明日の株式相場に向けて=需給相場の号砲鳴る「中低位材料株」
きょう(21日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比122円高の2万7803円と続伸。前引け時点では安かったものの、昼休み時間中に発表された日銀の金融政策決定会合の結果を受け後場寄りプラス圏に切り返した。前日は日経平均が700円あまりの急騰を演じ、フシ目の2万7000円台ラインをブレークしただけでなく、そのまま2万7000円台後半まで一気に駆け上がるパフォーマンスをみせた。前日までの直近5営業日で日経平均は1350円近い上昇をみせたこともあって、常識的には目先利益確定の動きを優先させたいという思惑も浮上しやすかったが、それを覆しての6連騰となった。
前日はひと足先に欧州株市場が利食いのタームに入った。しかし、米国株市場では主要株価指数が揃って頑強な値動きを示し、とりわけハイテク系グロース株への根強い買いが続いたことからナスダック総合株価指数の上げ足が目立った。外国為替市場では依然としてドル買いの動きが活発で、1ドル=138円台の円安水準がキープされていることも東京市場では追い風として意識された。そして、注目された日銀の金融政策決定会合の結果は大規模金融緩和策の維持で、これは事前の予想通りである。よほどのことがない限り黒田日銀総裁はハト派スタンスを堅持するということがマーケットに浸透しているため、元来、株価を押し上げる要素に乏しいはずであったが実際は違った。
市場では「サプライズ感は全くないが、CPIの見通しを4月会合で示した1.9%から2.3%に引き上げたにもかかわらず、金融政策はこれまで通り微塵もブレない緩和姿勢を貫いていることに敬意を表した買いといえる」(生保系エコノミスト)との声が出ていた。後場のプラス転換は、日銀の政策姿勢に若干でも変化が出ると踏んでいた売り方の思惑が外され、渋々買い戻したという構図が浮かぶ。ただし売り方の買い戻しとしては、きょうの後場が最終列車であった可能性もある。「(空売り筋は)大方は前日の718円高で焼かれてしまった感が強く、ここから先、実需で日本株の上値を買い進む勢力が存在するのかどうかは疑問」(中堅証券ストラテジスト)という指摘もある。
実際、テクニカル的には胸突き八丁の局面といえる。その根拠としては、まず前日に日経平均は200日移動平均線とのマイナスカイ離を解消したが、同移動平均線については、今年3月下旬と6月上旬にも同様の場面があった。若干上回ったものの その直後に売り圧力が顕在化して下に叩かれている。今回は“三度目の正直”となって上に突き抜ければよいが、“二度あることは三度ある”というケースも考えられる。「200日線自体はまだ下向きであり、これが上向きに変わるまでは、中長期波動の上昇転換という命題をクリアしたことにはならない」(前出のストラテジスト)とする。
また、プライム市場の騰落レシオはきょうの大引け時点で132.4%と、いわゆる買われ過ぎの120%ラインを突破している。頼みの綱は米株高と円安が続いていることだが、米株の軟化か円安一服のいずれかでおそらく歯車は逆回転を始める。加えて日本時間今晩に行われるECB理事会も鬼門で、仮にECBが0.25%ではなく0.5%の利上げに踏み切った場合は、欧州株市場を震源地とする大きな揺れに見舞われる公算も小さくない。総論としてここは焦らず押し目を待つスタンスが望ましい。
しかし、個別株戦略は総論とは別次元で考えておく必要がある。ここは全体指数との連動性の低い中低位株にシフトするのが得策だ。きょうのオーバル<7727>のストップ高比例配分は、全体需給相場の号砲を鳴らしたともいえる。候補としては、火力発電見直しの流れに乗る住石ホールディングス<1514>、バイオでは新型コロナ研究で思惑を内包するトランスジェニック<2342>。また、押し目狙いなら好決算が際立つ三光合成<7888>も魅力的。このほか、強気の中計評価で動意含みとなっているパレモ・ホールディングス<2778>や、Web3事業進出で脚光を浴びるアエリア<3758>、全体指数に流されず我が道を進むジェクシード<3719>などに引き続き目を配りたい。
あすのスケジュールでは、6月の消費者物価指数(CPI)、6月の全国スーパー売上高など。海外では7月の仏購買担当者景気指数(PMI)、7月の独PMI、7月のユーロ圏PMI、7月の英PMI(いずれも速報値)などに市場の関心が高い。また、米国でも7月の米製造業PMI(S&Pグローバル調査・速報値)が発表される。(銀)