明日の株式相場に向けて=ジャクソンホールに鷹は舞い降りるか

市況
2022年8月18日 17時00分

きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比280円安の2万8942円と反落。日経平均株価は前日に約7カ月ぶりに2万9000円大台を回復したものの、再び2万8000円台に押し戻された。前日は米国株市場でハイテクセクター中心に売りがかさみNYダウナスダック総合株価指数ともに軟調だったが、これに先立って欧州株市場も全面安商状に近かった。とりあえず回り続けていたリスクオンの歯車が止まった。

日本時間きょう未明に開示された7月開催分のFOMC議事録は可もなく不可もなしという内容だったが、「引き締めを進めた後、どこかの時点で利上げの減速が適切になるだろう」との見方がメンバーのコンセンサスとして示され、これが株式市場にポジティブに作用し、NYダウは終盤プラス圏に浮上する場面もあった。ただ、“どこかで利上げの減速が必要となる”のは当たり前の話で、むしろそうならない場合はパニックである。

この文言が本当に期待を持たせる内容であったのかどうかは今後の展開に委ねるとして、前日はこのFOMC議事録よりも市場関係者の視線を釘付けにする経済指標があった。欧州時間にさかのぼって、日本時間の前日大引けのタイミングで発表された7月の英消費者物価指数(CPI)である。何と前年同月比10.1%の上昇でついに2ケタの伸び率を記録。市場では「10%台という伸び率もさることながら、6月と比べて伸び率が0.7ポイント上昇し、インフレのピークアウトが完全否定されたことは結構な衝撃だった」(中堅証券ストラテジスト)という声が聞かれた。その割には欧州株の下げが限定的だったといえるが、「冷酒のように後から利いてくる可能性がある」(同)と警戒感を募らせる。

いずれにせよ、欧米株安を受けきょうの東京市場はリスク回避の売り圧力に身を任すよりないという環境にあった。「最近は機関投資家のキャッシュポジションが高めであったため、ポートフォリオに占める株式の割合が低下した分のリバランスの買いが観測されていた」(国内証券マーケットアナリスト)ことや、前日に触れたようにオイルマネーが日米株式に食指を動かした実態なども観測されていたが、それも無尽蔵に買い注文が湧いて出てくるわけではない。やはり、相場は生き物といわれるごとく呼吸のようなリズムで上げ下げを繰り返すのが摂理(法則)である。長期波動でみた相場のトレンドが上下どちらを向いているかということであれば、外部環境を見渡して判断する限り、上に向いているとは言い難い。しかし、だからこそ売りから入る投資家も後を絶たないわけで、結果的に人間の目には見えない「需給」という天の配剤で踏み上げ相場が繰り返されてきた。

米国や欧州などでリセッション懸念が台頭するなか、“不景気の株高”というのとも違う。なぜなら不景気の株高というのは、経済が冷え込んでいる代償として低金利環境が前提となっているため、金融緩和効果による株高現象という立派な根拠がある。しかし今はどうか。FRBをはじめ世界の中央銀行が金融引き締めに躍起となっている状況である。スタグフレーションの足音を聞きながら、株を買い進むというのは通常では理解しにくい。需給はすべてに優先するというのは相場の不文律であり、そして何よりも“現実は最強”であることを7月下旬以降の世界株高は雄弁に物語っているが、これはあくまでバックミラーに映る景色だ。問題は8月下旬から9月上旬(SQ算出)にかけての相場がどうなるか。見ることができない未来を常に戦いの舞台としているのが投資家である。

次の関門は来週25日に予定されているジャクソンホール会議であり、ここでのパウエルFRB議長の発言内容次第で流れが変わる可能性はある。景気後退とインフレ高進という二つの難敵と同じ時間軸で対峙するFRBにとって、非常に難しい舵取りを迫られているが、現在の株高局面を「懸念」していることは確かのようだ。「(ジャクソンホールでは)タカ派寄りの発言が出てくる公算が大きい。ここ最近はサマーバケーションのためFRB高官による牽制発言もご無沙汰で、その間に株式市場がやや暴走した。タガを締める必要性をパウエル氏は感じているはずだ」(前出のマーケットアナリスト)とする。

あすのスケジュールでは、7月の全国消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が集まるほか、3カ月物国庫短期証券の入札が予定されている。海外では、7月の英小売売上高が発表される。また、米国ではインフレ抑制にタカ派的姿勢のリッチモンド連銀バーキン総裁が討議に参加予定で注目度が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年08月18日 17時39分

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