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「自分はただの人」と気づいたら、資産4倍&累積配当金2200万円

特集
2022年5月10日 10時25分

いくぜ、アメ株!二刀流の極め技正直者さんの場合-最終回

登場する銘柄

不二家<2211>、楽天グループ<4755>、マクロミル<3978>、プロネクサス<7893>、ブレクスルー<2464>、日本電技<1723>、双日<2768>、中部鋼鈑<5461>、ダイニチ工業<5951>、北川工業<上場廃止>、倉敷機械<上場廃止>、三條機械製作所<上場廃止>

編集・構成/真弓重孝(株探編集部)、文・イラスト/福島由恵(ライター)

【タイトル】正直者さん(ハンドルネーム・50代・男性)のプロフィール:
自称「メーカー勤務の窓際職」のサラリーマン投資家。60歳を迎える、今2022年夏に定年退職予定。会社では出世競争から脱落した"不良中年"だったが、仕事で余ったエネルギーを株式投資に向けたことが奏功し今年4月には億り人達成。19年には目標の年間配当金300万円を達成しており、安泰のリタイア生活を送れる見通しがついている。投資でも順風満帆とはいかず、日本株や海外投信、FX(外国為替証拠金)取引などで大ヤラレ体験。その失敗を糧に08年から転身したアメ株インカム投資で花が開く。投資本『株式投資の未来』(日経BP社)をバイブルとし、そこで身に付けたバイ&ホールドの投資法を愚直に貫いている。

前回記事「自称「不良中年」、正直投資で会社にサヨナラ」を読む

今回登場中の正直者さん(ハンドルネーム)は、今年2022年4月、投資元本を4倍にし、億り人を達成したすご腕さん。かねて目標としていた年間配当300万円到達も、19年にクリアしている。

ただ、ここまでの道のりは平たんではなかった。日本株やFX(外国為替証拠金)取引などで1000万円級の大ヤラレを食らった。そこから学んで得たものは、投資のノウハウに限らなかった。

過去の自分が自分自身を過大評価していたことに気づき、自分は普通の人、直人(なおびと)であると改めて認識した。等身大の自分の姿を見つけたことが、投資で人生を切り開く大きなきっかけになった。

最終回は投資での失敗が、投資に限らず、人としてもステップアップすることにつながった姿を紹介していく。

投資を「日本株とFX」の2本立てで開始

正直者さんが本格的に投資を始めたのは2004年、42歳の頃だった。倹約上手な妻の取り組みの成果で浮いた生活費に加え、それまでの英国駐在時に貯めた英ポンドの外貨預金などが円安効果により拡大したことで、余裕資金は数百万円規模にまで膨らんでいた。これを元手に、日本株と、外貨預金の延長線でFX(外国為替証拠金)取引を2本立てでスタートした。

地方のメーカー勤務で投資には縁遠い環境にあった正直者さんが、この世界にスッと入っていけたのは、海外勤務で外貨の扱いに慣れていたこともある。また、この頃、図書館で偶然見つけた資産形成関連の本からひらめきを得たことも、大きく影響したという。

「まさに目からウロコ」と、感動すら覚えた正直者さん。タイトルにあった「お金持ち」というキーワードにひかれて手にとったその本には、どうしたらお金を儲けられるのかがわかりやすく書かれている。学校では教えてくれなかった実践的な内容にぐんぐんとハマっていき、その後も関連書籍を漁るように読み進めていった。

投資の知識をにわかに得た矢先、ビギナーズラックを手にすることになる。その銘柄は、まず参戦した日本株の菓子メーカー、不二家<2211>だった。

財務内容をざっと見て問題のないことが確認できた一方で、株価チャートを見ると大きく売られた状況に。「こんなオイシイ状況のうちに先回り買いすれば、株価はそのうちリバウンドするだろう」という程度の軽いノリで買い注文ボタンを押した。

■リーマン・ショック前後の不二家の月足チャート(2003年~10年)【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同

株高追い風に努力もなく資産拡大へ

ほどなく同社の株価はぐんぐん上昇。2倍にまで伸びたところで利益確定する。ここから成功の連鎖が始まっていく。

正直者さんはこの利益ですっかり気を良くし、機械メーカーの倉敷機械<現在は上場廃止>、ネット通販を中心に金融や旅行関係など幅広く手掛ける楽天グループ<4755>(当時は楽天)、市場調査のマクロミル<3978>、IR(投資家向け広報)支援のプロネクサス<7893>など次々と銘柄を増やしていく。

■リーマン・ショック前後のプロネクサスの月足チャート(03年~10年)

【タイトル】

幸運の流れに乗った正直者さんは、今振り返れば、たいした企業分析などはナシ。とにかくピピッと来た銘柄を、好き勝手に買い集めていくノリノリ状態だった。

そんな安直な選び方でも、04~05年当時は株高基調が追い風となり、持ち株の株価はスルスルっと上昇。同時に仕掛けたFXも好調で、全体資産は着実に膨らんでいった。

「なんだ、資産形成って意外にちょろいものだな」。知らず知らずのうちに、正直者さんは慢心とまでは行かないまでも、油断が生じるようになった。そこに、間の悪いことにあのリーマン・ショックが08年秋に襲い掛かった。

