馬渕治好氏【日経平均2万8000円のステージ、今後の展望は】 <相場観特集>
―米インフレ懸念と米リセッションのシナリオに変化の兆し?―
週明け8日の東京株式市場は、日経平均株価が前週末終値近辺で強弱観が対立。朝方に安くスタートした後に値を戻したが、その後は売り直されマイナス圏に沈み、売り一巡後に再びプラス圏に浮上するといった方向感の定まらない動きをみせた。ただ、2万8000円台固めの様相にあり、強気優勢の地合いが続いているといってよさそうだ。8月相場はここから上値指向が続くのか、それとも反転して再び下値を試すのか。相場の中長期見通しに定評があるブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏に意見を聞いた。
●「過度な悲観の修正局面が続く」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
東京株式市場は強調展開が続いているが、結論から先に言えば日経平均株価は一段の上値が見込める状況にあると考えている。現在は米国経済や米株市場に対する過度な悲観の修正過程にあり、日本株もそれに追随する形となっている。
米国ではこれまでインフレ高進に対する警戒感と、経済成長率がマイナスに陥るリセッション懸念の2つが同時進行し市場心理を冷やしていたが、いずれも過度な悲観の修正局面に入ったとみてよさそうだ。インフレについては、ここにきて原油をはじめとするコモディティ価格の下落が顕著で、企業のコスト上昇に対する懸念も和らいできた。一方で経済は底堅く、直近発表された7月の米雇用統計の非農業部門の雇用者数は前月比50万人を超える増加で市場予想を大きく上回り、失業率も低下傾向を示しており、リセッションに対する不安もかなり後退している。
また、主要株価指数の動向をみるとナスダック総合株価指数の戻りが目立っており、グロース株(成長株)に対する見直しの動きが、全体相場にもポジティブに作用している。今週は10日に7月の米CPI発表を控え、この結果によって全体相場は影響を受ける可能性があるものの、6月時点よりも減速が想定されるため、波乱要素にはなりにくいだろう。年後半の米株市場は更なる水準訂正による上昇が見込まれ、NYダウは年内に3万8000ドル近辺をうかがう展開を想定し、ナスダック指数については1万5000ポイントを目指す動きになるとみている。
東京市場でも米国株を横にらみに全体指数の上昇余地は大きい。企業決算は日米ともに堅調を維持しており、円安効果が大きいとはいえ日本企業の決算予想数値に上方修正が多くみられることも心強い。日経平均は年内に3万2000円を目指す動きを予想する。向こう1ヵ月で見た場合も、足もとではやや高値警戒感を抱く向きもあろうが上値を追う展開に変化はなく、2万9000円超えにチャレンジする局面が訪れるとみている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
株探ニュース