金は軟調、各国中銀の利上げで投資資金が流出 <コモディティ特集>

特集
2022年7月27日 13時30分

の現物相場は7月、各国の中央銀行の利上げや景気減速懸念、リスク回避の動きを受けて軟調となり、2021年3月以来の安値1681ドルをつけた。6月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比9.1%上昇と前月の8.6%上昇から加速し、40年ぶりの大幅な伸びとなった。

米連邦公開市場委員会(FOMC)で100ベーシスポイント(bp)の大幅利上げが実施されるとの見方が出て金の圧迫要因になった。ただ、米金融当局者の慎重な意見を受け、今夜の米FOMCでは75bp利上げが決定されるとみられている。一方、7月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は47.5と景気拡大・縮小の節目となる50を約2年ぶりに下回るなど、景気減速懸念が残っている。それが今後の利上げペースの減速につながれば為替はドル安に振れ、金は買い戻し主導で安値修正局面を迎える可能性がある。目先は28日に発表される第2四半期の米国内総生産(GDP)速報値も焦点である。第1四半期は貿易赤字を受けて7四半期ぶりのマイナス成長となった。事前予想は前期比0.3%増となっている。

7月のユーロ圏の総合PMI速報値も節目となる50を下回り、2021年2月以来の低水準となり、景気の先行き懸念が残っている。しかし、ロシアが欧州向けの天然ガス供給を絞るなどし、エネルギー問題に対する懸念から21日の欧州中央銀行(ECB)理事会で50bpの大幅利上げが決定された。高インフレが続けば大幅利上げが続く可能性も残っている。各国の中央銀行の利上げで景気減速懸念が高まり、リスク回避の動きが強まれば、金ETF(上場投信)に換金売りが出て一段安となる可能性がある。

また、テクニカル面では2020年8月高値2072ドルと2022年3月高値2067ドルでダブルトップを形成した。ネックラインとなる2021年3月安値1677ドルを割り込むと、テクニカル面で悪化し、売り圧力が強まるとみられる。

●中国の新型コロナウイルスの感染増加でゼロコロナ政策の行方を確認

中国上海で8日、新型コロナウイルスのオミクロン株の一種で感染力が強いとされる「BA.5」の感染が確認された。「BA.5」は北京や北部の遼寧省大連・内陸部の西安など複数の都市に広がっており、各地で警戒感が高まっっている。中国はゼロコロナ政策を継続しており、ロックダウン(都市封鎖)が再導入されれば、中国経済の先行き懸念が高まるとみられる。新規感染者の行方と制限措置を確認したい。

中国当局が18日、不動産市場の危機を回避するための措置を打ち出し、先行きに対する期待感が高まる場面も見られたが、中国の民間債務比率は高止まりしており、不動産市場の回復には時間がかかるとみられる。また、6月にインドで初めて感染報告があったケンタウロスと呼ばれる変異株「BA.2.75」は「BA.5」より3.24倍感染力が強いという研究があり、各国に広がっている。中国でも置き換わる可能性が高く、感染拡大の行方を確認したい。

●SPDRゴールド残高は大幅利上げ見通しで減少が続く

世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しを受けて引き続き減少し、25日に1005.29トン(6月末1050.31トン)となった。ロシアとウクライナの戦闘が長期化していることは下支え要因だが、リセッション(景気後退)に対する懸念も出ており、換金売りが出やすい。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは7月19日時点で9万4955枚となり、2019年5月以来の低水準となった。3月8日の27万4388枚をピークとして縮小傾向にある。ただ、売り玉が増加しており、ドル安に振れれば買い戻し主導で上昇しやすい。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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