ビギナーズラックは剥がれ落ち、1000万円超の損を食らう

100年に1度と言われたこの大暴落に巻き込まれた正直者さんは、日本株以外も含めて2000万円以上に膨らんでいた投資資産の評価額が、1000万円ほどまでに半減する羽目に。

日本株では、12年までに損失確定させた実現損は300万円近くまでに到達した。そしてFXでも後述するように、大きな実現損を出してしまった。

日本株で特にひどかったのは、社会人教育などを行うビジネス・ブレークスルー<2464>。尊敬していた経営コンサルタントで起業家の大前研一氏が経営トップということで、IPO(新規株式公開)直後に飛び乗り、そのまま高値掴みの憂き目に。この1銘柄だけで、損失は176万円にまで拡大してしまった。

■正直者さんのリーマン時のヤラレ内容(06~12年に損失確定させたもの)

銘柄名<コード>損失確定額
北川工業▲21万3666円
倉敷機械▲16万5640円
三條機械製作所▲3万922円
日本電技<1723>▲3万4997円
ブレクスルー<2464>▲176万1810円
双日<2768>▲6万3680円
マクロミル<3978>▲43万7690円
楽天グループ<4755>▲11万2322円
中部鋼鈑<5461>▲30万9622円
ダイニチ工業<5951>▲7万5516円
プロネクサス<7893>▲21万8772円
注:銘柄名は現時点。コードの記載がない銘柄は、現在上場廃止。▲はマイナス

■ビジネス・ブレークスルーの月足チャート(06年~11年)

【タイトル】

日本株では時間をかけて損失を確定することができたが、FX投資では、取引していたポンド、豪ドルが急激な円高進行で含み損が膨らんで強制ロスカットの対象になる。そのため、有無を言わさず400万円の大損を食らう羽目となる。

■取引金融機関からもらった強制ロスカットのメッセージ

【タイトル】

注:本人のブログ記事より抜粋

さらにダメージを膨らませたのが、経済通なる人の話の受け売りで買ってしまった海外のヘッジファンド、マン・グループが提供する海外ファンドだ。

このファンドは、元新聞記者と称する筆者が出版した書籍でも推されていた金融商品。正直者さんはそこに書かれた内容をうのみにし、ホイホイ手を出してしまっていた。挙句、待っていたのは大損失というイタイ結末だ。

いっぱしの投資家気取りだった自分を大反省

これまで見てきた大ヘコミも、さすがに「100年に1度の大暴落」ともなれば仕方のない面もある。ただし、正直者さんの場合は、マーケットの激変だけを理由にできない。ビギナーズラックに浮かれ、ろくに銘柄研究や商品の調査もせずに突っ走ってしまったことだ。そのことは、自身でも大いに反省した。

考えてみれば、当時、自分なりに張り切って投資方針を掲げてはいたものの、その内容は完全なる投資本の丸写し。具体的な数字を伴う分析などはなく、「中長期で」「分散で」「あせらず安い時に買おう」など、薄っぺらな内容だった。

たいした経験も積まないまま、単に本をたくさん読んで知識を詰め込んだというだけで、いっぱしの投資家気取りでいた自分を恥ずかしくさえ感じたそうだ。

現在続けるアメ株の高配当銘柄への投資は、この戒めの末にたどり着いたものだ。その気づきを与えてくれたのが、前回に紹介した『株式投資の未来』(日経BP社)になる。

以来、いかなる相場のもとでも淡々とこのやり方を貫く正直者さん。アメ株にはGAFAMのようなキラキラグロース銘柄もあるが、日本株での失敗を糧にボラティリティ(株価の変動率)が高くなりがちな銘柄とは一線を画してきた。

一方で、手堅く資産を膨らますには、高配当や連続配当の米国ETF(上場投資信託)もあるが、正直者さんは、その効率性や分散効果を認めながらも、その手法は選ばなかった。

自身は、やっぱり企業分析が好きで、個別銘柄の良し悪しを見極める楽しみも味わいたかったからだ。本人曰く、個別銘柄投資は「お気に入りの骨董品を愛でる感覚に似ている」のだという。

日本株などでの手痛い失敗を経験してからは、正直者さんは安定したインカムゲインを期待できる優良アメ株に淡々と投資し続け、これまで累積で約2200万円を超えるインカムゲインを獲得することに成功した。

投資の失敗から正直さを進化

大企業の退職金に相当するような金額を配当で手にすることができたのには、投資と向き合い続けていくうちに芽生えた自身の内面の変化が大きく影響している。

実は、正直者というハンドルネームの読み方は、「しょうじきもの」と「なおびと」の2つある。このうち自身の内面の変化をより表したものが「なおびと」になる。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ アメ株高配当投資を見出した2段階の正直とは?

 

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