米国株式市場見通し:パウエルFRB議長の議会証言に注目
今週はFRBのパウエル議長が上下両院で経済情勢や金融政策を巡る半年に一度の証言を予定しており、注目だ。議長は高インフレ対処の遅れに対する批判や大幅な利上げ決定にいたった背景などに関する議員からの質問に直面することになるだろう。議長はFOMC後の会見で、ブラックアウト期間に発表されたミシガン大学消費者マインド指数の長期期待インフレ率の上昇を大幅利上げ決定の要因として挙げた。パウエル議長をはじめFRB高官は度々、長期インフレ期待が上昇した場合、積極的な行動をとると警告しており、決定は正当化されると考えられる。同時に、インフレ期待は、変動の激しいエネルギーや食料品価格を含むヘッドラインインフレが直接影響すると認めている。結果、エネルギー価格の上昇が続く限り、利上げが続くことになるだろう。
FRBは6月のFOMCで0.75ptの利上げを実施後、7月にも同水準の利上げを、9月、11月にはそれぞれ0.5ptの利上げを実施し、年末までに政策金利であるFF金利誘導目標を3.0~3.5%にする見込みだ。一部の投資家はFRBのインフレ対処の遅れが酷く、強いられている急速な大幅利上げが景気後退を招きかねないとの警戒感を強めつつあり、保有株式の現金化を加速させている。
こうした中、株式相場は景気後退入りを85%程織り込んだとされている。FRBが景気悪化よりもインフレ抑制を優先とし、追加利上げが適切であるとの姿勢を強めたため、金融市場はひっ迫してきている。景気後退入り懸念や今後も金融引き締めが続くことに備えた買い控えはしばらく続きそうだ。企業の業績悪化にも警戒が必要だろう。一方、景気悪化の影響を受けにくいとされるディフェンシブ銘柄には引き続き買いが向かいやすいだろう。
また、FRBは23日に、2022年の大手銀行に対するストレステストの結果を公表する。景気減速に向かう過程において、失業者の急増や商業不動産市場の崩壊といった最悪の状況の仮定に基づき大手銀がどの程度耐え得るかが試される。2020年のパンデミック時は、大手銀の強い資本状況が金融市場を支え、2008年のような大きな混乱に陥らずに済んだ。万が一の事象の際には金融機関の資本力の強さが非常に重要となるため注目だ。
経済指標では5月シカゴ連銀全米活動指数、5月中古住宅販売件数(21日)、MBA住宅ローン申請指数(22日)、新規失業保険申請件数、6月米国製造業PMI速報値、6月カンザスシテイ連銀製造業活動指数(23日)、6月ミシガン大学消費者マインド指数確報値、5月新築住宅販売件数(24日)などが予定されている。FRBのパウエル議長は上院(22日)、下院金融サービス委員会(23日)でそれぞれ半年に一度の証言を予定している。なお、20日は奴隷解放記念日ジューンティーンスの振り替え祭日により休場となる。
主要企業決算では、住宅建設会社のレナー(21日)、KBホーム(22日)、運送会社のフェデックス、レストランチェーン運営のダーデン・レストランツ(23日)、中古車販売のカーマックス、クルーズ船運営のカーニバル(24日)などが予定されている
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》