【植木靖男の相場展望】 ─戦略銘柄の安値を拾え
「戦略銘柄の安値を拾え」
●原油価格に天井感、先行き相場に光明
東京市場はここへきて上へ行くでなし、さりとて下げるでなく、気迷い気分が強まっている。周知の通り、株価は円安で上昇し、円安がストップすると立ち止まる。世間的には円安は物価上昇をもらたすことは間違いなく、批判が多い。だが、円安こそ日本経済の復活にとって必須の条件である。株価はそれを証明している。金利上昇という出口政策のない日銀にとって、逆にそれが日本経済の復活につながる道であるといえば、これほどの皮肉はない。
したがって株価が高くなるには、さらなる円安が必要であるが、ここでの立ち止まりから直ぐに円安基調に戻るかは不透明だ。だからこそ、株価は気迷いをみせているのだ。だが、悲観的になることもない。ここでの反発の肝となる水準は、日経平均株価で2万7000円処だ。過去の経験則からもこの水準は遠からず達成しよう。逆にいえば、この水準までは押し目買いに徹してよいということだ。
いずれにしても、米国株の底打ちを待って、反転上昇に移行するのは間近といえよう。
ところで、世界的インフレをもたらし、欧米の中央銀行を揺さぶったのは、いうまでもなくロシア・ウクライナ紛争、中国のゼロコロナ政策に伴うサプライチェーンの混乱、肥料の高騰による食料危機、コロナ感染拡大による影響など多様な要因が挙げられるが、なんといってもモノの代表である原油、天然ガスなどの石油資源の価格高騰であろう。
だが、幸いにもここへきてWTI原油価格に天井感が見えてきたことは、先行き相場に光明をもたらすとみたい。どこまで原油価格が下がるかに注目したい。
●復活する個人、FRBの政策変更にも期待
もうひとつは、株式需給の変化だ。東京証券取引所が公表した6月13~17日の投資部門別売買動向によると、先物を合わせると個人の買越額が初めて1兆円を超えたという。まさに個人投資家の復活だ。個人主導の相場となれば仕手戦復活も有り得る。
つぎに期待したいのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策変更だ。かつて平成バブルの後、日銀三重野総裁の政策失敗でわが国経済は長い間苦しんだが、米国はこのことをかなり研究しているはず。わが国の轍を踏むことはないと信じたい。景気が大きく冷え込むとすれば、金融引き締めに急ブレーキをかけるとみたい。また、中国を含めコロナが収束すればモノの需給の正常化も期待でき、そうなれば市場の空気は一変しよう。注目したい。
さて、株価が2万7000円処の肝に届くとすれば、どのような銘柄群に注目したらよいか。
ここで狙いたいのは戦略銘柄、つまり長期のシナリオに則した銘柄群であり、その代表格といえば 軍需産業だ。ここ数年主役となったのはIT関連であり、コロナ禍で医薬関連株が戦略銘柄として長期にわたって活躍した。しかし、これから中長期で柱となる戦略産業はやはり軍需産業であろう。もちろん脱炭素もそうだが、世界各国が一斉に力を入れるのはこの分野である。
ということで、戦略銘柄として三菱重工業 <7011> [東証P]、IHI <7013> [東証P]などの安値を拾って、その後は株価を追うのはしばらく忘れることであろう。やや中期の戦術銘柄としてはメルカリ <4385> [東証G]、神戸物産 <3038> [東証P]、くわえてルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]などを短期銘柄として注目したい。
2022年6月24日 記
株探ニュース