来週の株式相場に向けて=「不安の壁よじ登る」展開も
東京市場は5日、「心理的抵抗線」と呼ばれてきた2万8000円を突破した。今晩の米7月雇用統計に左右される面は残るものの、「今月下旬の米ジャクソンホール会議頃まで強気相場は続くのではないか」(市場関係者)と期待する声も強まり始めている。
今回の上昇の目先的な要因は売り方の買い戻しだ。2万8000円を前に上値が押さえられるなかショート(空売り)が膨らんだが、この抵抗線を抜いたことで一気に売り方が買い戻しに転じた様子だ。
しかし、何よりも見逃せないことは東京市場の割安さだ。決算発表は真っ盛りだが、その内容は底堅いものが多く、日経平均採用銘柄の今期予想連結PERは4日時点で12.7倍前後。これは「かなり割安な水準」(アナリスト)だ。
更に加えるなら、足もとの原油安が象徴するようにインフレ懸念が後退している。米連邦準備制度理事会(FRB)高官はタカ派発言を繰り返しているが、市場は現時点ではインフレより景気後退を警戒している。そして大幅な景気後退にさえ陥らないのなら、ナスダック銘柄を中心にグロース株は買える、とみているのが実状だろう。
東京市場は目先の一服はあっても、先行き6月9月のザラ場高値2万8389円更新から一段の高値を探る展開も見込めそうだ。夏休みで市場参加者も減る時期だが、相場は「不安の壁をよじ登る」展開を期待したい。東京エレクトロン<8035>など半導体関連株や、コロナ禍からの回復でリオープン(経済再開)関連の京王電鉄<9008>など電鉄株、高島屋<8233>など百貨店株が注目されそうだ。
来週の最大の注目イベントは10日の米7月消費者物価指数(CPI)だ。その結果次第では、再びインフレ懸念が強まることもあり得る。12日の米8月ミシガン大学消費者マインド指数も注目される。国内では11日は山の日の祝日で休場。8日にはソフトバンクグループ<9984>、東エレク、9日に東レ<3402>、10日に富士フイルムホールディングス<4901>、12日にリクルートホールディングス<6098>などの決算発表が予定されている。来週の日経平均株価の予想レンジは2万7800~2万8400円前後。(岡里英幸)