明日の株式相場に向けて=9月相場に吹き荒れる嵐

市況
2022年9月1日 17時00分

名実ともに9月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比430円安の2万7661円と大幅続落。ちょうど1週間前の当欄で、「市場ではジャクソンホール会議のパウエルFRB議長の講演はアク抜けにつながるという見方も出ているが、油断はできない」とした。なぜならマーケットが根拠の薄い楽観に傾いていたからで、「来年の利下げを織り込む動き」という解釈が平気でメディアで取り上げられることに危うさを感じた。パウエルFRB議長はこれまでその可能性に一言たりとも触れてはいなかった。したがって8月上旬の戻り相場が「投資マネーの“早過ぎる見切り発車”であったとすれば、その分の調整圧力が9月9日のメジャーSQ算出に向けて発現する可能性がある」と述べた。喜べない話だが、全体相場はまさにそのシナリオに沿って進んでいる。

経済指標や要人発言に対する反応も、その時の相場のムードや需給関係でどうにでも変わるといってしまえば語弊があるが、実際今はそういう傾向が強い。株価の値動きはフタを開けてみるまでは分からない。例えばコンセンサスよりも強い数字が出た場合、これを「インフレ警戒感からの金融引き締め強化」の思惑として嫌気するのか、「経済がしっかりしている(=リセッション懸念の後退)」という事実を好感するのか、どちらに進むのかはその時の相場次第で決まるケースが少なくない。もっと踏み込んだ言い方をすれば、AIアルゴリズムが上下どちらの方向にコマンドを出すかによって、イベントの結果が好材料だったか悪材料だったかが決まる。その際、メディアの仕事は後付けの講釈をつけることである。

9月相場は前半厳しい環境に晒される可能性がある。「レーバーデー明けの9月6日から海外機関投資家が戻ってくるが、売りから入ってくるファンドが多いのではないか」(ネット証券マーケットアナリスト)という声がある。この週の週末9日に東京市場ではメジャーSQ算出を控えている。「早い段階(日経平均が2万8000円台後半に位置していたころ)から2万7500円のプットが1番人気」(同)であることが指摘されていたが、どうやらその水準を巡る攻防となりそうな気配が漂う。

ネット証券の店内では、「前週からにわかに個人投資家の日経レバ(日経平均連動型ETF)への買い越しが目立つようになってきた。一方で日経平均に逆連動する日経ダブルインバースは信用買い残が急減している」とする。つまりこれは、個人投資家が日経平均の押し目を買い下がる動きに切り替わったことを意味する。海外投資家は7月以降、先物を大きく買い越してきたのだが、積み上げた買いポジションの反動でレーバーデー明けの売りニーズの強さが警戒される。個人投資家の押し目買いVS外国人売りの構図が想定されるが、2万7000円台後半は少々分が悪く、もう一段下値を試す局面に誘導されそうだ。

こうした地合い悪にあっては「休むも相場」で、例によって落ちてくるナイフを掴むのは原則避けた方がよい。これだけ急速に円安が進行するなかにあって、トヨタ自動車<7203>が売りに凌駕され2000円トビ台で推移している現状は何を意味しているか。インフレによる製造コスト上昇と世界経済の失速という2つのネガティブ要因を、為替メリットでは吸収できないということを株価が物語っているようにも見える。

9月は20~21日の日程でFOMCが行われるが、今週末発表の8月の米雇用統計の内容いかんに関わらず0.75%の利上げが濃厚とみられる。量的引き締めについては、9月以降は倍速モードとなり毎月950億ドル規模の資金が吸収されていく。もっとも、その前に来週8日に開催されるECB理事会が要警戒となる。欧州は天然ガス価格の高騰もあって米国以上にインフレが深刻となっている。ECBは前回の0.5%利上げから今回は米国同様0.75%利上げを強行する可能性も高まっている。ただし、陰極まれば陽転するのが相場の常でもある。「セルインメイ(5月に売れ)」はウォール街の有名な相場格言だが、これには続きがあって、それは「9月に戻って来い」である。「9月のセントレジャーズデー(第2土曜日)を過ぎたら戻れ」という。第2土曜日は今年のカレンダーでは10日。9日のSQにかけて急な下げがあれば、そこはいったん買い場が提供される公算が大きい。

あすのスケジュールでは、8月のマネタリーベース、3カ月物国庫短期証券の入札、8月の財政資金民間収支など。海外では8月の米雇用統計にマーケットの関心が高い。このほか7月の米製造業新規受注額も発表される。なお、ベトナム市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年09月01日 18時23分

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