子の戻りをみせた。一時70円安程度まで下げ幅を縮小したがプラス圏には届かず、引け際に大口の売りで押し返されたものの、足もとで流れの変化を感じさせる値動きだった。

前日の米国株市場はNYダウが650ドルあまりの下げをみせたが、それよりもハイテク株の構成比率が高いナスダック総合株価指数の売られ方が激しく、4%を超える下げとなった。直近3営業日で10%を超える下落となり攻防ラインと言われていた1万2000大台を終値で大きく割り込んだ。相当な重量の空売りも上に乗せられているはずで、目先はショートカバーによるリバウンド局面も想定されるところである。

また、きょうはS&P500指数にまつわる需給面の思惑が市場で取り沙汰されていた。S&P500は4000大台ラインが強く意識されており、前日に終値で3991まで売り込まれ、にわかに風雲急を告げる状況にある。市場関係者によると「今月20日に予定されるS&P500のオプションSQ算出にあたって、今回は4000が突出して厚いことから、当面はここを巡っての攻防となる。4000を大きく下回った場合に、オプションSQ絡みの投げが加速する可能性が高く、思惑が錯綜している」(ネット証券マーケットアナリスト)という。売り方と買い方のせめぎ合いは、米国株市場でも活発のようだ。

ただし、行き過ぎた振り子は必ず戻る。中勢トレンドで考えれば、今は戻り売りを優先せざるを得ない相場で、徐々にリバウンドの頂点も切り下がっていくことが想定されるが、とはいえ相場は生き物と言われるだけに、よほどの“有事”でも起こらない限り無機質に一方通行の下げが続くことはない。日経平均でいえば、きょうは一時500円を超える下落で2万5700円台まで水準を切り下げる場面があった。3月の急反騰相場で形成した「三空」の最初のマド、つまり上方から覗き込めば一番遠くにある3番目のマドをほぼ埋めた格好となったが、三空マド埋めを達成したことから、ここは短期的に切り返すタイミングで打診買いを入れやすい場面だ。長い下ヒゲを引いたからといって底が入ったとはいえないが、きょうの日経平均の戻り足は、売り方の立場からすれば焦りを誘うシーンであったかもしれない。米国ではあすの日本時間夜9時半に発表される4月の米CPIの結果次第で大きく揺れる可能性がある。しかし、このビッグイベントは買い方同様に売り方も怖いのである。

個別銘柄に目を向けると、きょうは全般急落局面の時間帯から電力株が強さを発揮していた。柏崎刈羽原発の再稼働の可能性を材料に需給相場の色を強める東京電力ホールディングス<9501>は、きょうは売り買い交錯のなかもやや弱含みで推移したが、そのほかの中部電力<9502>、関西電力<9503>、東北電力<9506>など残り電力9社のうち8社の株価が上昇した。英国金融街のシティーで、日本語スピーチに「インベスト・イン・キシダ」というワンフレーズを、ある意味センセーショナルに織り込んだ岸田首相だったが、残念ながら今のところ海外マネーの日本株に対する視線は冷めている。しかし皮肉にも、脱炭素戦略への言及で、「安全を確保した原子炉を有効活用する」というコメントの方に、投資資金は目聡(めざと)く反応している。

最近では、電力株以外で関連最右翼とみられた助川電気工業<7711>などが強い動きで目を引いた。このほかでは、財務好実態で、PBR0.5倍前後、配当利回り3.2%台の東京エネシス<1945>。原発メンテナンスで高実績を有し、隠れ有望株の一角としてマーク。23年3月期営業利益は前期比微増の32億円を見込むが、これは保守的との見方も強い。

あすのスケジュールでは、4月上中旬の貿易統計、3月の景気動向指数(速報値)など。海外では4月の中国消費者物価指数(CPI)、4月の中国卸売物価指数(PPI)、4月の米CPI、4月の米財政収支など。また、マレーシア中銀の金融政策決定会合の結果も発表される。国内主要企業の決算発表では、INPEX<1605>、塩野義製薬<4507>、富士フイルムホールディングス<4901>、ブリヂストン<5108>、トヨタ自動車<7203>、オリンパス<7733>、NTTデータ<9613>などが予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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