SANKO Research Memo(4):水産業の6次産業化に向けてサプライチェーンを構築

特集
2022年9月16日 15時14分

■事業概要

2. 水産業の6次産業化に向けてサプライチェーンを構築

SANKO MARKETING FOODS<2762>は、「産地を守ることこそが、食文化を守ること」をテーマに掲げ、産地に入り、生産者とともに歩む「産地活性化プラットフォーマー」を目指し、新規事業として水産業の6次産業化に向けた動きを加速させている。

2020年12月に沼津我入道漁業協同組合に加入し、沼津で水揚げされた鮮魚等のグループ飲食店舗や外食事業者への提供、一般消費者への移動販売を開始した。2021年9月には、地方卸売市場沼津魚市場における買参権(生産者が市場に水揚げした魚介類を、卸売人を通じて購入できる権利)を取得した。2021年11月には、浜松中央卸売市場の仲卸兼マグロ加工メーカーであるSANKO海商を子会社化(民事再生手続中の海商が会社分割で新設・事業承継した新・海商を子会社化して商号変更)し、沼津水産事業との連携により商品開発・供給力を強化した。2021年12月には沼津我入道漁業協同組合の組合員から、漁業研修船兼自社運用船として漁船「辨天丸」を譲り受けた。そして2022年7月には、東京都中央卸売市場の卸売業者である綜合食品を子会社化した。綜合食品は国内最大の消費地市場である豊洲市場で7社しかない大卸の1社として、全国の産地との間に立って首都圏を中心に安定的に商品を提供している。同社は綜合食品を通じて、各地の生産者(産地)から直接に水産物を取り扱うことが可能になった。

この結果、漁師・漁協の生産者分野(同社の沼津水産事業部)~産地市場(沼津魚市場における買参権)~消費者市場(大卸の綜合食品、仲卸のSANKO海商)~加工会社(沼津加工場、東京・茅場町LABO)~問屋~飲食店・鮮魚店(同社飲食店)という、水産業の6次産業化に向けた生産から販売までのサプライチェーン構築が一気に進展した。

コロナ禍以前から事業環境変化にいち早く対応

3. リスク要因

飲食業界のうち、特に居酒屋業態においては、生産年齢人口減少による市場縮小、特徴のある専門店・個店の台頭、消費者ニーズの変化による大型の総合型居酒屋業態離れ、食材価格やアルバイト人件費の上昇など構造的な逆風の流れがある。2008年のリーマンショック以降は、不況による個人消費低迷、ライフスタイル・消費者ニーズの多様化、企業の働き方改革推進などを背景とする大人数宴会需要の減少など、大型総合型居酒屋業態への逆風が一段と強まった。さらにコロナ禍による外出自粛、店舗臨時休業・営業時間短縮・酒類提供自粛などの営業制限により、大型の総合型居酒屋業態が大きな打撃を受ける形となった。

同社は、2008年のリーマンショック以降に消費者の総合型居酒屋業態離れの傾向が強まったことへの対応として、いち早く事業ポートフォリオ転換に着手した。2014年以降は郊外・高効率の中小型店舗を中心とする大衆酒場業態や日常食業態の出店を推進する一方で、2019年以降には従来の主力であった都心繁華街立地の総合型居酒屋業態の閉店を加速し、事業規模を縮小した。2022年6月期末には従来の主力だった総合型居酒屋業態「金の蔵」を7店舗まで縮小して事業ポートフォリオ転換が完了した。

合計店舗数は減少して売上高も大幅に減少したが、都心繁華街型の大型店舗からの撤退によって高固定費(地代家賃、人件費)負担が減少して収益圧迫要因が軽減化された。また、経営のコントロールが効きやすくなり、人材不足も解消して店舗運営に係る品質向上の効果も期待されている。さらに居酒屋業態以外の新たな収益柱構築に向けて水産業の6次産業化を推進している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《ST》

提供:フィスコ

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