【杉村富生の短期相場観測】 ─肝要なのは変化の予兆を見逃さないこと!
「肝要なのは変化の予兆を見逃さないこと!」
●株価指標を捨て、個別銘柄対応が有効!
最近、「杉村さんは相場の見方が弱いですね」といわれる。確かに、そうだ。ここ数週間、慎重な見通しを述べてきた。「夏相場は不発に終わる」と。だからこそ、逆行高の強い銘柄を一本釣り的に攻めるか、テーマ性を有し好業績なのに深押しの銘柄を丁寧に拾うか、の選択が重要になる。もちろん、「休むも相場なり」の戦術もある。
しかし、この感覚は単純な「強気」とか、「弱気」とは違う。これが、先人が教える「現状を正しく認識し、リスクマネジメントを徹底すること」だ。すなわち、外部環境を分析し、テクニカル面では相場の水準(位置)、方向を見極め、現金比率(キャッシュポジション)を調整する。
最後の相場師と称された是川銀蔵氏は「株式投資で儲けるにはそりゃあ、君、大損をしないことだよ」が口グセだった。大損を避けるには? 「ショック安に巻き込まれないようにする」。ショック安とは? 「予期せぬ出来事だ」。予期せぬ出来事をどう予測するか。「変化の予兆を見逃すな」。これが「奇才」と呼ばれた所以だろう。
FRB(米連邦準備制度理事会)はコロナショックに対応、ゼロ金利政策を断行するとともに、総資産を3.7兆ドル→9兆ドルに激増させた。超低金利政策に加え、猛烈な流動性の供給だ。これが世界的な株高につながったのは間違いない。だが、FRBは変節した。利上げ、そしてQT(量的金融引き締め)である。この変化は無視できないと思う。
なにしろ、FRBの総資産は1年間に1.1兆ドル、3年間では2.5兆~3兆ドル減少する。この総資産とNYダウは連動している。すなわち、増加→上昇、減少→下落だ。とりあえず、FRBの金融政策は7月13日発表のCPI(消費者物価指数)の上昇率に影響を受ける。5月の8.6%上昇を下回るか、上回るか、それが問題である。
●深押しの日本M&Aセンターを拾う!
要するに、当面はインデックス(日経平均株価、TOPIX)には期待できない。ただ、選挙(参院選)期間中とあって大崩れは考えにくい。やはり、個別物色の展開だろう。狙い目は、まず強い銘柄だ。リファインバースグループ <7375> [東証G]は豊田通商 <8015> [東証P]と組み、ベトナムにおいてエアバッグのリサイクル事業を行う。
このほか、抜群に強い値動きの高島屋 <8233> [東証P]、ブイキューブ <3681> [東証P]は狙える。タカトリ <6338> [東証S]は利食いに押されているが、押し目は買える。パワー半導体向け製造装置の大口受注が相次いでいる。さらに、高値圏でがん強な三和油化工業 <4125> [東証S]に妙味があろう。
売買代金上位銘柄では東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、三菱重工業 <7011> [東証P]が堅調だ。電力危機関連である。三菱重工業は電力設備を手掛け、世界的な防衛予算増額のメリットも受ける。東京電力ホールディングスは仕手化の様相を強めている。
深押し銘柄では営業担当者の不祥事によって、株価が急落(昨年11月15日には3745円の高値)した日本M&Aセンターホールディングス <2127> [東証P]の1400円絡みはどうか。この問題は解決済み(担当役員、営業部長など5名を解雇、決算処理は完了)だ。2023年3月期は史上最高決算を見込む。
中期経営計画では「26年度の経常利益350億円(22年度計画は180億円)」を目指している。外国人はほとんど売ってしまったが、会社幹部がヨーロッパの機関投資家を訪問、状況説明を行っている。彼らはすぐには買わないだろう。しかし、分林保弘会長(79歳)の老骨にムチを打っての“長旅”(西回りは5時間余計にかかる)は誠意が通じると思う。
2022年7月1日 記
株探ニュース