ウェブトゥーン普及で成長加速、新飛躍期突入の「電子コミック」関連株 <株探トップ特集>

特集
2022年10月27日 19時30分

―行動制限緩和でも利用は進む、異業種からの参入組も増加し関連銘柄の裾野も拡大へ―

電子コミック市場が新たな成長局面を迎えようとしている。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、自宅で過ごす時間が増えたことを受けて市場は活発化した。ただ、コロナ禍で増加したマンガアプリユーザーは、行動制限緩和が進むなかでも、その手軽さなどから引き続き電子コミックを読むケースが増えている。

更に、近年はスマートフォンで読むのに適した韓国発の縦スクロールコミック「WEBTOON(ウェブトゥーン)」の登場で新たに電子コミックへ参入する企業も増えている。当面、市場拡大傾向は続くとみられ、引き続き電子コミック関連銘柄の成長は続きそうだ。

●電子コミック市場は7年で4.6倍に拡大

出版業界の調査研究機関である出版科学研究所(東京都新宿区)によると、2021年の国内の電子コミック市場は4114億円となった。統計を開始した14年(887億円)に比べ7年で4.6倍に拡大したことになる。紙のコミック 市場(コミック誌及びコミックス)が2645億円だったことから、いまや電子コミック市場は紙の1.5倍以上の規模に拡大し、電子書籍全体の9割近くを占めている。

紙と電子コミックを合わせた市場規模は20年に6126億円となり、紙のみの市場のピークである1995年の5864億円を25年ぶりに上回ったが、このペースで電子コミック市場の拡大が継続すれば、数年後には電子コミックだけで90年代のピークを上回ることになる。

数年前には悪質な海賊版サイトが業界に大きな被害を与えたが、18年に「漫画村」が閉鎖され、海賊版と知りながら著作物をダウンロードする行為が違法化されるなど規制が強化された。今も新たな不正サイトが続々と誕生しているものの、一方で海賊版サイトの監視も強化され、その影響は薄れつつあり、電子コミック市場は当面成長が続きそうだ。

●急速に普及し存在感増すウェブトゥーン

電子コミックの事業モデルには、1話ごと販売する都度課金型のほか、無料で閲覧できる広告型、月額1000円前後を中心とするサブスクリプション型などがあるが、いずれもマンガアプリが拡大の牽引役だ。

そのマンガアプリで近年、急速に普及しているのが、縦スクロールでコマを読み込み、スマホで読むのに適した「ウェブトゥーン」と呼ばれる電子コミックだ。2000年前後、韓国のマンガ家たちが自身の作品をウェブサイトで紹介することから始まったウェブトゥーンは、その後、韓国大手IT企業によるサービス開始やスマホの普及、ブラウザによるウェブページのプリロード(先読み)機能強化などにより世界的に広がっている。

日本では「LINEマンガ」が先陣を切る形で、その後「comico」や「ピッコマ」などがウェブトゥーンを提供しているが、これらのプラットフォームは韓国IT大手が立ち上げに関わっている。作品もほとんどが韓国で制作され、日本で翻訳・アレンジされたものが掲載されていた。ただ、ここ最近になって国産プラットフォームや国産ウェブトゥーン展開への動きも見え始めており、今後はこうした企業が市場拡大を牽引しそうだ。

●関連銘柄の裾野も拡大中

ウェブトゥーンの関連銘柄として挙げられるのは、アカツキ <3932> [東証P]だ。今年4月に子会社HykeComicを設立し、6月には縦読みフルカラーマンガアプリ「HykeComic」を国内先行リリースした。同アプリでは、全作品がスマホナイズされた縦読みフルカラーのウェブトゥーンを掲載しており、自社制作のオリジナル作品から独占配信権を獲得した海外で人気の作品などをラインアップしている。今後は順次海外にも展開する予定だ。

ブシロード <7803> [東証G]は、子会社ブシロードクリエイティブがウェブトゥーンの制作・配信会社ロケットスタッフ(東京都板橋区)と共同で今年5月にウェブトゥーンレーベル「ROCKETOON(ロケットゥーン)」をスタートした。更にオリジナル作品の配信をはじめ韓国国内配信の人気作品の買い付け販売などでラインアップの拡充を図っている。

また、ウェブトゥーンの人気化に伴い、電子コミックに新規に参入する企業も出てきた。

グリー <3632> [東証P]は今年7月、新設した子会社DADANを通じてマンガ事業に進出すると発表した。「マンガ制作スタジオ事業」と、生み出されたマンガを広く読者に届けるための「マンガプラットフォーム事業」の2つの形で事業を展開する予定で、縦読みマンガを中心に企画・制作を行うという。また、総合マンガプラットフォームサービスは今冬にリリースする予定だ。

ゲーム開発を主力とするドリコム <3793> [東証G]は10月25日、韓国に本社を置くグローバルウェブトゥーンプロダクションの日本法人であるContents Lab.Blue Tokyo(東京都渋谷区)と、ウェブトゥーンの共同制作を決定したと発表した。ドリコムは21年から出版・映像事業への参画を推進しており、ウェブトゥーン事業に関しては「DRE STUDIOS(ドリスタジオ)」レーベルでの自社独自の制作はもちろん、海外パートナーとの協業による幅広いジャンルの開発を推進しており、今回の共同制作はその取り組みの一つとなる。

●マンガアプリ各社も注力強める

ウェブトゥーンの拡大は、マンガアプリを手掛ける企業にも大きな変化を与えている。

さまざまな出版社と共同でマンガアプリを運営するLink-U <4446> [東証P]は今年8月、韓国のウェブトゥーン制作スタジオで、日本でアニメ化が予定されているマンガ「俺だけレベルアップな件」のIPを所有する韓国D&Cメディアの制作スタジオであるスタジオ・ブーム社と合弁会社を設立すると発表した。新会社は高品質のウェブトゥーン作品を制作し流通させるほか、日本を含めた各国で生まれるウェブトゥーン作品の流通拡大にも取り組むとしている。

また、同じく出版社などのコンテンツホルダーと共同でマンガアプリを運営するand factory <7035> [東証P]は昨年8月、パートナー企業と協業しウェブトゥーン市場への参入を進める方針であることを発表。プラットフォームの構築やオリジナルIPやコンテンツの創出、開発マネジメントに注力している。

このほか、電子コミックレンタルサイト「Renta!」などを運営するパピレス <3641> [東証S]、「まんが王国」などを運営するビーグリー <3981> [東証P]、子会社が「めちゃコミック」を運営するインフォコム <4348> [東証P]、「マンガBANG!」を運営するAmazia <4424> [東証G]などもウェブトゥーン作品を提供しており注目。更に10月24日、ウェブトゥーンに特化した転職支援サービス「TOON CAREER(トゥーンキャリア)」を開始したコンフィデンス <7374> [東証G]も関連銘柄に挙げられよう。

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