米国株式市場見通し:売り一巡の可能性、PCEコアデフレーターや小売決算に注目
FOMC通過で、FRBの現状での年内の想定利上げ軌道を相場が織り込み不透明要素が減ったため、売りが一段落しそうだ。同時に、月末、四半期末のリバランス(資産配分の再調整)による買いも下支えしそうだ。FRBの急速な金融引き締めにより経済が景気後退に陥るとの懸念が強まる中、国内経済の7割を占める消費動向を判断するため、来週発表が予定されているナイキなどの小売決算に注目したい。さらに、最新のコンファレンスボード消費者信頼感指数やISM製造業景況指数も景気見通しを占ううえで注目だ。
加えて、FRBがインフレ指標として重要視している個人消費支出(PCE)コアデフレーターの結果が、ミシガン大消費者信頼感指数確定値の期待インフレ率と同様にインフレがピークに達した可能性を示唆すれば株式相場を支援することになるだろう。5月のコアデフレーターは前年比で+4.8%と、3カ月連続での鈍化が予想されている。仮に、結果が予想通りになると、7月FOMCでは0.5ptの利上げにとどまる可能性が高まる。パウエル議長は半期の議会証言において、追加利上げが適切であると言及したほか、7月FOMCでの0.5ptまたは0.75ptの追加利上げのガイダンスを6月会合ですでに示している。議長も指摘しているとおり、市場はFRBが現状で想定している利上げの軌道をほぼ織り込みつつあり、インフレ動向や景気の見通しが大幅に変わらない限り、株式相場の売りも一巡した可能性がある。暗号資産市場が安定したことで追加証拠金の資金手当てを目的とした株式の投げ売りなどが一段落したと見られることも相場にプラス材料だ。
エコノミストが想定している景気後退確率は依然として5割またはそれ以下だ。FRBが今週公表したストレステストの結果で、対象となった全ての大手銀行は失業率の急上昇、不動産価格の急落、株価急落などといった最悪の状況にも耐え得る資本力を維持していることが証明された。FRBは銀行の資本水準が引き続き強固で深刻な景気後退の間も消費者や企業に対し融資を続けることができると判断。パンデミック時も、銀行の強い資本状況が景気の速やかな回復を支援した。ストレステストの結果を受けて、各行は6月27日から、株主還元策を発表することが可能になる。期待感を背景に金融セクターの回復も相場を支えるだろう。
経済指標では5月耐久財受注速報値、5月中古住宅販売仮契約、6月ダラス連銀製造業活動(27日)、5月卸売在庫速報、5月前渡商品貿易収支、4月FHFA住宅価格指数、4月S&P20都市住宅価格指数、6月コンファレンスボード消費者信頼感指数、6月リッチモンド連銀製造業指数(28日)、1-3月期GDP確定値(29日)、5月個人所得・支出、PCEコアデフレーター、MBA住宅ローン申請指数(6月24)、新規失業保険申請件数、6月シカゴPMI(30日)、6月製造業PMI、5月建設支出、6月ISM製造業景況指数(7月1日)、などが予定されている。
パウエル議長は29日、欧州中央銀行(ECB)のフォーラムでの討論会に参加予定。高インフレなどを巡りラガルド総裁や英国中銀のベイリー総裁などと討論する予定で、インフレ、景気見通し、金融政策に関する発言に注目だ。
主要企業決算では、スポーツ用品メーカーのナイキ(27日)、小売チェーンのベッド・バス・アンド・ビヨンド、食品メーカーのゼネラルミルズ、スパイスメーカーのマコーミック(29日)、アルコール飲料会社のコンステレーション・ブランズ、半導体のマイクロン・テクノロジー、ドラッグストアチェーンのウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(30日)などが予定されている。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》