人気回復なるか6月IPO、ナスダック反発なら強含み展開に期待も <株探トップ特集>
―初のVTuber企業などに関心集まる、下旬の上場ラッシュの動向注視―
あすから6月相場が始まる。5月相場は、日経平均株価が月末に一時2万7400円台に乗せ、約1ヵ月ぶりの水準を回復した。中小型株の動向を示す東証マザーズ指数も反発をうかがう状況だ。そんななか、 6月IPOの動向が関心を集めている。来月は13社の上場が予定されており、特にVTuber(Vチューバー)企業の登場が話題を集めているほか、メーカー系やIT系銘柄の動向が注目されている。
●5月IPOのトリプルアイは人気化
31日の東証グロース市場には、トリプルアイズ <5026> [東証G]が新規上場した。システム開発に加え、人工知能(AI)関連事業を手掛けるという時流に乗る銘柄ということもあり、買い人気が殺到。上場初日は、公開価格880円の2.3倍となる2024円までカイ気配を切り上げたが値はつかず、初値はあす以降に持ち越された。資金吸収額が5億円強と小さく、約1ヵ月ぶりのIPOとなったことも人気化の要因に働いた。
先月の4月IPOは9社が登場。東証再編後の第1号となり、グロース市場に4日に上場したセカンドサイトアナリティカ <5028> [東証G]の初値が公開価格比で約2.3倍、同月12日にグロース市場に上場したサークレイス <5029> [東証G]の初値は同3.2倍となった。4月は初値が公開価格を割り込む初値割れは1社にとどまるなど堅調だった。
その一方、3月は上場8社のうち3社が初値割れとなるなど冴えなかった。春先のIPOはウクライナ危機の波乱の影響を強く受けた。それだけに、4月の堅調な初値に続く、この日のトリプルアイの人気は今後に期待を持たせるものだ。軟調な値動きが続いた米国市場は目先、反発基調も期待されており、特に「ナスダック市場が反発すれば、IPO市場も盛り上がるのでは」(市場関係者)との期待も出ている。
●6月IPOはエニーカラーに視線集まる
そんななか、IPOの6月相場が始まる。13社の登場が予定されており、昨年に比べ9社の減少だ。上場企業の内訳は、スタンダード市場が2社、グロース市場は11社といった具合だ。プライム市場に直接上場するような大型企業はないが、メーカー系やIT系企業なども目立つ。
その6月IPOで、最も高い関心を集めているのが8日にグロース市場に新規上場するANYCOLOR <5032> [東証G]だ。同社はVTuberグループ「にじさんじ」の運営を行っている。VTuberとは、Virtual YouTuber(バーチャル・ユーチューバー)の略称。ライバーと呼ばれる現実の人間を、モーションキャプチャー技術を利用してバーチャルキャラクターに置き換え詳細な表情や仕草を表現して、動画配信を可能としている。ユーザーはライブ配信のチャット機能を通じてVTuberとコミュニケーションが可能だ。「にじさんじ」には約150人のVTuberが所属。ライブストリーミングによる双方向のコミュニケーションの構築を図り、イベントの開催やグッズ・デジタル商品の販売などを行っている。2017年の会社設立から5年程度での株式上場となるが、2期目には黒字化を果たし業績は急拡大中。英語圏及び中国を中心に海外でもビジネスを展開している。資金吸収額は27億円程度だが、初のVTuber企業の上場でもあり、人気化が期待されている。
●23日には4社が同時上場
エニーカラーが登場した後は、20日までIPOはないが下旬にかけては新規上場のラッシュとなる。特に、23日は4社が同時上場する。20日に上場するヤマイチ・ユニハイムエステート <2984> [東証S]は和歌山県を中心とする近畿エリア全域で不動産の開発・売買、賃貸などを展開している。仮条件から弾いた資金吸収額は21億円前後。仮条件は想定価格から下方に伸ばしたレンジとなった。23日には、ウェルネス・コミュニケーションズ <9228> [東証G]とジャパンワランティサポート <7386> [東証G]、坪田ラボ <4890> [東証G]、ホームポジション <2999> [東証S]の4社が登場する。ウェルネスCはヘルスデータプラットフォーム事業、Jワランティは住宅設備機器の延長保証事業、坪田ラボは近視などの治療に係る医薬品、医療機器など、ホームポジは戸建て分譲事業を手掛ける。特に、坪田ラボは認知症の症状改善などを目指すメガネ型医療機器の開発などを行っている。
●EDPやM&A総研など
24日のマイクロ波化学 <9227> [東証G]は、電磁波を使った省エネ技術などを手掛けている。前期は赤字だが今期は黒字化の予想で資金吸収額は20億円前後。27日のイーディーピー <7794> [東証G]は、単結晶ダイヤモンドと関連素材の製造・販売を手掛ける。同ダイヤは切削工具や半導体の研究用基板などの用途に使われている。資金吸収額は22億円前後。28日のM&A総合研究所 <9552> [東証G]は、デジタルトランスフォーメーション(DX)やAIを活用したM&A仲介事業を手掛ける。M&A成約率の向上に向けPKSHA Technology <3993> [東証G]と業務提携している。資金吸収額は20億円強の見込みだ。
■6月IPO一覧
コード
上場日 ・上場市場 企業名 主幹事
6月 8日 5032・東G ANYCOLOR 大和・三菱UFJ
6月20日 2984・東S ヤマイチ・ユニハイムエステート 野村
6月23日 9228・東G ウェルネス・コミュニケーションズ 野村
6月23日 7386・東G ジャパンワランティサポート みずほ
6月23日 4890・東G 坪田ラボ SMBC日興
6月23日 2999・東S ホームポジション いちよし
6月24日 9227・東G マイクロ波化学 SMBC日興
6月27日 9229・東G サンウェルズ 野村
6月27日 7794・東G イーディーピー SMBC日興
6月28日 9552・東G M&A総合研究所 野村
6月28日 5033・東G ヌーラボ SMBC日興
6月29日 9553・東G マイクロアド SBI
6月30日 9554・東G AViC みずほ
(注)東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース
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