【植木靖男の相場展望】 ─9月FOMCが株価の転機となるか
「9月FOMCが株価の転機となるか」
●いまは地固めの段階、反発に転じれば上昇に弾みも
日経平均株価は、8月17日高値の2万9222円までの上昇波の反動安でじり貧商状をみせている。なかでも8月29日の窓を空けての急落は、“もはや詮なし”といったところだ。米国株の弱さにお付き合いした格好だが、どこまで下げたら気が済むのか。1つ頼りとなるのがチャートだ。6月9日からの下落幅が参考になろう。2470円幅の下落(終値ベース)だが、これは最悪のケース。だとすると、2万6700円処、もしくは重大な注目ラインとみられる2万7000円処あたりか。
ところで、ここまで下げてきた最大の懸念材料は、米連邦準備制度理事会(FRB)のまさに捨て身の利上げ作戦だ。経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、パウエルFRB議長はそれをはっきりと言及したのだ。もちろん、株式市場はある程度、それを見越して身構えていたのだが……。
さて、FRBが敵視しているインフレの根本原因は、FRBがおカネを刷り過ぎたことだ。だとすると、9月からQT(量的引き締め)で月最大950億ドルの資金を回収することで需要を抑えるには十分といえる。だが、財政をみると奨学金免除で3000億ドル以上もの支出が見込まれるという。まさに“掬った手から水が洩れる”ではないか。インフレ退治は容易ではないようだ。
このため株価は、このあたりを見透かされてジリ貧を辿っている。とはいえ、米国株そして日本株はいったん6月中旬に国際商品安を手掛かりに反発底入れをみせていた。いまは地固めの段階といえよう。日を経たずして反発上昇へと転じよう。まして円安基調にある今日、日本株は米国株以上に上昇に弾みがつくと予想される。
その円安だが、日米金利差の拡大、日本の貿易赤字の常態化といった基本要件が変わらないとすれば、1ドル=140円で止まることはなさそうだ。ただ、9月20日~21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%という厳しい利上げがあれば、それをきっかけにドル高・円安はいったん一休止する可能性もあろう。
●当面は内需系の出遅れ株物色か
こうした複雑な環境の中で、物色はどのような展開をみせるのであろうか。
大まかな基本図でいえば、米国長期金利がカギを握っていることに変わりはない。
米長期金利は6月中旬、国際商品市況がピークをつけた時点をきっかけに、3.49%でピークを打っている。現状の上昇はあくまでも二番天井を形成する段階であり、おそらくFOMCが開かれる20日頃がそのタイミングともいえる。それまではグロース株が動き難いことは容易に察せられる。
逆にいえば、その後の金利低下、ドル安とグロース株の反騰が期待されよう。よって、それまでは内需系の出遅れ株が物色されるのではないか。9月相場に入って、そうした内需系出遅れ株が強張っていることに気づかされる。
その筆頭は、3年ぶりの回復と報じられた百貨店だ。三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]に注目したい。高級品の売り上げ増加の勢いが止まらないという。今23年3月期は大幅増収増益、連続増配の予定だ。
次いで、IHI <7013> [東証P]だ。脱炭素関連、航空関連、そして防衛関連としても、いますぐとは言わないまでも23年以降の出世株になりそうだ。つい平成バブルを想起してしまう。
最後に、LNG(液化天然ガス)関連としての日揮ホールディングス <1963> [東証P]だ。これまでに世界のLNG生産量の30%以上を占めるLNGプラントを建設してきた。LNGはエネルギーの中で最も先行きが注目される。
2022年9月2日 記
株探ニュース