レベル4解禁で広がる視界、「ドローン」関連株は新たな飛躍ステージへ <株探トップ特集>

特集
2022年12月21日 19時30分

―空の物流争奪戦に号砲、利活用の範囲拡大で関連企業に商機―

21日の東京市場で日経平均株価は、一時300円近く下落するなど不安定な動きが続いた。日銀が長期金利の許容変動幅拡大を決めたことが尾を引いており、外為市場で円高圧力が残っているほか、債券市場で10年債利回りが上昇したことが影響した。市場参加者の間で日銀が金融政策の正常化に向けて舵を切ったとの見方が広がるとともに、年末・年始にかけて荒い展開になるとみて身構える向きが多く、物色テーマが絞りにくくなっている。

ただ、こうしたなかでも今後の成長が見込まれる業界には目を配っておく必要があり、その一つが「レベル4」の飛行が解禁されたドローン(無人航空機)だ。これによって利活用の範囲が拡大することから、関連企業のビジネス機会が一段と広がりそうだ。

●機体認証制度など新設

国土交通省は今月5日、ドローンの機体が操縦者にみえない状態でも住宅地など人がいるエリアの上空で飛ばせるよう規制を緩和した。これはドローンの強度、構造及び性能について検査を行い、機体の安全性を確保する認証制度である「機体認証」、ドローンを飛行させるために必要な技能(知識や能力)を持つことを証明する「無人航空機操縦者技能証明」、ドローンを飛行させるために必要な運航に係る各種制度の「運航ルール」が、同日から施行されたためだ。これまでは操縦者の目視できる範囲内や、無人地帯での飛行を前提としたレベル1~3が認められていたが、レベル4の飛行が可能になったことで新たなビジネスが本格的に動き出すことになる。

具体的な活用例としては、スタジアムでのスポーツ中継や写真・映像撮影のための空撮、市街地や山間部・離島などへの医薬品や食料品の配送、災害時の救助活動や救援物資輸送及び被害状況の確認、橋梁・砂防ダム・工場設備などの保守点検、建設現場などの測量や森林資源調査、イベント施設や広域施設及び離島などの警備や海難捜索など。既に航空会社はドローンを活用したビジネスの準備を着々と進めており、日本航空 <9201> [東証P]はこのほどプロドローン(名古屋市天白区)と技術協力に関する基本合意書を締結。ANAホールディングス <9202> [東証P]は2016年にドローンプロジェクトを設立し、航空機の安全運航に関する知見を生かした物流サービスの事業化に向けた検証を継続して実施している。

●新ビジネス視野に動き着々

足もとではレベル4の解禁を受けた企業の動きが相次いでおり、ACSL <6232> [東証G]はドローンの型式認証制度において、第一種型式認証申請を実施した。審査対象は物流用ドローンで、これは同社が中期経営方針「ACSL Accelerate FY22」のなかで掲げる用途特化型機体の量産化と社会実装の事業戦略の一つ。第一種型式認証が交付されると、レベル4相当の飛行が可能になり、利活用の場面が拡大することになりそうだ。

また、ACSL、日本郵政 <6178> [東証P]傘下の日本郵便、日本郵政キャピタルはこのほど、開発中の物流専用国産ドローンの概要を公開した。レベル4での運用を前提としており、空力シミュレーションや風洞実験を通した空力最適化による高い飛行性能を特長に挙げている。

このほか、フューチャーベンチャーキャピタル <8462> [東証S]は自社が運営するロボットものづくりファンドを通じて、産業用ドローンを活用した社会課題解決に取り組むイームズロボティクス(福島県南相馬市)に投資を実行した。イームズロボティクスは今回の調達資金を活用して、レベル4時代に適合した機体開発を加速させる計画だ。

GMOメディア <6180> [東証G]は、需要が急拡大しているドローンの操縦士育成・資格取得をサポートするドローンスクール・教習所の検索サイト「コエテコドローンbyGMO」の提供を開始した。ユーザーは点検・土木建設・空撮・農業・基礎知識などの活用シーンごとに検索し、一覧表示して比較・検討することができるという。

SOMPOホールディングス <8630> [東証P]傘下の損害保険ジャパンとSOMPOリスクマネジメントは、レベル4の解禁に対応するため産業用ドローン保険を拡充。ドローン輸送貨物の捜索・回収費用などを補償する「産業用貨物輸送ドローン・トータルプラン」と、運航事業者の安全な事業化推進を支援する「リスク評価ガイドライン適合支援サービス」を提供する。

●出前館は八丈島で配送実験

これ以外の取り組みとしては、石川県小松市とセイノーホールディングス <9076> [東証P]、KDDI <9433> [東証P]子会社のKDDIスマートドローン、エアロネクスト(東京都渋谷区)は、次世代高度技術活用による地域課題の解決と地域発展につながる新スマート物流の構築に向けた連携協定を締結した。12月下旬には松東地区でのドローン配送(実証実験)を予定しており、ドローン配送と陸上配送を融合した新スマート物流「SkyHub」の社会実装に向けた検討を進める構えだ。

出前館 <2484> [東証S]はエアロネクストと連携し、八丈島でデリバリーサービスの試行導入及びドローンを活用した配送実験に乗り出した。デリバリーサービスの試行導入期間は今月から来年2月14日までで、ドローン配送実験は来年1月ごろを予定。これら事業について分析・効果検証を行うとしている。

ゼンリン <9474> [東証P]が参画する秩父市生活交通・物流融合推進協議会は、埼玉県秩父市の大滝地域で物流分野の取り組みとして「遠隔運用によるドローン配送」、及び医療分野では「オンライン栄養指導」と「オンライン聴診器診察」の実証実験を実施した。これは遠隔運用によりコスト効率性を高めたドローン配送体制の構築と、地域住民の通院困難な状況を改善する医療提供体制の構築を目指したもの。将来的に地域の事業者が遠隔運用も含めドローン配送の全運用を担う体制などを構築するという。

●イメージワン、FIGなどにも注目

これ以外の関連銘柄では、ドローンによる災害現場の撮影機能を搭載した映像通報システムを扱うドーン <2303> [東証S]、ドローン関連ソリューションを展開するイメージ ワン <2667> [東証S]、ドローンの開発・製造・販売を手掛ける菊池製作所 <3444> [東証S]、グループ会社がドローンの研究開発・製造を行っているFIG <4392> [東証P]、ドローン飛行・仕事支援プラットフォームを提供する楽天グループ <4755> [東証P]、Terra Drone(テラドローン、東京都渋谷区)と資本・業務提携しているザインエレクトロニクス <6769> [東証S]、土砂やがれきに深く埋まった遭難者のスマートフォンの位置をドローンで特定するシステムの実証実験に成功している双葉電子工業 <6986> [東証P]、ACSL製国産ドローン「SOTEN(蒼天)」のバーチャルトレーナーを開発した理経 <8226> [東証S]などが挙げられる。

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