デリバティブを奏でる男たち【39】 ヘイマン・キャピタルのカイル・バス(前編)

特集
2022年10月31日 13時30分

◆ドル円は150、180、200円に

今回はサブプライム問題で財を成したことで有名なヘイマン・キャピタル・マネジメントのカイル・バスを取り上げます。ヘイマン・キャピタルは自らの投資スタイルをイベント・ドリブン型のヘッジファンドと主張していますが、英フィナンシャル・タイムズ紙では空売り投資家(ショートセラー)と表現されていました。最近の報道をみても、そのような印象が伝わってきます。

▼ドル円しっかり、先週のカイル・バス氏発言なども報じられる=東京為替

https://fx.minkabu.jp/news/221538

この記事では、2022年4月の日銀金融政策決定会合において、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めに転じても日銀は現状の緩和政策を続けるとしたことを受け、彼が「ドル円は150、180、200円に向かっていく可能性がある」とツイートした、と報じています。彼が言及した当時のドル円が130円前後であり、その5カ月後に145円レベルまでドル高・円安が進んだことから、彼の見立ては現在のところ間違っていなかったようです。ただ、このようなツイートからは、どの水準まで円安が進行するのかといった論点よりも、「投資家の円安懸念を煽りたい」といった彼の気持ちが伝わってきます。

【タイトル】

金融業界において、自分が保有するポジションに有利な発言をすることを「ポジション・トーク」と言い、聞く方もそれなりの心構えをもって聞く必要があります。ショートセラーは発言だけでなく、詳細なレポートの公表や訴訟といった手段に加え、マスコミを利用するなど世論操作に似た手法を用いることがあります。代表的なところでは、第18回で取り上げたシトロン・リサーチのアンドリュー・レフトや第19回で取り上げたマディ・ウォーターズのカーソン・ブロック、あるいは第36回で取り上げたグリーンライト・キャピタルのデビッド・アインホーンなどでしょうか。

▼シトロン・リサーチのアンドリュー・レフト(前編)―デリバティブを奏でる男たち【18】

https://fu.minkabu.jp/column/1259

▼シトロン・リサーチのアンドリュー・レフト(後編)―デリバティブを奏でる男たち【18】

https://fu.minkabu.jp/column/1266

▼マディ・ウォーターズのカーソン・ブロック(前編)―デリバティブを奏でる男たち【19】

https://fu.minkabu.jp/column/1284

▼マディ・ウォーターズのカーソン・ブロック(後編)―デリバティブを奏でる男たち【19】

https://fu.minkabu.jp/column/1285

▼グリーンライト・キャピタルのデビッド・アインホーン(前編)―デリバティブを奏でる男たち【36】

https://fu.minkabu.jp/column/1588

▼グリーンライト・キャピタルのデビッド・アインホーン(後編)―デリバティブを奏でる男たち【36】

https://fu.minkabu.jp/column/1609

◆カイル・バスの生い立ち

J・カイル・バスは、1969年に米フロリダ州マイアミで生まれました。1992年にテキサス・クリスチャン大学を優秀な成績で卒業し、不動産に関する金融の学士号を取得します。卒業後2年間は米プルデンシャル証券(2003年にワコビア証券と合併)で働き、1994年に米名門投資銀行だったベア・スターンズ(2008年に名門投資銀行JPモルガン・チェース<JPM>が吸収合併)に転職しました。

ベア・スターンズでは当初、ダラス事務所の株式ブローカーをしていましたが、過大評価されている株式や過小評価されている株式に注目することで成績を伸ばし、28歳で同社史上最年少のシニア・マネージング・ディレクター(執行役員)に就任します。2001年には米投資運用会社レッグ・メイソン(2020年に米投資会社フランクリン・テンプルトン・インベストメンツが買収)に転籍。彼はここで機関投資家向け株式部門の開設に携わり、資本政策にかかわる特殊状況(スペシャル・シチュエーション)の投資戦略を助言していました。

2005年にバスはレッグ・メイソンを辞め、ヘイマン・キャピタル・マネジメントを設立します。運用資金は自己資金の500万ドルを含め、3300万ドルを集めました。このときの資金提供者の中には、第15回で取り上げたアクティビスト・ファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブが含まれていたそうです。

▼サード・ポイントのダニエル・ローブ(前編)―デリバティブを奏でる男たち【15】

https://fu.minkabu.jp/column/1196

▼サード・ポイントのダニエル・ローブ(後編)―デリバティブを奏でる男たち【15】

https://fu.minkabu.jp/column/1216

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◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):

証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。


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