ナスダック新安値、インフレ懸念に揺れる米市場と決算の行方 <株探トップ特集>

特集
2022年10月11日 19時30分

―第3四半期の米決算発表が本格化、景気減速懸念を払拭できるか―

米国市場が再び警戒感に揺れている。インフレ懸念が高まるなか、NYダウは2万9000ドル台前半に下落し、ナスダック指数は年初来安値を更新した。市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)による金利引き上げの動向に関心が集まっているが、同時に今週末から本格化する主要米国企業の決算発表に対する関心も高い。果たして、米国市場は決算発表を経て上昇基調を取り戻せるか。

●米9月雇用統計が底堅く大幅利上げの継続懸念が強まる

米株式市場が波乱基調にある。先週末7日のNYダウは前の日に比べ630ドル安の2万9296ドルと急落。同日のナスダック指数も3%超安と大幅下落した。続く週明け10日のNYダウは93ドル安と4日続落。ナスダック指数も4日連続して下落し年初来安値を更新した。なかでも、株価急落の背景とされたのが、7日に発表された米9月雇用統計が底堅い結果となったことだ。非農業部門雇用者数は前月比26万3000人増と市場予想(27万5000人増)に達しなかったものの、失業率は3.5%と予想(3.7%)を下回った。平均時給も前年同月比5.0%増と引き続き高水準だった。これを受け、市場には「米労働需給の引き締まりは続いている」との警戒感から、インフレ懸念が引き続き相場の押し下げ要因に働いた。

そんななか、13日に発表される米9月消費者物価指数(CPI)が注目されているが、市場では、11月1~2日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)でも0.75%の利上げが行われるとの観測が強まっている。

●「逆業績相場」に向けNYダウは2万8000ドル割れも警戒

このインフレ懸念に加え、市場で関心が集まっているのが今週から本格化する米国企業の決算発表だ。米国を中心に世界的に景気減速懸念が台頭するなか「企業業績の悪化が米株式市場の一段の下押し要因となりかねない」(アナリスト)からだ。すでに米企業の業績懸念が全体相場を押し下げる例が出ており、市場の警戒感は強い。

例えば、先月下旬には「アップル<AAPL>が新型iPhoneの増産計画を断念」との報道が流れた。これとともに業績の伸び悩み懸念からアップルのほかハイテク株が下落した。また、先週6日には米半導体企業のアドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>が7~9月期(第3四半期)の暫定決算を発表し売上高が予想を下回ったことから、半導体関連株が売られた。

市場には、S&P500種採用企業の第3四半期1株利益は前年同期比4%前後の増加との見方が出ているが、この予想を下回らないかが警戒されている。現在の米株式市場は、金利引き上げ局面の「逆金融相場」にあるとみられているが、これが今後、業績が悪化する局面となる「逆業績相場」に移ると予想されている。そうしたなか、NYダウは「2020年11月の米大統領選挙の際に窓を開けて上昇した2万8000ドル前半から中盤の水準まで下落する展開も」(アナリスト)と一段の安値を指摘する見方が出ている。場合によっては「2万8000ドル割れもあり得る」(同)という。

●ディフェンシブ関連の医薬品株などに投資妙味も

今後、米国企業の決算は14日のJPモルガン・チェース<JPM>やシティグループ<C>から本格化する。ハイテク系では、まず18日のネットフリックス<NFLX>や19日のテスラ<TSLA>などが注目されている。ネットフリックスの株価は有料会員数の減少が懸念され今春に急落した後も、依然として低迷している。また、テスラは第3四半期の世界出荷台数が市場予想を下回ったことが明らかになっている。ネットフリックス、テスラともに悪材料を織り込んだうえで、どこまで値を戻せるかが注目される。

業績懸念が膨らむ半導体関連の動向への関心も高い。19日のASMLホールディング<ASML>や25日のテキサス・インスツルメンツ<TXN>、27日のインテル<INTC>などが注目されている。加えて、大手テック企業では25日にアルファベット<GOOG>、26日にメタ・プラットフォームズ<META>、27日にアップルが予定されている。一方、追い風に乗っている業種では25日の穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド<ADM>や27日に予定されている防衛関連のノースロップ・グラマン<NOC>などの決算発表も関心を集めている。

市場では、今秋の決算に関して「どの業種のどの個別企業が堅調な業績を維持できるか」(市場関係者)を凝視している。そんななか、注目されているのが「ディフェンシブ」関連株だ。とりわけ、医薬品株などが関心を集めており、27日のメルク<MRK>や11月1日のファイザー<PFE>やイーライ・リリー<LLY>などの決算が注目されている。

■主な米国企業の決算スケジュール

10月14日 JPモルガン、シティグループ

17日 バンク・オブ・アメリカ

18日 ジョンソン・エンド・ジョンソン、ネットフリックス

19日 テスラ、アルコア、ASML、IBM

20日 フィリップモリス

21日 アメックス、ベライゾン

25日 アルファベット、コカコーラ、ビザ、

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、

テキサス・インスツルメンツ、スポティファイ

26日 メタ・プラットフォームズ、ボーイング

27日 アップル、インテル、メルク、マクドナルド、

キャタピラー、ノースロップ・グラマン

28日 シェブロン

11月1日 ファイザー、イーライ・リリー

2日 クアルコム

3日 スターバックス

8日 ディズニー

17日 アプライド・マテリアルズ

(注)予定は変更されることがあります。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.