明日の株式相場に向けて=米株波乱でも勝てる株を探す
きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比796円安の2万7818円と急反落。米国株の波乱を引き継いで一気に2万8000円台を割り込んだ。幾たびも繰り返される「CPIショック」だが、分かってはいてもAIアルゴリズム売買のスイッチが入ってしまえば、結局“右に倣え”とばかりにこれまで壁の中に潜んでいた売り圧力が姿を現し、四方八方から押し迫ってくる、そんなイメージである。コロナマネーが中央銀行に回収される過程において、波乱相場の芽はなかなか摘み取ることができない。
注目された8月の米消費者物価指数(CPI)だったが、売り方と買い方双方にとって、もはや今月下旬に開催されるFOMCの前哨戦ともいえるイベントといってよい。その数値が発表されるのを、サイの目が振られる直前の博奕打ちのように投資家は息を殺して待っている。果たして発表された内容は、総合指数は前年比で8.3%の上昇となり、これは7月の8.5%からは若干の減速が確認できた。しかし、問題のコアCPIについては前年比6.3%の上昇と7月の5.9%から加速しており、コンセンサスの6.1%上昇も上回った。この数字自体が前日の米国株市場でNYダウを1300ドル弱、あるいはナスダック総合株価指数を630ポイントあまり押し下げるほどのインパクトを生むとも思えないのだが、現実は覆せずマーケットは稲妻に打たれたかのような下落に見舞われた。
市場関係者によると「今回の米CPIは数字以上に内容が悪過ぎたといえる。何と言ってもガソリン価格が10%強も下がっているにもかかわらず、インフレが収まっていないことが衝撃的だった」(ネット証券アナリスト)と指摘する。サービス価格や自動車価格、自動車保険、家賃などのほか、食品価格が13%以上も上昇していることで、「コモディティ価格の上昇ステージは終わったとの見方も根底から否定された」(同)とする。
今月のFOMCで0.75%の政策金利引き上げはほぼ確定的となった。Fedウォッチでは1.0%利上げの予想も30%程度まで上昇してきた。これについて市場では「実際にFRBがここで1%利上げを決めたら、(パウエルFRB議長が)自ら政策ミスの塊であったことを認める土下座レベルで、マーケットから信任を失う。したがっておそらく0.75%にとどめると思われるが、4.0%前後とみられていた最終的な金利水準の上限は引き上がるだろう」(中堅証券ストラテジスト)という声が聞かれた。
こうしたなかでも、個人投資家の買い意欲は旺盛のようだ。これまでのボックス相場の変動領域を考えると、2万7000円台後半は逆張りのタイミングとしては時期尚早のような気もするが、「信用枠を活用した買いで果敢に買い向かっている」(大手ネット証券)という。それもそのはずで、同証券店内の信用評価損益率は直近でマイナス6.7%とかなり余裕がある。マイナス10%前後が強気と弱気が拮抗しているニュートラルな状態を示すというから、現状はまだ楽観的な見方が強いことを物語る。足もとで外国人売りの個人買いの構図が鮮明となっているが、勝ち負けは別として個人投資家のしたたかさが見て取れる。
したがって個別株物色も跛行色はあるものの、強い株にはそれなりに資金が集まってくる地合いであり、「森より木を見る」の相場は継続している。インバウンド関連株はHANATOUR JAPAN<6561>やベルトラ<7048>が嵐の中でもしぶとく上値を追っているが、横に視野を広げていくと消費関連でドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>やビックカメラ<3048>、更にその傘下のコジマ<7513>などが目につく。また、外国人に人気のラーメンでは力の源ホールディングス<3561>などに旨味がある。ホテル関連では出来高はまだ薄いものの、京都ホテル<9723>が眠りから覚めたような上値慕いの足を見せ始めた。更に金利上昇局面ではディープバリュー株が存在感を高める傾向がある。PER・PBR・配当利回りのどこを取っても割安感が際立つ光ビジネスフォーム<3948>は要注目といえる。
あすのスケジュールでは、8月の貿易統計、7月の第3次産業活動指数など。また、18日までの日程で「東京ゲームショウ2022」が開催される。20年物国債の入札も行われる。海外では7月のユーロ圏貿易収支、8月の米小売売上高、8月の米輸入物価指数、8月の米鉱工業生産・設備稼働率、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数など。(銀)
最終更新日:2022年09月14日 18時01分