明日の株式相場に向けて=「インバウンド×メタバース」相場開幕
週明け12日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比327円高の2万8542円と3日続伸。前週末は欧州株市場が全面高に買われた流れを、米国時間もそのまま引き継ぎNYダウはフシ目の3万2000ドル台、ナスダック総合株価指数も1万2000大台を終値でクリアした。何が変わったというものでもなく、いわば万有引力にも似た作用で振り子が戻りに入ったということ。米長期金利が上昇一服となったことを買いの手掛かりに挙げているが、当然ながら相場を動かすような材料インパクトには程遠い。
あすの日本時間夜9時半に発表される8月の米CPIの結果を、固唾を呑んで見守るという感もあるが、総合指数については減速が予想されているものの、エネルギーと食品価格を除いたコアCPIについては7月の前年比5.9%増から8月は6.1%増に上昇率が高まる可能性が指摘されており、相場への影響も含めてフタを開けて見ないことには分からない。もっとも今は日経平均などの全体指数に関係なく、あくまで個別戦略で果実を収穫しやすい時期にあり、森より木を見る相場が続いていることを認識しておく必要がある。
インバウンド関連の材料株が相次いで値を飛ばしている。岸田政権では水際対策の緩和で1日当たりの入国者の上限を従来の2万人から5万人に引き上げたことが物色人気再燃につながったが、間髪を入れず10月までをメドに上限を撤廃する方向で調整に入っていることが伝わり、テーマとして更に勢いを増している。
そしてこのインバウンド 関連の人気化には、政府が入国規制を緩めていること以外に、もうひとつの強力な株高エンジンがある。いうまでもなく円安の進行で、日本でハイクオリティーの製品やサービスを望外の安価で獲得できることは外国人にとって大きな魅力となる。コロナ禍で訪日外客数に対するマーケットの関心は完全に失われていたが、社会的現象ともいえるかつての盛り上がりが徐々に復活する兆しが見えた今、風向きは突発的に追い風に変わった印象がある。同関連株について短期的には足もとの業績は不問ということになりやすい。つまり、投資する側にとって敷居が低くなり、業績悪を材料にショートが溜まっている銘柄については、踏み上げ相場の素地が開花するようなケースもあちらこちらで見られる。
既に取り上げたHANATOUR JAPAN<6561>やベルトラ<7048>は株価を急速浮上させているが、この流れを継ぐものとしてホテル関連株などもマークしておくところ。例えばワシントンホテル<4691>がいい動きをみせている。また、不動産流動化関連でホテルにも展開するコスモスイニシア<8844>も面白い存在。今期は増配を計画しており、PER6倍台、PBR0.4倍前後は割安感が強い。消費関連ではコメ兵ホールディングス<2780>が大陽線を示現、同業態のバリュエンスホールディングス<9270>も急動意をみせているが、穴株としてはコト消費の範疇にあるコシダカホールディングス<2157>なども動兆しきりで着目しておく価値がありそうだ。
一方、メタバース関連株への物色の矛先も強まっている。今週行われる東京ゲームショウの絡みでゲーム関連株に刺激されているもの多数だが、この延長線上にあるのがバーチャルリアリティー(VR)で、「東京ゲームショウVR2022」がコンテンツ的には肝といえる。当欄ではWeb3事業に本格参入しているドリコム<3793>を継続フォローしてきたが、きょうは上げ足を一気に加速させている。東京通信<7359>も思惑先行ながら同関連株としては目を見張る2営業日連続のストップ高と気を吐いた。この流れを意識するなら、IMAGICA GROUP<6879>の新値街道復帰もイメージできる。同関連の穴株としてはモイ<5031>だが、あす13日の決算発表を通過してからの方が参戦しやすい。このほか次世代VRシステム開発会社と連携し、メタバース領域を深耕する構えの共同ピーアール<2436>もマークか。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に8月の企業物価指数、7~9月期法人企業景気予測調査が発表されるほか、5年物国債の入札も行われる。また、IPOが1社予定されており、東証グロース市場にジャパニアス<9558>が新規上場する。海外では8月の英失業率、9月のZEW独景気予測指数のほか、8月の米消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高い。8月の米財政収支も発表される。(銀)