馬渕治好氏【反騰局面入り東京市場、本格的な戻りはあるか】(2) <相場観特集>
―米インフレや中国景気減速などの悪材料をどうこなす?―
週明け16日の東京株式市場は、日経平均株価が続伸したものの、朝高後に上げ幅を縮小する展開となった。前週、NYダウやナスダック総合株価指数などが大幅上昇したことを受け日経平均は足もとリバウンドに転じているが、この流れが中期的に続くのかどうかに投資家の関心が向いている。5月相場も後半に差し掛かっているが、6月に向けて全体相場は反騰色を強めるのかどうか、先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。
●「6月中に2万9000円台チャレンジへ」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
目先、日経平均は反発局面に入っている。今後の見通しについても、結論から先に言えば日米株式市場ともに前週末で底入れしたとみている。米インフレに対する警戒感が強いが、これは国際商品市況の上昇が主たる要因で、特にエネルギー価格の高騰が背景にある。しかし、原油市況は高止まりしているとはいえ、ピーク時からは水準を切り下げ上昇一服局面にあるほか、産業や住宅向け資材として需要の高い銅や木材などの市況も落ち着きをみせている。
前週発表された4月の米CPIは市場予測を上回ったとはいえ、3月と比べて伸び率そのものは鈍化しており、インフレのピークアウト感が台頭している。ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの感染拡大など、依然として楽観はできないものの、株式市場の見地では織り込みが進んでおり、悪材料としてのインパクトは薄くなっている。直近の米国株市場の動向を振り返ると、IT関連株などに追い証発生に伴う投げ売りが出たことで下げが大きくなったが、これは企業実態によるものではなく需給面の影響が強い。
ファンダメンタルズに目を向ければ、日米いずれも企業業績は悪くないといえる。東京市場では前週末でほぼ決算発表を通過したが、23年3月期についての見通しはかなり良好であり、バリュエーションから判断して割安感が強い。日経平均は6月中に2万9000円近辺を目指す強調展開を予想している。一方、ここからの下値は浅く、2万6000円どころがメドとなろう。ボラティリティの高い地合いは当面続きそうで、仮にオーバーシュートして2万6000円台を割り込むような場面があれば、そこは押し目買いの絶好のチャンスとなろう。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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