窪田朋一郎氏【日経平均戻りどこまで、米株主導の上昇相場の行方】(1) <相場観特集>
―2万8000円台半ばは上値も重い、為替動向にも関心高まる―
週明け12日の東京株式市場では、日経平均株価が一時は400円近い上昇で2万8600円台まで水準を切り上げる場面があった。米株市場ではインフレ懸念の後退がハイテク株などを中心とする買い戻しの動きを誘い、NYダウやナスダック総合株価指数の戻り足が続いている。東京市場でもこの流れに追随する形だが、日経平均2万8000円台半ばは上値も重い。また、円安基調にある外国為替市場の動向も気になるところだ。今後の株式市場と為替相場の見通しについて、それぞれの業界第一線で活躍する市場関係者2人に話を聞いた。
●「米CPIで流れが変わる可能性も」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
米国株市場、東京市場ともに戻り局面にあるが日本時間あす夜に発表される8月の米消費者物価指数(CPI)次第で流れが変わる可能性があり注意が必要となりそうだ。7月の米CPIは前年比8.5%の上昇だったが、8月については同8.1%の伸びが見込まれており、コンセンサス通りならインフレの減速感が意識される。実際コモディティ価格などを見てもモノのインフレはピークアウトする兆候にあるようで、8月は前月比で見た場合は、0.1%低下が市場予想となっている。ただし、フタを開けてみて想定外に強い数字だった場合は、株式市場に混乱をもたらす公算も小さくない。
9月20~21日の日程で行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.75%の利上げが濃厚とみられており、これから発表される経済指標の内容に左右されて0.5%にとどまる、というようなことはなさそうだ。ただ、差し当たってあす発表される米CPIに対するマーケットの関心の度合いは高く、仮に想定以上の強い数字であれば、来年以降に期待されている金融引き締め終了が遠のく可能性もある。そうなれば、株式市場は大きくリスクオフに傾くことは避けられない。サービス分野のインフレが収まるまでにはまだ紆余曲折がありそうだ。今後の悪い方のシナリオとしてはドル高・株安が同時進行し、東京市場の側から見れば円安・株安の流れが形成されるケースも考えられる。
向こう1ヵ月でみた日経平均のゾーンは上値が2万9000円近辺で、下値についてはインフレ警戒感が再燃した場合の深押しを念頭に置いて2万6500円前後としておきたい。物色対象もハイテク株への投資は本腰を入れにくく、相対的にディフェンシブセクターが有利となろう。現在活発化しているインバウンドの物色テーマも考慮すれば、JR九州 <9142> [東証P]や小田急電鉄 <9007> [東証P]などの電鉄株が注目される。また、バリュー株的な側面を持つ日本電信電話 <9432> [東証P]、KDDI <9433> [東証P]などの通信セクターも強さを発揮しそうだ。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「アクティビスト追跡ツール」など、これまでにない独自の投資指標を開発。
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