メタバース空間を彩る次世代技術、躍動する「3DCG」関連株を追え <株探トップ特集>
―CG技術に宿る洗練された美しさ、株式市場でも次なる物色テーマの有力候補に―
任天堂 <7974> [東証P]の映画「スーパーマリオ」をきっかけに、現在「3DCG」への注目度が高まっている。これは面だけでなく奥行きが加わった3次元空間でのコンピューターグラフィックスのことを指す。言葉自体を直接聞いたことがなくても、実はこの3DCGは既に私たちの身近なものになっている。更にこの3DCGは、将来的に巨大産業に成長することが見込まれているメタバース との関連性も深い。今後株式市場でも注目必至の「3DCG」関連銘柄に焦点を当てた。
●メタバースビジネス加速の兆し
社名変更をきっかけに現在、メタバース領域へ全力を傾けている米メタ・プラットフォームズ<FB>。同社は、メタバースに欠かせない VRゴーグルなどを実際に試して購入できる実店舗「メタストア」を初めてオープンしたことが報じられている。今月9日に同社の開発拠点があるカリフォルニア州・バーリンゲームにオープンしたことが伝わっている。
報道によると、メタ以外の米大手企業の動向では、アルファベット<GOOG>傘下のグーグルは2021年に自社開発のスマートフォンを販売する実店舗を初めて開店したほか、アマゾン・ドット・コム<AMZN>も衣料品の実店舗を22年中に設立予定であると伝わっている。これは、消費者の反応を直接確かめ、開発に最速で生かすことを目指した動きであり、そういった意味では、今回のメタの実店舗開設は今後のメタバースビジネス加速の兆しと捉えることもできるだろう。
●「鬼滅の刃」も3DCGが重要な役割担う
そうしたなかで注目しておくべき技術の一つが「3DCG」だ。これは、3Dimensional Computer Graphicsの略称で、3次元空間で物体作成、色塗りや陰影形成、アニメーション化を行うものだ。いわゆる一般的なアニメや漫画は2次元、つまり面表現だが、3DCGは更に「奥行き」が加わることになる。
実はこの3DCGは既に私たちの身近なものになっている。例えば社会現象的なヒットとなった「鬼滅の刃」のアニメも、いわゆる「作画」の洗練された美しさが話題になったが、3DCGの技術がふんだんに用いられている。また、4月後半に任天堂から更なるクオリティーアップのため、公開延期が発表されたものの、世界的に大きな期待を集めている映画「スーパーマリオ」も3DCG作品とされている。同映画は、「怪盗グルー」シリーズや大ヒットを記録したアニメーションミュージカル・コメディーの「SING」などを手掛ける米イルミネーション(カリフォルニア州)と共同で制作されることもあり、今後の追加情報が待たれる。その他、有名なところでは3DCGを用いて「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」をリメイクした「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」も当時関心を集めた。
●VR、ARとともに有力テーマとして浮上へ
メタバースでは、自分はもちろん全てのコンテンツが3DCGを核として構成される。メタバースを語る際にVRやARが取り上げられることは多いが、今後は3DCGという分野も投資家の関心を誘う有力テーマとして浮上しそうだ。
現時点でメタバースには法的な論点をはじめとして、まだまだ整理していかなければならない課題は多い。しかし、4月にはKDDI <9433> [東証P]や東急 <9005> [東証P]などで構成されている「バーチャルシティコンソーシアム」が、メタバース及び都市連動型メタバース業界発展のために「バーチャルシティガイドラインver.1」を公表するなど、一過性のブームではなく、メタバースを本格的なものとして定着させるための機運がさらに高まっている。足もとの混乱した株式市場に落ち着きが戻ったその時、大きな躍進を遂げることが期待されるテーマの一つとして、「3DCG」関連銘柄が脚光を浴びることになるだろう。
●3DCG関連の有力6銘柄
◆サイバーエージェント <4751> [東証P]~人気ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」を開発する子会社Cygamesでは、独自のモーションキャプチャースタジオを東京、大阪で展開する。モーションキャプチャーは、人やモノの動きを瞬時に3DCG化する技術であり、スタジオ内で100台以上のカメラを活用することで、専用機向けゲームで世界的なヒットを狙っている。ウマ娘など国内向けスマホゲームで稼いだ利益の一部を専用機向けタイトルに振り向ける方針。
◆ソニーグループ <6758> [東証P]~3DCG化するボリュメトリックスタジオを20年に開設。21年12月に開催された「Sony Technology Day」において、片目で4K、両目で8Kの高解像度を実現したVRヘッドマウントディスプレイシステムを紹介した。人の頭の動きに合わせて高精細にリアルタイムで表現でき、ゲームや映像コンテンツのほか、医療など産業用途での活用が期待される。
◆日清紡ホールディングス <3105> [東証P]~同社グループの日本無線は、川崎汽船 <9107> [東証P]、YDKテクノロジーズ(東京都渋谷区)と共同で船舶の自動運航船の実現に向けた統合操船者支援システムの共同研究開発を行っている。これはデジタルツインといった周囲の環境やシステムなどをデジタルで複製する技術であり、操縦室のモニターには船舶周囲の情報を3DCGで表示させる。
◆メディアドゥ <3678> [東証P]~VR技術を駆使した「XRマンガ」「コミなびVR」など出版・コンテンツ業界の市場拡大を目指した事業を展開。22年1月に世界最大のVRイベントなどの開発ソリューションを提供するHIKKY(東京都渋谷区)へ出資し、資本・業務提携を締結。協業で、既存事業と連携したメタバースの新たな取り組みを拡大させていく。
◆カヤック <3904> [東証G]~グループのカヤックアキバスタジオは、21年7月にCGアニメーション映像の制作に特化したアニメ事業部を設立。グループで手掛けてきたVR、AR、ゲームなどの知見を活用し、バーチャル空間でしかできない撮影方法などを研究開発する。事業部責任者の天野清之氏は映像会社で3DCGクリエイターとして映像制作を手掛けたキャリアを有する。
◆IMAGICA GROUP <6879> [東証P]~映像の企画から制作、映像編集、配信・流通などをグローバルに展開。グループのイマジカデジタルスケープは、文化庁委託事業 令和3年度 アニメーション人材育成調査研究事業「あにめのたね2022」の、作品制作を通じた技術継承プログラムの1社に選定されている。3DCGアニメ作品「天神」を発表。
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