明日の株式相場に向けて=FOMCとロシア有事リスク

市況
2022年9月21日 17時00分

きょう(21日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比375円安の2万7313円と反落。前日の欧米株全面安を受け、リスク回避目的の売りがかさんだ。後場はいったん下げ渋る動きをみせたものの、引け際に先物主導で大口の売り注文が出て下げ、結局きょうの安値近辺で着地している。

個別株戦略も「森より木」ということは主張してきたが、できれば当面は長期保有を決めている銘柄を除いてオーバーナイトしない方が賢明と思われる。短期視野なら中途半端なスイングトレードはやめて日計りで対処するほうがリスクは少ない。日経平均2万7000円台前半の水準は13週・26週移動平均線絡みで、これまでの往来相場のスケールで考えればちょうど中段に位置している状態だ。可能性は五分五分としてもリスクオフに傾けばこの長短移動平均線を下放れる、つまり2万6000円台前半への調整は普通に起こり得る。

一方、過去の経緯から空売り筋も腰の引けるところではある。弱気一色の地合いから一夜にして弾丸リバウンドに転じ、踏み上げ相場の肥やしにされてしまうというケースは今年に入ってから何度も繰り返されてきた。「弱いと思えば強く、強いと思えば弱いボックス圏往来」が今年のトレンドであり、売り方も買い方も前のめりに突っ込むと足をすくわれるパターンに陥る。いずれにしてもイベントドリブンで嵐が接近している予感はあり、FOMC通過後は上下どちらに振れるかは不明ながら全体相場のボラティリティは高まりそうだ。

きょうの相場はFOMCや日銀の金融政策決定会合を前にした中銀トレードとは別の思惑が働いた。ロシア系メディアがウクライナ南東部の住民投票に関し、プーチン露大統領の演説が20日に行われる可能性について言及していたが延期され、日本時間きょう午後にも行われるとの観測が浮上したことだ。東京市場では前場から石川製作所<6208>、豊和工業<6203>、細谷火工<4274>、東京計器<7721>といった防衛関連に位置付けられる銘柄群に物色の矛先が向いた。

果たしてプーチン大統領からは「予備役の市民を対象とした軍事動員」が発表された。苦戦を強いられているウクライナ軍との戦いで、「不退転の姿勢」を宣言にしたに等しい。これに先立って日経平均も先物主導で前場取引後半あたりから下げ幅を広げる場面があった。しかし、その後は下値を売り込む動きは鳴りを潜め、午後1時過ぎからは2万7300円台で横ばいを続けた。リスクオフの地合いながら、ショートカバーがブレーキの役割を担った。とはいえファンダメンタルズの側面から光を当てると、このタイミングでの地政学リスク再燃はやはり厄介である。インフレ懸念を増幅させるためだ。例えばロシアのウクライナ侵攻と価格連動性が高い小麦市況は足もとで再び高騰している。コーン価格も目先上昇基調を強めており、ここでコモディティのインフレが再加速することは、サービス分野の価格上昇と相まってスタグフレーションをもたらす可能性が高まる。この有事リスクに伴う川上インフレは、時間軸的に今回のFOMCでの0.75%の政策金利引き上げのシナリオを覆す要素とはならないが、11月以降のFOMCでは影響を及ぼしてくることが濃厚だ。

仮にコモディティ価格の上昇がなかったとしても、米国の最終金利(政策金利の打ち止め水準)は4%近傍という見方は上方修正される公算が大きい。これまではFRBが9月0.75%利上げの後、11月0.5%、12月0.25%、そして来年2月が0.25%というコンセンサスであったが、今回のドットチャートやパウエルFRB議長の記者会見を受け、よりタカ派的なシナリオが意識されやすくなる。市場では「11月は4会合連続の0.75%利上げ、そして12月は0.5%という線が濃厚。一部では最終金利は6%前後との見方も出ている」(中堅証券ストラテジスト)とし、今回のFOMCを通過してもなかなかアク抜け感は出ない可能性がある。一方、22日の日銀金融政策決定会合後の黒田総裁の記者会見への注目度もかなり高い。金融政策は現状維持と思われるが、8月の国内企業物価指数が9.0%増まで高まるなか無条件の円安放置は許される雰囲気ではなくなってきている。

あすのスケジュールでは、8月の全国スーパー売上高、8月の全国百貨店売上高のほか、日銀の金融政策決定会合の結果発表と黒田日銀総裁の記者会見が予定されており、市場の注目度が高い。また、東証グロース市場にFPパートナー<7388>が新規上場する。海外では4~6月期米経常収支、8月の米景気先行指標総合指数などが注目される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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