新晃工業 Research Memo(6):端境期でリスクも増しているが、中長期的には回復へ

特集
2022年7月14日 16時06分

■新晃工業<6458>の中期経営計画

1. 事業環境認識

2021年の空調機器の業界環境は、東京オリンピック・パラリンピック特需後の端境期にコロナ禍の影響が重なり、更新需要の延期など特に短期的な案件が落ち込んだ。また、長期的には、引き続き人口減少などにより新規のビル建築が減少していくと見られている。今後はテレワークの普及が新築ビルの需要鈍化に影響を及ぼす可能性も考えられる。このように長期の事業環境はややネガティブな見方となっているが、足下は、工場やデータセンター向けの需要増に加え、東京や大阪での大規模再開発など大型新築案件が動き出してきた。このため、2023年頃に向けて新築物件の回復が見込まれる。しかし、これも2025年頃になると減少していく見通しとなるが、その頃になると新築に代わって、市場を退出した大手メーカー分を含めて納入後20~30年が経過したAHUの更新工事など、アフターサービス市場の拡大が予想されている。この間、作業員不足が進行して案件を確保できなくなる、人件費の上昇で採算が悪くなるなどの可能性があり、現場での省力化が必須となる。また、長期的に中小規模物件を中心に個別熱源の増加が続く一方、カーボンニュートラルを背景に水AHU(脱フロン)への期待も大きくなっている。

海外では、アジア最大市場である中国で、ハイテク分野の投資が加速して製造業を中心に内需の拡大が見込まれていたが、同国のゼロコロナ政策により都市単位のロックダウンが散発し、景気減速が懸念され始めた。加えて、ウクライナ情勢による資源高や、コロナ禍と使用量急拡大によって生じた半導体不足による部材の供給不足と高騰といったリスクが増している。特に世界的な原材料や部品の品薄・高騰は建設業を直撃、建設業全般でかつて経験したことのない価格高騰や納期遅れが発生しており、業界を挙げて施主などに状況説明をしているところである。このため値上げの機運は高まっているが、ゼネコンなど各メーカーの契約は相対のため、価格転嫁も今のところ不透明な状況にあると言える。以上から業界環境は、短中期的に原燃料高や半導体など部材不足などのリスクが続くが、乗り越えれば中期的に新規案件の増加、長期的には工事・メンテナンス需要の拡大という流れに乗ることができると期待されている。

重点取組項目を推進し、2025年3月期営業利益75億円を目指す

2. 中期経営計画「move.2025」

こうした事業環境予測から、同社は、事業環境回復のトレンドに乗って既設工事につながる新築ビル向けAHUの受注などを拡大し、水AHUシェア首位の堅持とヒートポンプAHUのシェア首位の奪取を目指す。また、既設工事では、手厚いサービスを強みとする新晃アトモスをさらに強化することで、10年~20年後に既設の更新需要を収益の柱とする考えである。そのために、デジタル化によって労働集約的な製販体制から脱却して生産性を向上し、原燃料高や半導体など部材不足といったリスクや、人口減少による新築ビルの着工減、作業員不足、ノウハウの伝承といった様々な課題を解消していく考えである。

そこで同社は、中期経営計画「move.2025」を策定した。SIMAプロジェクトでデジタル化・自動化を推進することで、新たなデジタル工場(生産プロセス)の構築と新たな営業スタイルの確立を進め、新しい製販一体の体制を構築する方針である。そのうえで、水AHUの競争優位の維持・向上、ヒートポンプAHUの市場シェア拡大、工事・サービス事業の強化、中国事業の強化、技術深耕・品質向上という重点取組項目5点を推進していく計画である。その結果、2025年3月期に売上高520億円、営業利益75億円を計画している。また、こうした戦略のバックボーンとして、同社は、製品を通じた環境負荷低減や人材育成・働き方改革、ガバナンス強化といったESG経営を推進していく考えである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《EY》

提供:フィスコ

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