国内株式市場見通し:基調転換に注意、ジャクソンホール会議控え様子見ムード
■踏み上げ巻き込んで一時29000円超え
今週の日経平均は週間で383.35円高(+1.34%)と3週続伸、5週連続で陽線を形成した。
週明け15日、日経平均は324.80円高と大幅続伸、前の週末に727.65円高と大幅に上昇しており、短期的な過熱感はあったが、引き続きインフレピークアウトへの期待が下支えし、長期金利の低下を支援要因とした米ハイテク株高が指数を押し上げた。16日は2.87円安と横ばい。8月NY連銀製造業景気指数が大幅に落ち込み、景気後退懸念が強まったが、金利低下に伴うハイテク株の上昇が引き続き支援した。
17日は353.86円高と大幅に反発し、7カ月ぶりに29000円を回復した。米小売大手の決算が軒並み予想を上回ったことで、高インフレ下での消費の強さを確認し安心感が台頭。ダウ平均の上昇を好感して東京市場でも買いが先行。為替の円安進行や堅調なアジア市況が追い風となったほか、日経ダブルイン<1357>を買い建てていた個人投資家の踏み上げが相場上昇の要因になったとの指摘が多く聞かれた。
一方、18日は280.63円安と反落し、29000円割れ。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及したこと等が明らかになり、ハト派寄りの内容と解釈する向きが多かった。しかし、米10年債利回りが1カ月ぶりに一時2.9%台に乗せたことで、ハイテク株を中心に売りが優勢。米アナログ・デバイセズの決算を受けたフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅安を嫌気し、半導体関連株の下落が目立った。
週末19日の日経平均は11.81円安。8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が予想外のプラスに改善するなど好材料もあったが、米主要株価指数の上昇が限定的だったこともあり、東京市場も動意に乏しい展開。日経平均は29000円を回復して始まったが、寄り付き直後からすぐに失速。午前中ごろには29000円を割り込み、その後は28900円台でのもみ合いが続いた。
■買い戻し相場に一巡感
来週の東京株式市場は上値の重い展開か。週末の金融政策イベントを控え、様子見ムードが強い週となりそうだ。
25日からカンザスシティー連銀が主催する経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開かれる。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長による講演は日本時間で26日23時の予定で、これを東京市場が織り込むのは翌週となる。FRBは繰り返し今後の金融政策の動向は「データ次第」としているため、今会議での結果が市場に大きなインパクトは与える可能性は低いとみているが、年に1回の注目イベントで、稀に短期的な政策方向性に関する話が出てくることもあるため、週を通して動きづらい展開が予想される。
また、週末にはFRBが重要視する米7月個人消費支出(PCE)コアデフレータが発表予定。7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が揃って予想を下回ったため、今回の食品・燃料を除いたコアPCEデフレータは6月の前月比+0.6%から同+0.1~0.2%程度に大きく減速する見込み。ほとんど事前に想定されている結果ではあるが、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演内容が無難なものに終わった場合には、ポジティブに捉えられる可能性がありそうだ。
より短期的に相場に影響を与えそうなところでは、24日に発表される米半導体大手エヌビディアの決算がある。直近、半導体業界では需要が急速に鈍化している兆候が相次いでいる。同社も今月8日に、5-7月売上高が見通しを下回ることを明らかにし、市場を動揺させたばかり。事前にある程度織り込まれているとはいえ、8-10月見通しに対する注目度は高く、指数寄与度の大きい関連株の動向を占ううえで注目だ。
一方、需給面での基調の転換にも注意したい。7月半ばから株式市場のリバウンドが始まったが、既に1カ月が過ぎ、日柄的にはそろそろ上昇が一服してもおかしくない頃合いだ。足元では底堅いながらも、リバウンド相場の序盤に力強い動きを見せていたナスダック総合指数の騰勢にも衰えが見られる。また、今週末に米国版のSQ(特別清算指数)算出を終えていることからも、買い戻しは一巡してきたと推察される。実際、今週末は米10年債利回りが一時2.99%まで急伸し、ナスダックが2%を超える下落と久々にかなり弱い動きとなった。基調の転換を裏付けるものとして注意した方がよいだろう。
また、東京証券取引所が公表する裁定取引に係わる現物ポジションを見ると、8月8日時点での買い残から売り残を差し引いたネットの裁定買い残は、3月21日に並ぶ今年最高水準にまで積み上がっている。日経平均株価の推移をみると、前回、ネットの裁定買い残がピークを付けた3月21日の週をピークに、その後2カ月近く下落基調を辿った。週末に注目イベントが控える中、需給面での一巡感も台頭してきていることで、来週は上値の重い展開となることを予想する。
■米耐久財受注、ジャクソンホール会議など
来週は23日に米7月新築住宅販売件数、24日に米7月耐久財受注、25日に米4-6月期国内総生産(GDP)改定値、ジャクソンホール会議(~27日)、独8月Ifo景況感指数、26日に米7月個人所得・個人支出が発表予定。
《FA》