近づく米中間選挙、激戦「民主党VS共和党」その株式市場への影響を探る <株探トップ特集>
――インフレ進行が嫌気され共和党やや優勢か、結果次第で防衛関連株などに影響も―
米中間選挙があと2週間と目前に迫ってきた。バイデン政権の発足から2年を経て、米選挙民はその中間評価を下すことになる。インフレ懸念の台頭を背景にNYダウなどは年初から厳しい下げを記録。米国は景気後退局面を迎えるなか、民主党のバイデン大統領の支持率も低迷している。そんな状況下で迎える中間選挙は、現時点ではやや共和党優勢ともみられているが、なお不透明要因は多い。米中間選挙は株式市場にどんな影響を与えるのか。
●トランプ前大統領が高い影響力を持つ異例の選挙に
米中間選挙は11月8日に実施される。同選挙は、4年ごとの大統領選挙から2年を経過した年に行われ、下院の全議席と上院の3分の1の議席が争われる。また、州知事選挙なども実施される。過去の例では、中間選挙では与党が苦戦することが多く、共和党のトランプ前大統領時代の2018年は民主党が下院で勝利し8年ぶりに多数派となった。
中間選挙は現職大統領に対する「信任投票」の側面が強く、批判票から与党が不利になることが多い。足もとでは、バイデン大統領の支持率は低迷しており、インフレも進行するなか民主党に逆風は吹いている。ただ、今回の中間選挙が従来とは異なるのが、前大統領のトランプ氏が共和党内で高い影響力を維持していることだ。24年の大統領選への意欲を示すトランプ氏に対する評価が全体の結果も左右する異例の展開となっている。
●下院は共和党が優勢、上院は接戦との見方
ただ、トランプ氏の存在は、共和党にとって諸刃の剣でもある。トランプ氏が政権時に指名した判事を含め保守派が多数を占める米連邦最高裁が6月に人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判決を覆したことは、民主党支持層を覚醒させる要因ともなった。また、8月に「インフレ抑制法」とも呼ばれる「歳出・歳入法」が成立したこともバイデン政権にとって追い風に働いた。更に、夏場にインフレ懸念が後退したこともあり民主党の支持率は一時盛り返した。もっとも、秋口にかけインフレ懸念が再燃したことから、民主党支持率はやや失速している。
そんななか、中間選挙の予想では下院は共和党有利とみる声が多いが、注目を集める上院に関しては「民主党と共和党の勢いは五分五分。若干、共和党が優勢か」(市場関係者)との見方が出ている。米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスによる直近の情勢分析によると、下院(定数435議席)は共和党が225議席、民主党が175議席、接戦は35議席となっている。接戦を全て民主党が制しても共和党の優勢は揺るがないことになる。一方、上院(定数100議席)は共和党47議席、民主党46議席、接戦7議席と予想されており伯仲している。他の世論調査では、上院は民主党有利との予想も出ており激戦が繰り広げられている格好だ。
●共和党が大勝の場合、防衛関連やエネルギー株などに影響も
では、現在の情勢を踏まえたうえでの株式市場には、どんな影響が予想されるのだろうか。まず、「下院・共和党、上院・民主党」がそれぞれ勝利した場合「ほぼマーケットには織り込み済みではないか」(アナリスト)とみられている。米国政治にねじれが生まれることで、バイデン政権の舵取りは難しくなるが、過去の中間選挙後でも発生したこととみる声は少なくない。
一方、大きな影響が出てくることが予想されるのが、「下院・共和党、上院・共和党」と共和党がともに勝利し、更に民主党に大差をつけた場合だ。この場合、「米国第一主義からウクライナ紛争への米国の関与を減らす声が強まるかもしれない」(市場関係者)という。また、再生可能エネルギー関連よりも原油・シェールオイルなどを重視する姿勢が強まることもあり得る。加えて、足もとのドル高は米国のグローバル企業にとっては、逆風でありドル高修正の声が出てくることも考えられる。もちろん、バイデン大統領の反対が予想されるが、米国政治の潮流に変化をもたらす可能性がある。エネルギーでは、エクソン・モービル<XOM>などに追い風であり、ドル高修正は自動車のゼネラル・モーターズ<GM>などの製造業にもプラス面が予想される。見方に強弱観が出るのが 防衛関連株だが、「台湾情勢の緊迫化も予想されるなか、防衛費の削減は想定しにくい」(同)との見方は少なくない。海洋戦力の増強で潜水艦などを手掛けるハンティントン・インガルス・インダストリーズ<HII>のような銘柄を有望視する声もある。
●「米中間選挙後は株高」のアノマリーに期待の声も
更に、現時点で可能性は低いが「下院・民主党、上院・民主党」と現状を維持できた場合は、テスラ<TSLA>のような電気自動車(EV)関連株などが再び見直されることも予想されている。加えて、米株式市場全体の影響では「米中間選挙後の株価は高い」というアノマリー(経験則)に期待する声も市場には出ている。過去の例では、中間選挙の前日を起点にした場合、翌年末までの間にNYダウは高確率で上昇しているという。果たして、今回も米中間選挙後の株高は実現するかが、注目されている。
株探ニュース