【村瀬智一が斬る!深層マーケット】0.75%利上げを織り込み、リバウンドを意識したセンチメントへ

市況
2022年9月10日 8時00分

「0.75%利上げを織り込み、リバウンドを意識したセンチメントへ」

●ボリンジャーバンド-2σまでの調整を経て、強いリバウンドに

日経平均株価は8月17日につけた2万9222円をピークに調整を続けていたが、9月7日安値の2万7268円をボトムにリバウンドに転じ、週末9日には2万8200円を回復してきた。

米国で予想を上回る経済指標の発表が相次ぐなか、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めと景気への影響を警戒した売りによって、株式市場は調整を強めていた。しかし、75日移動平均線を割り込み、売られ過ぎが意識されるボリンジャーバンド-2σまでの調整を経て、反発に転じた。8日の欧州中央銀行(ECB)定例理事会のほか、パウエルFRB議長発言を通過したことで、これらをターゲットとした売り方の買い戻しもあったと見られる。

13日には米消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、FRBの利上げを後押しする内容となる可能性もあるだけに、方向感のつかみづらい状況は変わらないだろう。ただし、その翌週20-21日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%利上げは株式市場では完全に織り込まれており、次第にリバウンドを意識したセンチメントが強まりやすい。とはいえ、FOMC通過までは積極的な売買が手控えられるほか、シルバーウィークも近づき商いは膨らみづらい。ここからはインデックス主導というよりは、個別に材料のある銘柄などへの物色に向かいそうだ。

●今後、活躍が期待される「注目5銘柄」

◆BIPROGY <8056> [東証P]

大日本印刷系の情報システム大手。9月6日、自動運転開発やシミュレーションといった新分野での事業を行うため、新会社V-Drive Technologiesを設立し、自動運転車の安全性評価のためのプラットフォーム「DIVP」製品の提供を開始すると発表。今後の取り組みとしては、CAD/CAM/CG分野でのノウハウや実績を生かしてシミュレーター製品とサービスを提供し、運用プラットフォーム基盤の開発と運営を支えるとしている。株価は8月4日に窓を空けて上昇し、9日には3190円まで買われた。その後は高値圏ながら調整基調にあったが、25日移動平均線水準からのリバウンドを見せている。週足では52週移動平均線を支持線に変えつつあり、長期的な調整トレンドからの転換に期待。

◆エクシオグループ<1951> [東証P]

通信インフラ事業を中心に様々な社会インフラやシステム構築に携わっている。政府のデジタル田園都市国家構想によって、デジタルインフラの基盤整備が全国で進むと想定される。また、それを支えるエネルギー分野でも、送配電インフラの増強やその運用の高度化に向けた投資が拡大すると考えられる。株価は4月にレンジを切り下げ、現在は2000円~2200円辺りのボトムレンジで推移している。上値を抑えられている26週移動平均線を突破してきており、ボトム圏からのリバウンドに期待。

◆KDDI<9433> [東証P]

総合通信会社。非通信事業にも注力。9月7日、島精機製作所 <6222> [東証P]のアパレル業界向けデザインソフトウェアと同社のXR(クロスリアリティ)技術を連携させた販促パッケージ「XRマネキン for APEXFiz」の提供を開始すると発表。さまざまなデバイスで商品イメージを360度から確認できる「XRマネキン」を活用し、デジタルカタログや360度VRショールーム、店舗のデジタル拡張を可能にする。店頭の余剰在庫削減や新たな販売機会の創出につなげる技術として注目される。株価は5月27日につけた上場来高値4636円をピークに調整していたが、切り上がる26週移動平均線を支持線としてリバウンド。足もとで13週移動平均線を突破してきており、5月高値を窺う展開へ。

◆近鉄グループホールディングス <9041> [東証P]

政府は9月7日から水際対策を緩和。外国人旅行者に対して定められている1日当たりの入国者数上限を2万人から5万人に引き上げた。また、添乗員を伴わない訪日パッケージツアーでの入国も可能とした。大阪など関西圏や歴史的建造物が人気で、韓国では日本への旅行の予約数が2週間前の5倍以上に膨れているという。インバウンド関連の一角として注目されるほか、シルバーウィークの到来も追い風となる。株価は8月18日につけた年初来高値4835円をピークに調整を見せているが、切り上がる13週移動平均線が支持線として機能しており、押し目狙いのスタンスに。

◆TIS <3626> [東証P]

金融、産業、公共、流通サービス分野などに強みを持つシステムインテグレーター。クレジット大手のJCBは事業者のスマホアプリのUX強化を支援する「デジタルバリュープラットフォーム」の提供を2023年春より順次開始すると発表。また、消費者向けにも自社モバイルウォレットサービスを2023年内に提供を開始する予定としているが、同社はパートナー企業としてプラットフォームの構築に参画する。株価は3月7日につけた2484円を安値に切り上がる13週移動平均に沿って上昇トレンドを形成。過熱感は意識されやすいだろうが、良好な需給状況から押し目狙いのスタンスで注目したい。

(2022年9月9日 記)

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