明日の株式相場に向けて=したたかに立ち回る個人投資家
きょう(31日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比89円安の2万7279円と3日ぶり反落。週明けに600円近い急伸をみせた日経平均だったが、先物を絡めたショートカバーでやや行き過ぎに買われた感もあっただけにきょうは上昇一服となった。前日の米国株市場がメモリアルデーの祝日に伴い休場だったことで、買い手掛かり材料難が意識され、ここであえて上値を買い進む根拠は見いだしにくい。
前場取引時間中に発表された中国の5月の製造業PMIは市場コンセンサスを上回ったものの、3カ月連続で好不況の分水嶺である50を下回っており、ポジティブ視する動きは限定的だった。なお、引け際にはMSCIの指数イベント(銘柄変更)があり、全体売買代金は5兆5000億円強と大きく膨らんだが、全体相場のトレンドを左右するということはなかったようだ。
前日は欧州株市場がほぼ全面高だったが、各市場ともに上げ幅は限定的だった。米国と同様、欧州でもインフレを深刻視するムードが強く、足もとの経済指標で一喜一憂している状況にある。市場関係者の視線を集めたのは5月の独CPI(速報値)だ。前年同月比で8.7%上昇となり、4月の7.8%から伸びが加速した。これは約50年ぶりの高水準で、インフレのピークアウトに対する期待は裏切られる形となった。
ECBは7月に政策金利を0.5%引き上げるとの見方が優勢となっているが、株式市場もこれを織り込むには今しばらく時間を要すると思われる。直近、EU首脳がロシア産原油について今年の年末までに90%輸入停止することで合意したと報じられたが、これについて市場関係者は「ロシア産原油への依存比率の高いドイツが、4月下旬あたりから禁輸に対する反対姿勢を撤回する動きをみせていたことで想定内の流れとはいえ、インフレのピークアウト感が伴わないなか、(禁輸がもたらす)ネガティブな要素は無視できない」(中堅証券アナリスト)という。このニュースで、WTI原油価格と米長期金利は時間外で上昇した。米株価指数先物の動きは落ち着いていたが、今晩の米株市場の動向が注視される。
今週末3日には米国で5月の雇用統計発表が予定されている。平均時給の伸び率にひと際マーケットの関心が高い。平均時給は伸び率の鈍化が予想されているが、仮に減速したとしても市場コンセンサスとの兼ね合いで、株式市場がどう反応するか見えにくく、やはり、ここも蓋を開けてみないことには分からない。
個別株も、きょうの地合いを見る限り、利益の乗っているものは早めに回収する動きが観測された。個人投資家はしたたかである。日経平均の下げは大したことがなかったが、値下がり銘柄数は値上がり数の2倍にのぼった。そのなか、中小型株への売りが目立っており、個人はメリハリを利かせたスタンスで、目先の逃げ場を上手くとらえていることが窺える。
インバウンド関連では、継続して追ってきた明治海運<9115>がフルスロットル状態。きょうは200円高の1255円まで上値を伸ばす場面があった。同社株のここ最近の上げ足は“理外の理”と言ってもよく、貸株調達による空売り買い戻しのなせる業である。反動は当然予想されるところで、ここからの参戦はいったん様子を見てからということになる。
また、ホテル関連では京都ホテル<9723>に上昇一服感が出ているが、コスモスイニシア<8844>は上げ足が加速した。ホテル以外のインバウンド関連としては力の源ホールディングス<3561>に意外性がある。日本の「ラーメン」は外国人観光客に大人気を博していた。コロナ禍によるブランクを経てもラーメン人気が色褪せることはないはずで、「一風堂」を展開する同社にスポットライトが当たる可能性がある。株式需給面の取り組み妙味も見逃せない。このほか、羽田―金浦路線再開の観測を背景に日本空港ビルデング<9706>などもマークしておきたい銘柄となる。
あすのスケジュールでは、1~3月期法人企業統計、5月の新車販売台数、5月の軽自動車販売台数など。海外では1~3月期豪GDP、5月の財新中国製造業PMI、4月のユーロ圏失業率、5月の米ISM製造業景況感指数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)など。また、カナダ中銀が政策金利を発表。なお、韓国とインドネシア市場は休場となる。(銀)