【植木靖男の相場展望】 ─かつて困った時の薬株がいまは金融株?
「かつて困った時の薬株がいまは金融株?」
●日銀と海外筋の勝負の行方は
日経平均株価は再び惨状を呈している。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見ショックが尾を引く中、日銀は12月20日、大規模な金融緩和政策の修正に動いた。市場はこうしたサプライズに弱く、警戒材料がダブルで株価の足を引っ張った。
これをどうとらえるか。まず、パウエル会見ショックはたいした問題ではない。市場が勝手に議長の話を予想し一喜一憂しただけで、議長は終始一貫、これまでと変わらぬスタンスなのだ。
問題は、日銀の事実上の利上げだ。日銀の狙いは少しでも金利を正常化することだ。日銀の4-9月期の保有国債の含み損は9000億円弱となった。さらに12月に入って、国債発行が売れ残る「未達」ではないにしても、半分近くを日銀が即買い取るはめとなった。こうした事態で日銀が恐れたのは、海外筋の空売りであった。しかし、このとき円はそれほど売られなかった。このため、日銀は「大丈夫」と判断して第1回目の防衛ラインである長期金利の上限0.25%を0.5%に今回修正した。しかも、クリスマス前で海外筋は動かないと判断したのであろう。
重要なのは、この後だ。第2回目の防衛ライン0.5%を突破すると、日銀の含み損は拡大し、債務超過になる恐れもある。日銀は絶対認めないはずだ。海外筋は果たしてどう出るか。
ところで、事実上の利上げで、空売りを仕掛けていた海外筋は日銀に対して大勝利となった。かつてジョージ・ソロスが英中央銀行と対決し、ソロスが大勝利を収めた勝負と似ている。
では、クリスマス後、海外筋はさらに0.5%突破を狙って攻勢に出るか。日銀も自身を守るためにも、さらに国債を買い入れざるを得ない。これほどの大勝負はまさに歴史に残る一戦となろう。
●投資家心理は陰の極に、底入れは近いか
さて、日米市場の株価はどこまで下がるのか。現状はなにか株安材料はないかと探しているようでもある。景気指標で良い数字が出ると、金融引き締めが強化されるとして売られ、悪い数字が出ると、企業収益が減速するとして売られる。これではあたかも下がるのを待っているかのようだ。
通常、こうした時は底入れが近いはず。米国では遅まきながらサンタクロースラリーが、日本では掉尾の一振が年末に向けて期待できるかもしれない。
それと期待でいえば2023年の株価見通しで、大半の市場関係者は安いとみているようだ。だが、これは逆の目が出る可能性もあろう。かつて1968年の時がそうだった。ある相場師がただ一人強気の見通しを言って市場で笑い者になった。だが、69年は年を通して上昇したのだ。いま株価は下げているが、ひょっとして前倒しの下げとなっているのかもしれない。
当面の物色だが、かつては「困った時の薬株」と言われたものだ。それが今日では海運株となり、さらにここへきて金融株がその対象となっているようだ。
金利はさらに上昇の気配が強く、PER、PBRなどをみても納得がいくバリュー株の一角として、 金融株に注目したい。防衛関連、原子力発電関連も狙い目か。為替次第では物流株も面白そうだ。
こうした観点から東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、三菱重工業 <7011> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、木村化工機 <6378> [東証S]、第一生命ホールディングス <8750> [東証P]、AZ-COM丸和ホールディングス <9090> [東証P]などに注目したい。
2022年12月23日 記
株探ニュース