明日の株式相場に向けて=炸裂する東エレクと三菱重工への売り

市況
2022年6月20日 17時00分

週明け20日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比191円安の2万5771円と続落。きょうは、朝方は買い優勢で始まったが上値は重く、買い戻しが一巡するとマイナス圏に沈んだ。

前週末の米国株市場ではNYダウが終盤値を消し小幅安で引けたものの、ハイテク株中心に買い戻す動きが顕在化し、ナスダック総合株価指数は150ポイントあまり上昇して着地した。これを受けて前週に週間ベースで急激な下げに見舞われた日経平均も、きょうは買い戻しが誘発されやすい環境にあった。更に日本時間今晩の米国株市場が休場ということもあって、東京市場は売り仕掛けが入りにくい時間軸にあったともいえる。

しかし、いざフタを開けてみると機関投資家とみられる実需の売りがかさみ、日経平均は前引け時点で430円近い波乱安の展開を強いられた。後場終盤になると前場に売り乗せた向きのショートカバーが利いて日経平均は下げ幅を縮小した。しかし、底入れには遠い。長い下ヒゲをつけたとはいえ日足大陰線には違いなく、アヤ戻し的な動きにとどまった。買い方にとっては悶々とさせられる地合いが続いている。

特に半導体関連株が鮮烈な売りを浴びている。東京エレクトロン<8035>は何と10日連続安、しかも1日当たりの下げも大きく、きょうは一時3600円以上の急落で4万4390円まで売られた。今月6日の終値が6万670円であったから、わずか2週間で27%の下げを演じたことになる。東エレクの最高値は6万9170円だが、これは今年の1月4日、つまり大発会につけたものだ。大発会を頂点に下落率は36%に達した。来年の大発会までに株価が復元する可能性は低い、というよりも今は一段の下値を気にしなければならない状況にある。多方面で機関投資家の保有株の見切り売りが観測されているからだ。

もっとも、ヘッジファンドの戦略的な空売りが絡んでいることも事実であろう。「半導体関連への空売りでは、ヘッジファンド最大手のブリッジウォーターがASMLホールディング<ASML>に日本円にして1300億円以上の空売りポジションを築いているが、東エレクにもかなり(空売りが)乗せられている可能性がある」(準大手証券ストラテジスト)とする。サムスンの電子部品の過剰在庫が伝わるほか、「中国では米中摩擦を背景に一時競うように半導体設備投資を増強する動きをみせたが、これが“幻の受注”と化している」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘も出ている。

半導体関連以外の個別株にも、にわかに売りの洗礼が及んでいる。これまで全体相場が荒れ模様にあっても抜群の安定感で上げ潮に乗り続けた“くろがねの軍艦”、三菱重工業<7011>に異変が生じた。年初から一貫して25日移動平均線をサポートラインとする上昇トレンドを形成していた同社株だったが、きょうは一時500円を超える強烈な下げに見舞われた。ここにきて大きくバランスを崩し、25日線はおろか遥か下方にある75日線を視界に捉えるほどの大陰線を引いた。

市場では「利益の乗っているものは、全体相場が崩落する前に利益を確定させておきたいという意思が働いている」(中堅証券アナリスト)とするが、三菱重工については、このタイミングで売り仕掛けが入りやすい背景もあった。防衛省の島田事務次官が退任したことが、株式市場にも大きな波紋を生じさせている。バイデン米大統領との首脳会談後に防衛費の大幅増額を宣言した岸田首相だったが、この防衛増強の旗振り役であった島田氏をこのタイミングで退任させたことで、「言っていることと、やっていることが違うという疑念が生じたのは確か。岸田首相は人の言うことに耳を傾けるというが、財務省の言うことを聞くというイメージが再び強まった」(同)とする。党内でも最初に予算ありきという姿勢に反対する向きは多いようだが、とはいえ強力なリーダーシップを発揮できない岸田首相も、株式市場から見れば「またか」と失望させるに十分な材料を与えてしまったようだ。

あすのスケジュールでは、5年物国債の入札、5月の食品スーパー売上高など。海外では豪中銀理事会の議事要旨の開示(6月開催分)が行われるほか、5月の米中古住宅販売件数にマーケットの関心が高い。また、今週はFRB高官の講演や討論会が相次ぐ予定にあり、あすはリッチモンド連銀のバーキン総裁の講演が予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年06月20日 18時23分

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