明日の株式相場に向けて=掉尾の一振は「海運」で

市況
2022年12月1日 17時00分

名実ともに12月相場入りとなった1日の東京株式市場は、米株急上昇を追い風に日経平均株価が前営業日比257円高の2万8226円と5日ぶりに反発。前日の米国株市場ではNYダウが700ドルを超える反発となり高値引けのオマケつきだったが、戻りの主役はハイテクセクターでナスダック総合株価指数の方は480ポイントあまりの急騰を演じた。こちらもこの日の高値圏で着地し、上昇率4.4%はNYダウを遥かにしのいでいる。半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)に至ってはナスダック指数の上昇率を更に大きく上回り5.8%に達した。

こういうと前日の米国株市場は強気一色で彩られた相場だったような印象を受けるかもしれないが、NYダウは少なくとも前半は冴えなかった。一時は約270ドルも下げる場面があり、午後に行われるパウエルFRB議長の講演内容に気を揉む地合いだったといえる。ところが、午後の取引中盤に入ると値動きが変わり、今度は売り方がソワソワしだした。そしてパウエル議長が講演で12月の利上げ縮小の可能性を示唆すると、ショートカバーを誘発、AIアルゴリズムの速射砲のような買いも加わり一気に高値圏へと舞い上がった。

“パウエル・ショック”を期待していた売り方にとっては裏目を引く形となったが、実際パウエル発言は決してハト派寄りだったとはいえない。12月の利上げ幅縮小の可能性が示唆されたとはいえ、マーケットはそもそも0.75%ではなく0.5%引き上げの線をメインシナリオとして織り込んでいたわけで、サプライズ感はない。更に、インフレとの戦いはまだ終わっていないとの見方を強調し、ターミナルレートの推測値についてはスルーしたものの、9月のドットチャートで示された4.6%をやや上回る公算が大きいとの認識まで示した。これが株価を突き上げるポジティブな要素があったかと言えば疑問も残る。

市場関係者によると「マーケットはパウエル講演前のFRB高官のタカ派的発言などから、パウエル氏は楽観ムードに強く釘を刺すようなコメントを用意しているとばかり思っていた。例えば12月0.75%の選択肢もあることを匂わすような発言が予想されたわけだが、結果はあっさり利上げ幅縮小を肯定するような喋り方で、俗に言う買い安心ムードが漂った」(ネット証券マーケットアナリスト)という。つまり、過去のパウエル・ショックの残像から悪い方のシナリオを織り込み過ぎていたということだ。また、株式需給面でも追い風が強いと指摘。いわく「ショート(空売り)が依然として溜まっているほか、実需の買いについても機関投資家は現金ポジションがまだ残っていて、S&P500指数などのベンチマークに負けないように株式に投じる動きを誘導している」(同)とする。

米国株が大幅上昇し、特にこれまで上値の重かった米ハイテク株が軒並み買われたことを、きょうの東京市場は素直に好感する動きとなった。ただ、パウエル発言の影響は債券市場にも当然ながら及び、米長期金利は3.6%近辺まで急低下した。これによる日米金利差縮小の思惑が外国為替市場を直撃、1ドル=136円台前半まで急速に円高が進行したのは若干誤算だった。実際に円高を嫌気したのは自動車セクターくらいで、あとは不動産や金融、電力ガス、陸運、建設といった“円高がネガティブ材料とならない”内需系が全体指数の足を引っ張ったのだが、今一つ波に乗れなかったのは事実だ。プライム市場では値下がり銘柄数が値上がり数の2倍近くに膨らむという変調な地合いだった。今は半身に構えて、利が乗っているものについてはある程度回収しておこうという投資家のニーズを映し出している。

そうしたなか、ここからの狙いとしては少し目先を変え「海運」に着目してみたい。大手海運株はコンテナ船バブル終焉の思惑で9月下旬に値を崩したが、ここにきて買い直す動きが鮮明となっている。持続性はともかく、少なくとも23年3月期の配当計画から換算した配当利回りは日本郵船<9101>、商船三井<9104>とも16%台という規格外の高水準だ。低PBRでバリュー株の宝庫としての思惑も色褪せていない。更に、商船三井が多角化で不動産事業への展開強化を発表し注目を浴びたが、その観点では飯野海運<9119>や明治海運<9115>にも活躍余地がありそうだ。

あすのスケジュールでは、11月のマネタリーベースのほか、3カ月物国庫短期証券の入札も予定されている。午後取引終了後には11月の財政資金対民間収支が発表される。海外では11月の米雇用統計発表が予定されマーケットの注目度も高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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