明日の株式相場に向けて=ヘアピンカーブの先に見える答え

市況
2022年10月6日 17時00分

きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比190円高の2万7311円と続伸。引け際に大口の売りが出て上げ幅を縮小したものの堂々の4連騰となった。金利上昇と景気減速が同時進行するという難しい相場環境にあるが、足もとで日経平均は戻り足を続けている。前日は欧州株市場が全面安商状で潮の流れが変わったかに見えたが、欧州時間のリスクオフを米国株市場が断ち切った。前日のNYダウは一時400ドル以上の下げ、ナスダック総合株価指数も260ポイントあまりの下落をみせる場面があったのだが、そこからの粘り腰が凄かった。両指数ともに結局小安く引けたものの、取引終盤には揃ってプラス圏に浮上するなど頑強ぶりが際立った。CTAによるプログラム売買特有の動きであり、理屈ではなく、この日はまだ買い戻しの時間帯にあったということのようだ。

そして東京市場も米株市場と同様の時間軸で推移している。CTAの速射砲的な売り叩きや買い戻しに翻弄される状況だが、10月に入ってから全体相場は海外ヘッジファンドのショートカバーや国内の年金基金による実需の買いが寄与している。年金買いについて市場関係者は「9月後半の急激な株価下落を受け、時価総額で見た株式の保有比率は当然低下したことになる。下期相場入りに際し財務省からのヒアリング等があれば、比率を元に戻すために株を買うという動きに誘導されやすい」(中堅証券ストラテジスト)とする。機械的な買い戻しに加え、どちらかといえば前向きとはいえない動機にせよ足の長い資金の実需買いが入ったことで、10月月替わりからのリバウンド相場が演出された。しかし、今週末の9月の米雇用統計はひとつの関門となる。

米雇用統計に先立って発表された9月のADP全米雇用リポートの方は、民間部門雇用者数の伸びが20万8000人でこれは事前コンセンサスを若干だが上回った。米雇用統計については、非農業部門の雇用者数の伸びは27万5000人がコンセンサスとなっている。市場関係者によると「ADPとの連動性は薄れているが、米雇用統計も今回は予想を上振れる公算が大きい」(生保系エコノミスト)とする。その場合は、いったんマーケットが織り込んだFRBの金融引き締め姿勢の緩和というストーリーが否定される可能性もある。「(今週3日に発表された)9月のISM製造業景況感指数が弱い数字だったことで、これを“過大評価”して利上げ圧力が弱まるという解釈が大手を振った形だが、少々楽観に傾き過ぎている嫌いがある。したがって、今回の雇用統計で株式市場にその反動が出る可能性もある」(同)という見方を示している。

東京市場では日経平均がテクニカル的にも要所に来ている。中長期波動の分水嶺である200日移動平均線が前日時点で2万7322円に位置しており、直近でほぼ下方カイ離を解消した。そしてきょうは後場寄りに2万7399円まで上値を伸ばす場面があったが、実は25日移動平均線が位置していたのも前日時点で2万7399円だった。ちなみに75日移動平均線は2万7414円で極めて近い位置にいるが、下向きの25日線は既に75日線を下に抜けデッドクロスを形成している。ただし、市場では「25日線をブレークするとCTAの買いプログラムが作動するケースが多い」(中堅証券ストラテジスト)という指摘もあり、ここは売り方と買い方にとって天下分け目の状況にある。また、日足一目均衡表で日経平均は分厚い雲の下限に位置している。これが個別株なら「とりあえず上値が重そうなので買いはやめておこう」とするポジションにあるが、仮にこの雲を日経平均が上に突き抜けるようなら、トレンドの転換を強く印象づけることになる。

すべてはFRBが本当に金融引き締めの手綱を緩めるのか、それとも経済のオーバーキルを承知で大幅利上げスタンスを固持するのかどうかに委ねられている。週末の雇用統計、そして来週12日に予定される9月の米PPI、13日に予定される米CPIと強烈なヘアピンカーブの先にその答えは見えてくる。

あすのスケジュールでは、8月の家計調査と8月の毎月勤労統計などが前場取引開始前に開示される。午後には8月の特定サービス産業動態統計、8月の景気動向指数(速報値)、消費活動指数などが発表される見通し。IPOが1社予定されており、東証グロース市場にキューブ<7112>が新規上場する。海外では9月の米雇用統計に市場の注目度が高い。このほか8月の米卸売在庫・売上高、8月の米消費者信用残高など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年10月06日 18時57分

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