明日の株式相場に向けて=SQ目前の急反騰劇が示唆する次の舞台
きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前日比634円高の2万8065円と急反騰。上げ幅は600円を超え、フシ目の2万8000円を上回った。前日の米国株市場ではハイテク株などを中心に買い戻され、NYダウが435ドル高、ナスダック総合株価指数が246ポイント高と揃って大きく切り返した。ナスダック指数は直近7日連続安と下げが顕著であったことから、その反動で上昇率はNYダウを上回り2%超となっている。そして、リスクオンのバトンを渡された東京市場も先物主導による買い戻しの動きが誘発された。
米国株市場では、8月のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長のタカ派発言を境に、最近までひたすら下値を切り下げる展開にあったが、ようやく歯止めがかかった。冷静に見れば、ここでのパウエル氏のコメントはインフレ抑制を最優先するというこれまでの延長線上に過ぎず、サプライズと呼べるような内容ではなかった。来年利下げのシナリオをマーケットが勝手に作り上げ、そして勝手に潰した。そのプロセスが8月下旬を分水嶺とする米株市場の“往って来い相場”にそのまま映し出されている。
溜まっていたショートポジションの買い戻しがどのタイミングで来るか、これが市場関係者の話題であったが、ECB理事会(ラガルドECB総裁の記者会見)とパウエルFRB議長の討論会出席が予定される8日よりも前の段階で巻き戻しが入った。日柄的に耐え切れず、売り方がイベントドリブンを避けて前倒しで手仕舞いした結果といえるが、首尾よく東京市場もこの流れに乗る形となった。
基本的に当面の日経平均はボックス相場との認識でよいと思われる。下げトレンドが続いた後に大陽線もしくはマドを開けて反発に転じた場合、その後もしばらくリバウンド局面が続くパターンが繰り返されてきた。今回もそのパターンを踏襲することを期待したいが、とりあえず今晩の欧州株や米国株の動きに左右されることは避けられない。ECB理事会の結果とラガルドECB総裁の記者会見が注目されるが、ECBは0.75%の利上げに動く可能性が高いとみられている。ドイツをはじめ欧州経済のリセッション懸念も強く意識されるなか、0.5%にとどめる線も残されている。ただ、市場では「0.5%だった場合でも利上げの打ち止め感が出るわけではないので、これを好感して株式市場が活気を取り戻すような展開にはなりにくい」(生保系エコノミスト)という声が出ていた。同日にパウエルFRB議長のパネル討論も予定されているが、ジャクソンホール会議から日が浅く、新たな思惑を生じさせるような発言は極力避けるはず。米国株はパウエル氏の目論見通りかどうかは別として大きく調整したので、今回のディスカッションで輪をかけてタカ派的なことを発信する必要もなく、その点ではマーケットの側からみて安心感がある。
個別では、引き続きサイバーセキュリティー関連株に着目しておきたい。ロシア系ハッカー集団の「キルネット」が前日夜にサイバー攻撃をほのめかすメッセージを載せた動画を公開、政府や民間企業のサイトをターゲットにDDoS攻撃を仕掛けていることが報じられている。安全保障の観点からサイバー防衛のテーマは国策的にも外せない。100%自社で開発したWebセキュリティーサービスを展開し「防衛関連事業者向けサプライチェーン防衛パッケージ」を開発しているサイバーセキュリティクラウド<4493>が株価を大きく動意させている。これがサイバー防衛関連全般に出遅れ株を物色する動きに波及しているが、そのなか自社企画の情報セキュリティー商品を取り扱うNo.1<3562>や、サイバー攻撃の監視で高い実績を持つラック<3857>などを新たにマークしてみたい。
このほかでは、政府の水際対策緩和を受け、インバウンド関連株の一角も再攻のタイミングといえるかもしれない。HANATOUR JAPAN<6561>が上値追い基調を強め6月末につけた戻り高値1544円を払拭してきたが、相対的に出遅れているベルトラ<7048>も目先注目。75日移動平均線をサポートラインに切り返しが期待できそうだ。
あすは株価指数先物・オプション9月物の特別清算指数(=メジャーSQ)算出日にあたる。朝方取引開始前に8月のマネーストック、後場取引時間中に7月の特定サービス産業動態統計が開示される。また、3カ月物国庫短期証券の入札も行われる。海外では、8月の中国消費者物価指数(CPI)と8月の中国卸売物価指数(PPI)が注目されるほか、7月の米卸売在庫も発表される。(銀)
最終更新日:2022年09月08日 17時17分