明日の株式相場に向けて=欧州のインフレ暴発と爆速円安の先

市況
2022年9月6日 17時01分

きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比6円高の2万7626円とわずかにプラス。前日の米国株市場がレーバーデーの休日で休場だったことから手掛かり材料難が意識されたが、フタを開けてみれば強気とも弱気ともいえないどっちつかずの玉虫色相場が続いた。手掛かり材料に乏しいというのは実は間違った解釈で、今はインフレが米国以上に深刻化している欧州の動向も、相場の強弱を決める重要なファクターを占めている。前日の欧州株市場は、トラス新首相誕生で話題の英国はわずかにプラスで引けたが、そのほかの西欧の株価はほぼ全面安、独DAXに至っては2.2%強の下げをみせるなど、リスクオフが鮮明だった。2.2%の下げは日経平均で換算すれば約550円安に相当する。

ロシアが天然ガス供給の再開を延期しているが、再開はロシアへの経済制裁の解除が条件という。分かってはいたものの、やはりノルドストリームを見せ札に揺さぶりをかけてきた。厭戦気分が漂う西側諸国において、特にドイツなどはエネルギー価格高騰で悲鳴を上げざるを得ない状況下で、ウクライナ問題よりも自国ファーストの流れに傾く可能性は意識しておかねばならない。「足もとでは米国でショート(空売り)がかなり溜まっている。したがって今週はSQ週だが、米国主導でいったん反発に転じる公算もある。ただ、インフレ暴発の様相をみせるなか、実需の買いが続くとは思えず、SQ明け後の方がむしろリスクが大きい」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。何よりも足もとで進む過激な円安進行は、その速度感が問題であり、さすがに“狂った計器”の針を前に「株高推進エンジン」として大歓迎とも言っていられなくなってきた。

ただし、マザーズ指数の動きを見ても分かるように個人投資家目線では決して相場は壊れていない。テーマ買いの動きが随所にみられる。例えば、大型で強い勢力を持つ台風11号による九州などでの被害が取り沙汰されたが、今後も台風シーズンの到来で対策が怠れない。既に建設コンサル会社の建設技術研究所<9621>やコンクリート2次製品を手掛けるベルテクスコーポレーション<5290>などが強力な上昇トレンドを形成しているが、これが横に広がる可能性もある。低位では株式分割を実施したばかりのヤマックス<5285>は狙い目。九州エリアを地盤とするコンクリート2次製品メーカーで官公需に強い点がポイントとなる。このほか、国土強靱化関連の常連銘柄であるイトーヨーギョー<5287>も波乱相場の間隙を縫うポテンシャルを内在、面白い存在となり得る。

また、ここにきて鉄鋼セクターの一角が元気だ。日本製鉄<5401>はトヨタ自動車<7203>との間で車用鋼材の値上げで合意したことが報じられ、この後に両社の株価は「日本製鉄買いのトヨタ売り」を誘発するなど明暗を分けた。日本製鉄は大手海運並みのPERの割安さに加え、PBRは0.5倍台とむしろ海運よりも低い。配当利回りも前期実績ベースで換算して7%台と、バリュー株代表のバトンを渡されても遜色ないポジションにいる。景気敏感セクターの主力株ではあるが、日経平均とは完全に異なる波動を刻んでいる。

この日本製鉄と関係が密接なステンレス鋼商社がUEX<9888>だ。8月中旬以降に株価を急動意させているが、それでも時価はPER5倍、PBR0.6倍前後で配当利回りは前期実績ベースで換算して5%台をゆうに超えている。23年3月期第1四半期(22年4~6月)の営業利益は前年同期比4.5倍の11億5200万円と急拡大、通期見通しではレンジ下限で従来予想の19億円から25億円(前期比18%増)に大幅に上方修正している。

国策後押しのサイバー防衛関連では、低位株のセキュアヴェイル<3042>は商いも増勢でこれから見せ場が訪れそうな気配を漂わせる。業績は22年3月期に2ケタ減収で営業赤字に転落し、これが200円台での株価低迷を余儀なくさせている背景だが、業績面では前期が大底とみられる。資本面や業務面でNRIグループがバックにいるのは心強く、今期以降の回復を読めば、300円近辺の時価は食指の動く株価水準である。

あすのスケジュールでは、午後取引時間中に7月の景気動向指数(速報値)が内閣府から、7月の消費活動指数が日銀からそれぞれ発表される。海外では8月の中国貿易統計、4~6月期豪GDP、7月の米貿易収支が開示。このほか、ポーランド中銀やカナダ中銀の政策金利発表も予定されている。また、ブレイナードFRB副議長をはじめFRB高官の講演が相次ぐことで、マーケットの関心を集めそうだ。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年09月06日 18時52分

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