デリバティブを奏でる男たち【33】 プライベート・エクイティの巨人、アポロ・グローバル(後編)

特集
2022年8月15日 13時30分

◆配当リキャップ

レオン・デイビッド・ブラック(通称レオン・ブラック)が率いていたアポロ・グローバル・マネジメント<APO>のようなプライベート・エクイティ(PE、未上場株式に投資を行うファンド)は、ディストレスト債(経営破綻先や不良債権先などが発行する債券) 投資などでも高い利回りを得ています。こうした投資資金の回収方法としては、基本的に投資先の事業を立て直した後にIPO(株式新規公開)を行う、あるいは投資先の同業他社・他の投資会社へ売却するなどが想定されます。

もちろん、それらは単独で行われるケースもあれば、幾つかある投資先の同業同士を合併させる、あるいは投資先を事業ごとに分割、もしくは一部をスピンオフ(特定の部門を分離して新会社として独立)するなど、如何にして企業価値を高めるかに焦点を当てながら様々な手法を活用しています。また、「配当リキャップ」と呼ばれる手法で投資資金の全額、もしくは一部を回収することもありました。

配当リキャップは投資先の企業に借金や社債発行など多額の資金調達を実施させ、投資の一部、もしくは全額を特別配当として受け取るというものです。場合によってはアポロ自身が高利回りの借金や社債を引き受けることも考えられます。万一、投資先の企業が破綻した場合、資金回収は株式よりも債権が優先されますし、配当支払いよりも債権の金利支払いが優先されます。デット・エクイティ・スワップ(債権の株式化)ならぬ、エクイティ・デット・スワップ(株式の債権化)といったところでしょうか。

もちろん、この手法はマーケット環境が低迷していてIPOや他社への売却が難しい場合に採用されることが多いと考えられます。また、重工業や化学工業などの装置産業、あるいは不動産業など多額の資金を必要とする業種には向かない一方で、キャッシュフローを多く生み出す企業に向いている手法といえます。ただし、配当リキャップをやり過ぎると金利負担から資金繰りが悪化し、再び経営破綻につながるケースもあったようです。

【タイトル】

アポロはこの手法を2013年に買収した老舗菓子メーカー、ホステス・ブランズ<TWNK>(旧インターステイト・ベーカリー・コーポレーション)でも実施しています。「トゥインキー」などのブランドで知られる同社は、2012年に2度目の米連邦破産法第11条(チャプター11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請して経営破綻。翌年にアポロと同業のチャールズ・ディーン・メトロプーロス・アンド・カンパニーなどが、同社を4.1億ドルで共同買収しました。その後にホステスはクレディ・スイス・グループ<CS>から約13億ドルを借り入れ、そこから約9億ドルを配当リキャップとして投資家に支払います。ホステスの再建は順調に進展し、2016年7月に上場を果たしています。

ホステス・ブランズ<TWNK> 月足

【タイトル】

(続きは「MINKABU先物」で全文を無料でご覧いただけます。こちらをクリック)

◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):

証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.