インフレ高進や利上げの終着点見えず、原油相場は1月以来の安値圏に<コモディティ特集>

特集
2022年9月28日 13時30分

ブレント原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は1月以来の安値を更新した。世界的な景気悪化による石油需要の下振れ懸念が強まっている。供給制約を背景としたコモディティ高に対して、主要国の中銀は消費を減退させることによってインフレ率をコントロールしようとしている。インフレ抑制には一時的な景気悪化が必要であるとの認識だ。物価高がコントロール不能となるよりは、リセッションの方がましということである。

●際限のない金融引き締めに怯える原油市場

だが、金利引き上げによって景気をどの程度痛めつければ需要が十分に後退し、インフレ率が各国中銀の目標水準へ落ち着くのか不明である。インフレを抑制する適切な政策金利の水準は手探りであり、インフレ高進が続く限り、金融引き締めが行われるリスクがあることは、原油を含めたリスク資産市場を怯えさせている。供給制約が強まれば物価上昇率の高止まりが続き、景気がひどく悪化しても金融引き締めを続けなければならないかもしれない。米国では1-3月期、4-6月期と国内総生産(GDP)が縮小したが、米連邦準備制度理事会(FRB)は気にかけていない。7-9月期の米経済が縮小しても景気後退に入ったとは認めず、利上げを続けるのだろうか。利上げの終着点が見えないことから、市場参加者が石油需要の減少を危惧するのも無理はない。

米国を除いて主要国は通貨安に見舞われており、利上げを続けても通貨安によってインフレ圧力が十分に後退せず、余計に利上げしなければならないリスクに直面していることも原油安の背景である。過剰な金利高によって景気が悪化するほか、利上げペースを加速させたところで対ドルでの自国通貨安を覆すことができるのか不明であり、インフレをコントロールできるかどうかも不明である。利上げを軸に各国が自国通貨安の防衛に乗り出すと原油価格が一段と沈む可能性が高まる。

●ウクライナ・ロシア問題とOPECプラスの動きにも注意が必要

一方、ウクライナのロシア占領地ではロシア編入を問う住民投票が23日から始まった。ドネツク州やルハンスク州、ヘルソン州、ザポリージャ州では編入が支持されそうだ。報道によると30日にもプーチン大統領が併合を発表する見通し。ロシアに加わる地域に対してウクライナ軍が攻撃を続けるならば、ロシアの特別軍事作戦は終了し、ウクライナとロシアの戦争が始まるリスクがある。核兵器の使用は脅しであって欲しいものの、ロシアと西側の対話が始まる兆候は全くなく、ウクライナでの軍事衝突はこれからが本番となるかもしれない。併合した地域を攻撃するウクライナにロシアが反撃した場合、西側は追加制裁を用意しなければならないが、ロシア産の石油を積載したタンカーをロイズ保険市場から排除するなど、もろ刃の剣しか残っていないのではないか。

石油輸出国機構(OPEC)プラスの動きにも注意が必要である。今回の景気悪化局面で産油国の歳入が原油安によって減少するならば、設備投資のさらなる削減から生産量の先細りが加速する可能性が高く、原油安を食い止めなければ、将来の手がつけられない原油高のリスクを高めることになる。ナイジェリアのシルバ石油相が減産について言及しているように、OPECプラスは来週の会合で再び生産目標を引き下げるだろう。OPECプラスの実際の生産量は目標をかなり下回っており、生産目標がまた引き下げられたところで材料視されないかもしれないが、主要産油国の判断は軽視すべきではない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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