「3Dプリンター関連株」に飛躍期到来、建設業界の救世主に <株探トップ特集>
―宇宙空間での建設など可能性広がる、ゼネコンのほかトヨタなど大手自動車も熱視線―
立体物のデータをもとに樹脂素材などを加工して造形する 3Dプリンターがここ改めて注目されている。建設業界において救世主ともなり得るテーマで、株式市場でも関連銘柄の活躍余地が広がっている。大林組 <1802> [東証P]が国内初の建築基準法に基づく国土交通大臣の認定を取得した構造形式を用いた「3Dプリンター実証棟(仮称)」の建設に着手した。これは 建設業界で「3Dプリンター」が本格的に飛躍する時期が到来していることを意味する。
●デザイン性の高い複雑な形状も実現可能
大林組は、鉄筋や鉄骨を使用しない、3Dプリンター用特殊モルタルや超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」による構造形式を開発するなど、これまで技術開発及びナレッジの蓄積を進めてきた。そして、6月に入ってついに同社は、セメント系材料を用いた3Dプリンターによる建築物として、国内初の建築基準法に基づく国土交通大臣の認定を取得した構造形式を用いた「3Dプリンター実証棟」の建設に着手したことを発表、今年11月の完成を予定している。
3Dプリンターは、材料を現地に運ぶだけで済み、省人化及び低コスト化をはじめとした高い効果が期待されるため、近年は構造物の部材や小規模な建築物の製作に利用する事例が増えている。当然ながら、設計さえできればデザイン性の高い複雑な形状も実現することができる点も非常に大きな利点だ。
●アイ・コンストラクションを推進する役割担う
働き方改革の推進が叫ばれる一方、慢性的な人手不足が職人の高齢化やそれに伴う技術承継といった課題に拍車をかける建設業においては、3Dプリンターは救世主となり得る存在といえる。国土交通省が推進するICTの全面的な活用によって、建設生産システム全体の生産性向上を図る取り組みである「i-Construction(アイ・コンストラクション)」に関して、実際3Dプリンターはアイ・コンストラクションを推進する技術の一つとして採択されたことがある。
しかし、現状3Dプリンターを用いて一定規模以上の建築物を建設するには、構造物が建築基準法に適合していることの確認(建築確認)を取得しなければならないほか、指定建築材料(鉄骨や鉄筋、コンクリートなど)を使わない場合は、個別に国土交通大臣の認定が必要となる。こうした技術を更に柔軟に活用できるよう、適切なルール策定のもとで規制が緩和されていくことが求められている。
●トヨタも日本HPの3Dプリンター導入
今回の実証棟の建設を皮切りに、大林組は将来的には複数階の構造物建設や3Dプリンターによる宇宙空間での建設なども念頭に置いているようであり、3Dプリンター飛躍の可能性がかなりリアルに感じられる状況にようやく至ってきた。実際、同社の他にトヨタ自動車 <7203> [東証P]も顧客に供給する部品を3Dプリンターで製作する検証のために、日本HPの3Dプリンターを導入したことが明らかになっている。
トヨタは生産終了となった人気自動車、例えばランドクルーザー40(1960~84年生産)のようなさまざまな車種の補給部品を復刻し、純正部品として再販売する「ヘリテージパーツ」を手掛けている。こうした夢のある取り組みも、3Dプリンターを用いれば実現可能になる。
そこで今回は、3Dプリンター関連の銘柄にスポットライトを当てた。足もとの相場では、世界経済への悲観的な見方もひとまず後退しつつあり、テーマ物色にも勢いが徐々に戻ってくることに期待したい。
●要注目の3Dプリンター関連6銘柄
◆ミマキエンジニアリング <6638> [東証P]~3Dプリンター「3DUJ-553」は、これまで2Dの高画質業務用インクジェットプリンター開発で培ってきた技術を生かし、世界初となる1000万色以上のフルカラー造形を実現した。造形後の色付けでは難しかった豊かな色彩表現により、立体造形のオブジェクト看板や建築模型といった最終製品制作用途として活用されている。
◆ソディック <6143> [東証P]~NC放電加工機、射出成形機、食品機械など幅広い分野の生産財を開発・製造・販売する。精密金属3Dプリンター、高速造形金属3Dプリンターを手掛けており、一般の工作機械では製造が困難な最適化された設計モデルも、金属3Dプリンターによって部品の強度や軽量化を確保しつつ、コンピューターによる解析を基に最適化された設計技術で造形することができる。
◆ローランド ディー.ジー. <6789> [東証P]~デスクトップ・ファブリケーション(机上工場)のコンセプトのもと、3Dモデリングマシン「MODELA」「MODELA PRO2」シリーズや、「monoFab」シリーズを展開する。製造現場に求められる高精度、操作性、適応性を備えているほか、治具製造・少量生産・追加工の内製化を容易にする。
◆シリコンスタジオ <3907> [東証G]~自社開発による数々のミドルウェアを有し、さまざまな分野でCG関連事業を展開している。東芝 <6502> [東証P]傘下の東芝デジタルソリューションズなどが提供している3Dプリント技術を活用したネイルチップ(つけ爪)サービス「Open Nail」において、3Dデータ加工ソフトウェアの開発を手掛けている。
◆サイバネットシステム <4312> [東証S]~米アンシス<ANSS>が開発・販売する金属3Dプリンター用シミュレーションツール「ANSYS Additive Print」と「ANSYS Additive Suite」の販売と技術サポートを行っている。また、米スペースクレイムの3Dプリンター用データの作成や編集などにおける革新的な3次元ダイレクトモデラー「SpaceClaim」も扱っており、「STL編集モジュール」を活用すれば品質チェック、エラー箇所の修正などをワンコマンドで実行できる。
◆NTTデータ <9613> [東証P]~3DプリンターAM(積層造形法:アディティブマニュファクチャリング)技術の進展と関連マーケットの拡大を背景に、設計、積層造形、後処理というAM技術のすべてのプロセスに対してAI/ITを融合させることで飛躍的な事業発展につなげるため、AMソリューション専業のNTTデータ ザムテクノロジーズを2020年に設立して事業を展開しており、製造業における革新的なものづくりを支援する。
株探ニュース