明日の株式相場に向けて=FRB“超タカ派”棚上げで見えてくるもの

市況
2022年7月25日 17時00分

きょう(25日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比215円安の2万7699円と8日ぶり反落。前週末まで日経平均は7連騰と戻り足を鮮明とし、日銀の金融政策決定会合とECB理事会の2つのビッグイベントを通過してなお強い動きを示したことは、大勢トレンド転換を示唆する流れともいえた。長期波動の分水嶺である200日移動平均線を上に抜けただけでなく、日足一目均衡表もマドを開けて雲抜けを果たすなど、テクニカル的に強気傾斜を明示する材料が並んだ。

しかし、正念場はここからともいえる。今週は26~27日の日程で行われるFOMCがカギを握ることになるが、利上げ幅については0.75%で織り込み完了としても、問題はパウエルFRB議長の記者会見である。「リセッションに遭遇する可能性が高まっていることで、FRB内でも利上げ不要論が徐々に高まっている」(ネット証券アナリスト)とする。前週末発表の米製造業PMIは好不況の境目である50を2年ぶりに下回った。ユーロ圏PMIも同様に50割れとなったが、このように欧米が景気後退リスクに直面しているさなか、FRBがなお強力なタカ派姿勢を貫くことは合理的ではないとの見方である。

一見すると、利上げに対する否定的な思惑がくすぶり始めたことは米株市場にとってポジティブ材料にも思えるが、そう単純に喜べる話ではないようだ。7月に0.75%引き上げた後は利上げを終了するという意味ではないし、まして利下げが検討されることは当面はあり得ない。また、現状はまだ助走段階にある量的引き締め(QT)について、9月以降は倍増し、毎月950億ドル規模の資金が事実上マーケットから回収されていく勘定になる。FRBがバランスシートを縮小する過程で、株式市場では利上げ恐怖症に代わって景気後退に対する懸念が、波乱要素として横たわることになる。

そして日本株にとって厄介なのは、米国の急速な利上げに対する思惑がしぼむことに伴い、外国為替市場で起こり得るアンワインドの動きだ。ドル円相場で円が買い戻され、ドル安・円高方向に押し戻されるプロセスは株安の流れに通じる。米国株市場の動向と東京市場のデカップリングは、これまでは日本株の相対的優位性を言ったものだが、その要因は円安効果に集約された。円建てベースの日経平均では強く見えていたが、仮に円高への揺り戻しが生じた場合は、その逆のケースに遭遇する可能性もあるということを意味している。

前週末の段階で日経225ベースの騰落レシオ(25日移動平均)が過熱ゾーンとされる120%を上回る水準に達していたこともあり、その意味ではきょうは一呼吸入れて仕方のないところである。今週から本格化する企業の決算発表は、週末に400社を超える規模となり、株式市場も好決算企業のギャップアップ狙い、あるいはその逆の決算悪をターゲットとした空売りという、いわゆる決算プレーにトレーダーの関心が向かうところとなる。

成長性やテーマ性に富む銘柄であっても、決算跨ぎ(またぎ)の銘柄は持たないのが鉄則。利益が乗っていればいったんキャッシュ化して買い直す、あるいは空売りでつなぐといった方法もあるが、中長期保有したい銘柄であればなおさら短期的なノイズの影響を受けにくい形にしておくのが有効な選択肢といえる。好決算が期待される銘柄であっても、要は市場コンセンサスと比べてどうかという話になるので、良い数字を発表しても大きく売り込まれるようなことは珍しくない。通期営業利益を従来見通しから30%も増額修正したにも関わらず、大幅下落に見舞われたきょうの東京製鐵<5423>のようなパターンは今後も頻繁に出てくるはずだ。今週は27日にファナック<6954>、28日に村田製作所<6981>、週末29日にソニーグループ<6758>、デンソー<6902>などの発表が話題性を呼びそうだ。また、海外では今週内にGAFAMの決算発表が揃い踏みとなる。

あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の議事要旨(6月開催分)、企業向けサービス価格指数などが発表される。40年物国債の入札も予定。海外では5月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、6月の米新築住宅販売件数、7月の米消費者信頼感指数などが注目される。米5年物国債の入札も行われる。なお決算発表は、国内主要企業ではキヤノン<7751>、オムロン<6645>などが挙げられ、米国ではゼネラル・エレクトリック<GE>、ゼネラル・モーターズ<GM>、テキサス・インスツルメンツ<TXN>、マクドナルド<MCD>、アルファベット<GOOGL>、マイクロソフト<MSFT>などがある。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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